〇豪華な部屋
　　ラジェンダの町
　　
　　氷河の家
氷河「紅蓮！　よく来てくれたな！ 仲間は見つかったのか？」
紅蓮「ああ、おかげさまで。 おまえで７人目だよ」
氷河「順調そうで良かった。 まあ、上がってくれ・・・」
風華「お兄様・・・」
氷河「風華・・・？」
氷河「お、大きくなったな・・・」
風華「お兄様・・・」
風華「お兄様、お兄様っ・・・！」
氷河「風華・・・。 一番大変な時に、側にいてやれなくて すまなかった・・・」
風華「うっ・・・うっ・・・」
影利「しばらく、 そっとしておいてあげましょ・・・」

〇豪華な部屋
　　２人が落ち着いたところで、
　　紅蓮は今までの事を説明した。
氷河「そうか・・・ 紅蓮、迎えに来てもらってなんだが、 もう１日待ってくれないか？」
紅蓮「どうしたんだ？」
氷河「実は、今日は母の命日でな・・・」
紅蓮「ああ、だから香の香りがしてたのか・・・」
風華「お兄様。私も、手を合わせても・・・？」
氷河「ああ。 母もきっと喜ぶと思う」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
　　皆、それぞれの思いを胸に、
　　手を合わせて祈った。
紅蓮「何か、手伝う事はあるか？」
氷河「いや、特にこれといってないんだ」
氷河「そうだ。この間、 おもしろい情報を手に入れたんだ」
氷河「この近くの遺跡に、 古代の武器があるっていう噂なんだ。 もしかしたら、神具のことかもしれない」
氷河「時間をかせぐわけじゃないんだが、 そこへ行ってみてくれないか？」
紅蓮「古代の武器か・・・ お宝の予感がするな」
影利「近くなんでしょ？　いいじゃない、 行ってみましょうよ。もしかしたら、 私か吹雪の神具かもしれないしね」
紅蓮「よし、じゃあ行ってみるか！」
風華「紅蓮」
紅蓮「どうした、風華？」
風華「私、今回は留守番でいいかしら？」
紅蓮「そ、そうか・・・」
紅蓮「そうだよな。 もしかしたら危険かもしれないし、 兄妹水入らずで積もる話もあるだろうし」
風華「ごめんなさい・・・ 気をつけてね・・・」
紅蓮「おう。吹雪もいるし、 影利の占いもあるから、大丈夫！」
影利「じゃあ、行ってくるわね」
風華「・・・・・・・・・・・・」
氷河「・・・・・・・・・・・・」
風華「・・・８年、です。お兄様・・・」
氷河「・・・そうか。 もう、そんなになるか・・・」
風華「紅蓮から、少し聞きました。 住み込みでお仕事をしていたと」
風華「お兄様。 なぜ、モステアを離れたのですか・・・？」
風華「もしかして、 私やお母様を気にしていたのですか？」
氷河「いや・・・。風麗様は俺とおまえを 分け隔てなく接してくれたし、それに 俺が城を出たのは、風麗様が亡くなられてからだ」
氷河「おまえは幼かったから知らないかもしれないが、あの頃は派閥争いがひどくてな」
風華「派閥・・・ そんなものがあったのですか？」
氷河「ああ・・・。 俺の母、ミレイユ派と、おまえの母 風麗派に分かれていた」
氷河「２人とも平民の出だが、 支持は風麗派が多かった。 ・・・なぜだかわかるか？」
風華「・・・いいえ」
氷河「風麗様が、アイ＝リーン様の子孫だからだ」
風華「そんな・・・」
氷河「母は、元々病弱だったこともあり、 派閥争いに耐えられなかった」
氷河「余生を故郷で過ごしたいと願い、 ここラジェンダに身を潜めた」
氷河「しかし、それは風麗様も同じだった。 風麗様もそれほど身体は丈夫ではなく、 母が隠居した数年後に亡くなられた」
氷河「すると、どうしたことか・・・ フフッ・・・」
氷河「風麗派だった家臣が、手のひらを返した ように、俺に媚びへつらうようになった」
氷河「もちろん、父上はいろいろと手を 尽くしてくれた。 だが、その頃はまだ俺も幼かった・・・」
氷河「耐えられなくなった俺は、 心を病んでしまったのさ・・・」
氷河「そうして、 心配した父上が言ってくれたんだ」

