エピソード16 それぞれの決意(脚本)
〇中華風の通り
ホンカルトの村
雷火「ししょーーーー! たのもおおぉぉーーーー!!」
師匠「なんだ雷火! こんな朝早くから!」
師匠「朝メシは食べたのか? 食べて行くか?」
雷火「うん、食べる食べる!」
〇古風な和室(小物無し)
師匠「それにしても、おまえが3日前、 村の入り口で倒れてたのには驚いたぞ。 一体どうしたんだ?」
雷火「(・・・もぐもぐ) 師匠!」
師匠「お、おう?」
雷火「オレ、今のままじゃダメだ。 みんなの足手まといになる」
師匠「そうは言ってもな・・・。 おまえの年齢でそこまでの太刀筋の やつは、そうそういないぞ?」
雷火「年齢とか! そういうのはどーでもいい! ・・・それを超えなきゃいけないんだ!」
師匠「・・・何があった?」
雷火「セ=シルの子孫に負けた。 ・・・それだけならまだいい。 でも、あの時多分・・・」
雷火「オレの宝玉が光って、 まるで守られるように弾き飛ばされた」
雷火「オレが・・・オレだけが弱かったから、 アイ=リーン様に守られたんだ」
雷火「だから、オレは修行しなおしてから、 みんなの所へ行く!」
師匠「そうだなぁ・・・。 じゃあ、食べたら基礎鍛錬から行くか!」
雷火「(・・・もぐもぐ)」
雷火「よっしゃ! よろしくお願いします!」
〇武術の訓練場
ガイアの里
一方その頃、風華たちはガイアの里に
辿り着いた────
吹雪「おーっ、久々の我が家!」
吹雪「親父ー! 今、帰ったぜー!」
シルヴィ「キュイ!」
吹雪「おーっ! 我が相棒シルヴィ! 無事だったんだな! ちゃんと帰ってきてエラいエラい!」
シルヴィ「キュイ!」
竜盗団頭領「吹雪、てめっ・・・! 他の奴らはどうしたぁ!?」
吹雪「悪ぃ悪ぃ。 ちょーっとばかしヘマしちまって、 今、アクイアナで捕まってるわ」
竜盗団頭領「おまっ・・・! せっかくモステアに稼ぎに行く チャンスをふいにしやがって!」
吹雪「お、親父、その話は後でたーっぷり 聞くからよ! お、お客さんだぜ!」
地季「頭領、ご無沙汰してます。 薬師の地季です」
竜盗団頭領「おお、薬師のあんちゃんか。 吹雪、竜舎に案内してやってくれ」
吹雪「その前に、他にも客がいるんだよ」
竜盗団頭領「他にも客だと・・・?」
風華「モステア王国第一王女、風華と申します。 此度は突然の訪問をお許しください、 吹雪のお父様」
竜盗団頭領「モ、モステアの王女だとー!?」
竜盗団頭領「吹雪! てめぇ 人攫いだけには手を出すなと あれほど・・・!」
吹雪「親父、 ちょっと落ち着いて話を聞いてくれ!」
〇寂れた一室
竜盗団頭領「がっはっはっはっは! いや、すまなかったね、お客人方!」
竜盗団頭領「しかし、吹雪があの女神アイ=リーンの 子孫とはねぇ・・・」
竜盗団頭領「確かに、吹雪は赤ん坊の頃から 銀色の玉を持っていて、いつしか 不思議な術を使うようになったな」
風華「では、あなたはアイ=リーン様の 子孫ではないのですね?」
竜盗団頭領「俺は、吹雪の本当の父親じゃないのよ。 赤ん坊だった吹雪を、森の中で拾ったのさ」
竜盗団頭領「俺は跡継ぎもいなかったから、 本当の息子のように育てたつもりだ」
竜盗団頭領「しかしまあ、《エデン》の危機に吹雪の 力が必要だって言うんならしょうがない。 せいぜい、こき使ってやってくれ」
風華「ありがとうございます」
紅蓮「そういえば、吹雪たちは・・・?」
竜盗団頭領「ああ、竜舎に行ってるんじゃないかな?」
〇武術の訓練場
影利「きゃあぁぁっ! やだっ、た、高いってば!」
外に出ると、頭上から声が聞こえた。
どうやら、飛竜に試乗しているようだ。
〇雲の上
吹雪「何言ってんだよ、これくらいで・・・。 まだまだ高く上がるっていうのに」
影利「ちょ、ちょ、ちょっと待ってよ! せめて安全ベルトとかないわけ!?」
