〇黒
　　ずるいなぁ

〇イルミネーションのある通り
　　私に無いもの、全部持ってるくせに

〇タワーマンション
　　私の欲しかったモノ、全部奪ってくんだから

〇血まみれの部屋
　　ずるいなぁ
　　ずるいなぁ
　　ほんとうに、ずるいなぁ

〇配信部屋
　　でも、もう
　　
　　
　　どーでもいい
　　や。
　　こ
　　んな無意
　　
　　味な世界な
　　んて
　　だ
　　から皆に
　　
　　お別
　　れしなきゃ

〇赤（ディープ）
　　くそみたいな、『現実世界』のみなさん
　　クリスマスイブ、楽しんでますか？
　　今日の配信は、
　　私が『血の通う人間』だってことを──
　　───ここで、証明したいと思も゛

〇銀杏並木道
　　10月24日、夜

〇オフィスビル前の道
　　Vtuber事務所『Vクラスタ』

〇配信部屋
薊 ヒメコ(あざみ ひめこ)（『新衣装』のテクスチャの構成、 その他チェック漏れ無し）
薊 ヒメコ(あざみ ひめこ)（そろそろ準備しなきゃ）
　　所属１年目
　　薊 ヒメコ 23歳
　　私は、芸大で
　　服飾デザインを専攻していたが
　　───これが今の、主な仕事道具だ

〇緑（ライト）
　　私は元々、
　　ファッションデザイナー志望、だった
　　紆余曲折あってこの事務所で働いて───
　　初めて世に出した作品は───
　　この子、『灰冠（ﾊｲｶﾑﾘ）ヒメ』
　　デザインを担当させてもらった
　　服じゃないけど、
　　思い入れのある『大切な作品（ﾓﾉ）』
　　そして今は
　　この子の『魂（ﾀﾏｼｲ）担当』
　　───いわゆる『中の人』もやっている

〇仮想空間
【V】灰冠 ヒメ「『灰被り上等のお掃除娘！』 『どんな仕事（案件）も綺麗にクリア〜！』」
【V】灰冠 ヒメ「『将来の夢は、お姫様！』 『灰冠ヒメです！よろしくね！✌️』」
　　私はなんで、こんな事やってるんだろ？

〇荒廃した街
　　バトルロイヤルゲーム
　　『APPLEX』
　　配信開始から40分経過
【V】灰冠 ヒメ「もうヤダぁ！ なんで私だけタゲられるのよぉ！」
【V】灰冠 ヒメ「チート！ストーカー！変態！」
　　ASMR！ASMR！
　　［¥750］
　　ヒメの『変態！』からしか
　　摂取できない貴重な栄養があるんだよね
　　［¥999］
　　〝優しい罵倒〟で活力貰ったありがと🥰
【V】灰冠 ヒメ「みんなスパチャ（※投げ銭）ありがと！」
【V】灰冠 ヒメ「でも応援したいのか罵られたいのか 分かりにくいコメ、やめて〜！」
　　ガサガサッ
【V】灰冠 ヒメ「ヤバっ、死ん、」
【V】癒野 ぷりす「助太刀致すぜ、ヒメ坊」
【V】灰冠 ヒメ「ぷり姉ェ〜！」
　　［¥1500］
　　神タイミング過ぎィ！
　　［¥50000］
　　ぷりすさんのゲームの腕前は『Vクラ』の中でもトップクラスですね。私は毎日アーカイブ見て勉強させ（文字数
【V】癒野 ぷりす「『黒スパ』！ありがと〜!! （※１万円以上のスパチャ）」
【V】癒野 ぷりす「私のプレー参考にしてくれてるの!? とっても嬉しいなぁ！」
【V】癒野 ぷりす「今回は”ヒメが動いてくれたお陰で 敵の動きが分かった”のが大きいかなぁ」
【V】灰冠 ヒメ「”──役に立てて良かったです！”」
　　───ああ、
　　ホント何してるんだろ、私。