〇謁見の間
国王「氷河。今のおまえは、ここを離れた方が いいのかもしれん・・・」
国王「クイクの港町に、かつての私の仲間が いる。おまえと年の近い息子もいる。 療養を兼ねて、そこへ行ってみるといい」

〇豪華な部屋
氷河「ふ、風華・・・」
風華「お兄様、ごめんなさい・・・ 私、何も知らなくて・・・っ」
風華「とても辛い思いを されていたのですね・・・」
風華「私は、てっきりお兄様が私や母を 嫌っているのではないかと・・・」
氷河「それはない！　俺は、おまえや風麗様を 嫌った事など、一度も・・・！」
氷河「・・・いや、 俺が何を言ったところで・・・ 俺は、国を捨てたも同然の人間だ・・・」
風華「でも、お兄様は避難民を救ってくださった」
氷河「・・・知っていたのか」
風華「ええ、不思議な力で、怪我を治してくださった人がいると、皆口々に言っていました」
風華「すぐに、お兄様の事だとわかりました」
氷河「俺には、 あれくらいの事しかできないが・・・」
風華「充分ですよ、お兄様。 民は、国の宝です。 その民を救ってくださった」
風華「とても、嬉しかった・・・」
風華「お兄様。お兄様さえよければ、 いつでもモステアに戻ってきてください」
風華「私は、それを望んでいます。 きっと、他の者たちも・・・」
氷河「・・・・・・・・・・・・」
氷河「ありがとう。魔術を封印して、 すべてが終わったら・・・考えてみよう」

〇砂漠の基地
　　ラジェンダ北
　　
　　氷の遺跡
　　一方その頃、紅蓮たちは遺跡に
　　辿り着いた。
　　遺跡は氷に覆われており、キラキラと
　　輝いて見えた。

〇要塞の廊下
　　入口に扉はなく、すんなりと入れた。
　　ひんやりとしていたが、外よりは温かかった。時々来る隙間風が、背筋を震わせた。
紅蓮「こんな所に神具があったとしても、 凍ってるかもな」
　　冗談交じりに言った紅蓮の声が、冷たい壁から壁へと木霊した。
　　その途端、静まり返っていた空間が、一気に殺気に見舞われた。この遺跡に棲みついている魔物が、紅蓮の声に反応したのだ。
吹雪「この、バカ！ 囲まれちまったじゃねーか！」
紅蓮「まかせろ、俺にはこのフレイムセイバーが ある！　さあ、その能力を今見せてくれ！」
　　紅蓮がフレイムセイバーに宝玉をはめると、剣先が唸り出した。
紅蓮「はああああああああっ!!」
影利「やるじゃない、紅蓮！ それが神具の本来の能力ってわけね」
紅蓮「本当は、まだまだ こんなもんじゃないはずだけどな。 俺はまだ、うまく使いこなせねぇ」
影利「えっ？」
紅蓮「魔物はまだいる！ 吹雪、背中は任せた！」
吹雪「おう！」
紅蓮「はああああああっ!!」
影利「ちょ、ちょっと紅蓮！ それだと多分・・・！」
　　影利が制するより早く、それは放たれてしまった。炎は大きな塊となり、魔物どころか、遺跡の壁を貫通した。
　　壁の崩壊で地震がいくつか起き、最後に炎が爆発したのか、遺跡全体が大きく揺れた。
吹雪「おまっ・・・！　ぶっぱなしすぎだ！」
紅蓮「だから、俺はまだ制御できないんだよ！」
影利「言い合ってないで、逃げてー！」
　　いきなり大ピンチ！
　　どうなる、紅蓮たち!?