吹雪「んなもん、あるかっ! ったく、これからこのシルヴィで 移動しなきゃならないんだぜ? 慣れてもらわなきゃ困るな」
〇武術の訓練場
シルヴィは、ゆっくりと降下し、
二人を降ろした。
影利の顔は青ざめていたが、シルヴィは
そんなこともお構いなしに、影利の頬を
舐める。
影利「きゃっ!」
影利「んもう、しょうがないわねぇ」
人懐っこいシルヴィに文句も言えず、一行は飛竜の高度と速度に慣れる練習をした。
このガイアの里は、元々飛竜たちの巣だった。
そこへ人間が住み着き、長い年月をかけて人間と飛竜の共存生活を築き上げてきたのである。
これほどまでに飛竜を手懐けているのは、
《エデン》の中でもこの竜盗団だけである。
吹雪「じゃあ、次は全員で乗ってみるか」
〇雲の上
紅蓮「すごい・・・」
海の上の生活しか知らない紅蓮は、
その景色の美しさに感嘆を漏らした。
吹雪「空の上も、なかなかのモンだろ?」
風華「雲の上にいるなんて、夢みたい!」
風華「海の向こうのあの土地は、 モステア領土ね。 こんな遠くまで見渡せるなんて・・・」
影利「それで、これからどうするの?」
影利「シルヴィに乗って世界中を廻れるように なったのはいいけど、肝心の場所は わかってないのよ?」
紅蓮「ここからラジェンダって、近かったよな? 迎えに行きたい仲間がいるんだけど・・・」
吹雪「ああ、あの氷河ってやつか。 寒いのは苦手だが、いいぜ」
〇武術の訓練場
4人は一旦シルヴィから降りて、
地季にラジェンダへ行く旨を伝えた。
地季「仲間を連れてくるだけなら、俺はここに いていいかな。まだ作業が残ってるんだ」
地季「君たちが帰る頃までに・・・ 答えを出しておくよ」
そう言って、竜舎に戻っていった。
風華「地季、大丈夫かしら? なんだか、 すごく思い詰めていたみたい・・・」
紅蓮「きっと大丈夫さ・・・。あいつだって、 アイ=リーン様の子孫なんだ」
地季「・・・・・・」
地季は、皆がいなくなってから、
湖の祠で見つけた神具を握りしめた。
地季(あの時・・・ レイシアからもらったお守りの袋から、 琥珀色の玉が飛び出した)
地季(父さんが死んだ時に、 レイシアがくれたお守り・・・)
地季「何か入ってる・・・手紙!?」
地季へ
地季「父さんからの、手紙・・・?」
おまえがこの手紙を読んでいるという
ことは、おそらく俺はこの世には
いないのだろう。
そして、おそらく緑の祠で神具を
手にしたのだと思う
その神具の名は、エルデ・ノワ
地の能力を受け継ぐ者の神具だ。
いきなりのことで、きっと驚いただろう。
おまえには黙っていたが、実は俺たちは
平和の女神アイ=リーン様の子孫だ
おまえが生まれる前、俺は仲間たちと共に
魔術を封じる旅に出た。その旅は、とても
過酷なものだった。
願わくば、おまえには平和に
暮らしてほしいと、ずっと黙っていた。
しかし、きっと歴史は繰り返すだろう。
万が一の時のために、
この手紙をしたためておく。
勝手な願いとはわかっているが、
他の仲間たちと共に、
どうか魔術を封印してほしい。
この《エデン》を救ってほしい。
そして歴史が繰り返さぬよう、仲間たちと
相談して厳重に魔術を管理してほしい。
今度こそ、おまえたちの手で平和を
掴み取ってほしい──
地季(父さん・・・)
地季(わかったよ、父さん。 俺のこの薬師の力は・・・ アイ=リーン様の子孫の力だったんだね)
地季(・・・やろう! 俺に何ができるかわからないけど、 みんなと一緒なら、きっと・・・!)
地季は手紙を戻し、
もう一度神具を握りしめた。
私の中で吹雪の株がどんどん上がりつつある(^^* 普段好きになるタイプとはちがうのに……!
雷火がんばれー!
飛竜可愛いですね。でもわたしは影利派です……ください、安全ベルト~!