君と桜の樹の下で

ちぇのあ

交錯する情念と一時の安息を(脚本)

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〇大広間
  剣姫が王族の下に歩み寄り跪いて進言する。
守姫「もうご存じかと思いますが、負の能力値が付こうが戦い方次第で彼は魔導具を有効に活用しておりました」
守姫「ですので何卒恩赦を頂ければと・・・」
  王族に納得してもらい今回の不敬罪は不問になった。
  おそらく護衛の罠だったのだろう、苦々しそうな顔をしているのを一瞥してから帰ろうとするが呼び止められる。
楠「正直これ程の比武を見れるとは思うて無かったわ 魔導具と言うのも悪くない、新しい知見を得られた」
優樹「はぁ・・・」
楠「聞けばお主店が全焼したと聞く」
楠「褒美に街の外れではあるが建物も土地もこまめに管理が行き届いた物件がある そこで商売を再開するが良い」
  お爺ちゃんを殺しといて何をヘラヘラ抜かしてるんだ・・・だが今は耐えて軍資金の確保の為に店は必要だ
優樹「謹んでお受け致します・・・」
  その様子を微笑んで見る剣姫。
  お爺ちゃんの死を知らせた者なのに何故か少しずつ憎めなくなっている自分が居る。
楠「うむ、最低限の水回りは行き届いておるゆえ・・・詫びも兼ねて案内の者を遣わす」
  衛兵が手甲に描かれた葉を添えて見えるように向ける
  執務室へ帰る王
  やっと雁字搦めの鎖から解き放たれたのか
守姫「本来は誠が送迎する事になっているが・・・また見当たらない 腹の痛みは和らいできた ボクが連れて行こう」
優樹「痛みが引いたなら、お願いしようかな」

〇西洋の街並み
  王宮を抜け城下の街へ繰り出す
  こんなに陽射しが、それを浴びた新緑が眩しい事に今更気付く
  しかし奥底に燻る気持ちは映る情景と交わる事が無い
守姫「・・・ボクはこの街が好きだ」
  黙って話を聞く
  瞳を閉じて歩いているのに正確に曲がり角を通り道行く者をかわす
守姫「ボクが偉くなって今に合わなくなった王律を変えて行くつもりだ」
守姫「ふもとの精霊街の開発が進んで御神木まで無くなる計画が進んでいる それを防ぐには大きな武功を立てて進言したいが・・・」
優樹「その機会は割とすぐ訪れるんじゃないかな?」
守姫「・・・冒険者に聴いた王子の様子も可笑しかった ダンジョン内の魔物暴走も初めて聞く・・・何か裏がある気がする」
  改めて俺から何か言ってもお爺ちゃんは帰って来ないんだ
  俺は俺で行動していけば良い

〇平屋の一戸建て
  剣姫が歩みを止めて少し人通りの少なくなった曲がり角の前に立つ
  ここが今回の物件のようだ

〇古い畳部屋
  ここは倉庫でも休憩室にでもして・・・

〇古民家の居間
守姫「この正面が販売する所で・・・」

〇魔法陣2
  この魔法式で水回りと光源を管理していて・・・

〇ボロい家の玄関
守姫「以上だ ボクは見回りした後に王宮へ戻る」
優樹「わかった」
  後ろ姿を遠くなるのを確認する

〇古民家の居間
  店はすぐ使える状態なのはありがたいが並べる程商品が残っていない
  素材を集めに行く必要がある
優樹「荷物が少ないおかげで店の作業はすぐ済んだな 行くとするか」
桜花 「あたしと行こ?」
  振り向くと桜花が心配そうに僕を見つめている。
  一人事を聞かれたのが少し恥ずかしい
優樹「こんな街の外れまで来るなんて、めずらしいね」
桜花 「あ!それは優樹くんの安否聴きに行った時に教えてもらって・・・」
優樹「ありがとう、桜花のおかげで無事に帰れたよ」
桜花 「えへへ、無事で良かった・・・本当に」
  僕の手を握る彼女の強い情念に、成さねばならぬ感情が霧散しそうになる
  いけない
優樹「新しいお店の印象はどうかな?」
  桜花は手前に置いてあるオルゴールを手に持ち穏やかに話し出す
桜花 「全部優樹くんの手作りで丁寧で丸く彫り込んだ手に優しくて心に温かい逸品だと思ってるよ」
  話し終えて静かに僕を見据えて微笑む彼女
  お爺ちゃんが生きてれば沸々と沸く想いに囚われず、彼女と重ねる日々を大切にしていけるはずだったのに・・・
優樹「ありがとう桜花、今日は幻精の丘まで行こうと思うんだ」
桜花 「そんな奥まで行くの? その場所はあたし詳しいから役に立てると思う♪」

〇城下町
  街の外れから中心街へ入っていき、樹の内部にあるギルドへ向かう
桜花 「あ・・・お腹空いちゃった」
優樹「遅めの昼食にしようか」
桜花 「やった! ねぇねぇ、この前出来た新しいお店があって~♪」
  様々な表情を見せてくれる彼女に、失いつつある元気をわけてもらっている

〇西洋の市場
  街並みを共に歩む
  噎せ返る熱気、人だかりの中心には巨大な肉塊が2つある
  市のイベントで魚と肉の解体ショーをしているようだ
桜花 「一緒に並ぼっ?」
  桜花に手を引かれて列に並ぶ
  健康的にお魚の方へ並ぶ
桜花 「今日は何の素材を取りに行くの?」
優樹「あの辺は樹も良質だし魔石も濃度が濃い結晶になっているからね」
優樹「幻艶も取れるかもしれないし」
桜花 「それはあたしが・・・いや、」
桜花 「かつて精霊が悪戯心で創造したと言う、魅了と精神操作の効果を持つ杖・・・」
桜花 「まさか!」
  まずいもしや目論見がバレたか!?
  焦りを必死に隠しつつ桜花を見るが何か思っていた反応と違う
桜花 「まさかダンジョンの奥まで行く理由は、栄養をたっぷり付けてから誰も見てない所であたしを・・・!」
優樹「いや、そうじゃないって!店の展示品にするぐらいで・・・」
桜花 「街の外れで他に来客が居ないのを良い事にお店であたしを!?」
優樹「ちょ!?いやいや、そんなこと無いって!」
桜花 「む~~・・・あやし~~」
  口を滑らせたせいで別の方向で疑われてしまった
  そんなに俺の信用って普段ないのか?
桜花 「あっ、やっと順番来たね♪」
  サービスで特に柔らかいお腹の身の部分を切り取って渡してもらう
優樹「これは脂が乗っていて美味しそうだ」
桜花 「柔らかすぎてトロトロ身が揺れてる~♪」
  口に頬張れば旨味がすぐ来て身は淡く融解する
「悪い事ばかりじゃないね」
桜花 「やっと笑ってくれた」

〇市場
  桜花を見ると安心したように微笑んでいる
  起きてから落ち着かなかったが、彼女のおかげで少し落ち着いてきた
  ジューシーで厚切りにされたステーキに塩を振り、また頬張る
  座る屋外の席には木漏れ日に影を作る
  樹の実に付けた水を飲み干す
優樹「飲み終わったら行こうか」
桜花 「え~もう?」
桜花 「でも優樹くんと冒険するのも楽しみ♪」
  カラリと氷の音が鳴った後に席を立つ
  向かう先は何故か外では無く巨大樹の中心

〇林道
  近年取り入れた魔導技術の発展により、剣術の衰退が危ぶまれる中で利便さは確実に増している

〇おしゃれな受付
  その一つが王宮の代理店の役割のギルドが提供する転移魔法陣に依る冒険各地への転送である
  使用料は成功報酬の二割を支払う事であり失敗した際は無料なので気軽に使える
  ダンジョンの近くへ転移魔法陣が送ってくれる利便な時短もある

〇魔法陣
  いくつかの採集クエストを受けて魔法陣の前に立つ
桜花 「便利になったよね~、おかげで余った時間に優樹くんのお店に行けるよ♪」
優樹「そうだね、本来なら道中でかかる時間も労力も費用も危険も浮いて有難い限りだよ」
桜花 「・・・幻艶がとれても、優しくしてね?」
優樹「ちょ!」
  紋様の中心に立つ二人の周囲が煌めいていく。
  二人の姿が光に包まれ・・・視界から捉えられなくなる。

次のエピソード:待望の逸品を探し求めて

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