〇仮想空間
　　そして・・・
「またね〜！👋👋」

〇配信部屋
薊 ヒメコ(あざみ ひめこ)（やっと終わった）

〇オフィスの廊下
薊 ヒメコ(あざみ ひめこ)「はぁ」
　　この事務所に入ったキッカケは、
　　大学の先輩が就職の決まらない私を
　　事務所に誘ってくれたからだ
「ヒメ、ちょっと来い」
薊 ヒメコ(あざみ ひめこ)「・・・はい」
　　それが、この人
　　莢蒾 ナゴミ 25歳
　　Vクラスタ所属３年目
　　『癒野（ｲﾔｼﾉ）ぷりす』担当
莢蒾 ナゴミ(がまずみ なごみ)「お前、配信の雰囲気乱したいワケ？」
薊 ヒメコ(あざみ ひめこ)「いえ、そんな事っ」
莢蒾 ナゴミ(がまずみ なごみ)「お前はいつも雰囲気で叫んでるだけで リスナーの統制取れてねーのよ」
莢蒾 ナゴミ(がまずみ なごみ)「調子ノらせるとコメント荒れるだろっ 『悦ばせる』のと『楽しませる』のは違ぇ」
莢蒾 ナゴミ(がまずみ なごみ)「お陰で気持ち悪ぃ信者ばっか増やしてよぉ 女王様気取ってンの？新参入りずれぇだろ」
薊 ヒメコ(あざみ ひめこ)「仰る、通りです」
莢蒾 ナゴミ(がまずみ なごみ)「ったく」
莢蒾 ナゴミ(がまずみ なごみ)「ほらよ」
薊 ヒメコ(あざみ ひめこ)「ありがとう、ございます」

〇個別オフィス
風見 闘莉(かざみ とうり)「配信お疲れ様〜」
　　風見 闘莉 31歳
　　Vクラスタ 取締役
　　Vtuber『トリシマ捜査官』担当
薊 ヒメコ(あざみ ひめこ)「トーリさん、やっぱり私、 配信業は向いてないと思います」
薊 ヒメコ(あざみ ひめこ)「モデルデザインだけならまだしも、 私コミュ障だから対応慣れなくて、」
薊 ヒメコ(あざみ ひめこ)「先輩に気を使わせてるの申し訳ないです」
風見 闘莉(かざみ とうり)「・・・」
風見 闘莉(かざみ とうり)「確かに、今のVクラの稼ぎ頭は『ぷりす』だ」
風見 闘莉(かざみ とうり)「視聴者との距離が近いのが魅力なんだろう」
風見 闘莉(かざみ とうり)「・・・でもな？実際は『ヒメ』の方が 幅広い層から支持されてるんだ」
風見 闘莉(かざみ とうり)「デザインの完成度も 勿論プラス要素になってると思うし」
風見 闘莉(かざみ とうり)「薊君のアニメ声や振る舞いが 『ヒメ』のアイドル性を底上げしてる」
風見 闘莉(かざみ とうり)「リスナーの愛情表現は多少歪んでても アイドルとして天性の───」
薊 ヒメコ(あざみ ひめこ)（話が伝わらない）
薊 ヒメコ(あざみ ひめこ)「ありがとう、ございます」

〇女の子の一人部屋
薊 ヒメコ(あざみ ひめこ)「ただいま」
薊 ヒメコ(あざみ ひめこ)「・・・誰もいないんだけどね」

〇白いバスルーム

〇女の子の一人部屋
　　リスナーにイジられて、先輩に怒られて、
　　トーリさんにも話逸らされて
　　夜遅くに帰ってきて、
　　部屋でひとりで弁当、食べてて・・・
薊 ヒメコ(あざみ ひめこ)「私、本当に」
薊 ヒメコ(あざみ ひめこ)「この仕事、続けてて大丈夫？」
　　先行きの見えない不安感
　　『がむしゃらに頑張るしかない』
　　そう言い聞かせて、言い聞かせるしかない
　　自分で自分を、慰める事しか、できない
（男の人の手って、どんな感じなのかな）

〇ラブホテル

〇ラブホテルの部屋
　　なでなで
莢蒾 ナゴミ(がまずみ なごみ)「気安く触ンじゃねーよ」
風見 闘莉(かざみ とうり)「付き合ってンのに、ひでェ扱い（笑）」
風見 闘莉(かざみ とうり)「あっそうだ お前に２つ朗報あるんだわ」
莢蒾 ナゴミ(がまずみ なごみ)「なによ」
風見 闘莉(かざみ とうり)「ぷりすの『新衣装』 来月辺りにはお披露目出来そうだよ」
莢蒾 ナゴミ(がまずみ なごみ)「!!」
風見 闘莉(かざみ とうり)「２つ目は、今度ぷりすが テレビ進出する事になった」
莢蒾 ナゴミ(がまずみ なごみ)「!!」
風見 闘莉(かざみ とうり)「『超電脳戦隊 プリテンダーW』」
風見 闘莉(かざみ とうり)「来月末に、12月25日放送分を収録するって」
莢蒾 ナゴミ(がまずみ なごみ)「『タベホーだい』の 『吾峠』が出てる奴じゃん！芸人の！」
莢蒾 ナゴミ(がまずみ なごみ)「芸人と絡めるようになるとか、 『Vクラ』も大きくなったな！」
風見 闘莉(かざみ とうり)「ま、それもこれも」
風見 闘莉(かざみ とうり)「お前が連れてきてくれた 『薊』の功績がデカイんだよな！」
莢蒾 ナゴミ(がまずみ なごみ)「────」
風見 闘莉(かざみ とうり)「新衣装の草案出したのも薊だし、 TVの方も『ぷりす+ヒメのセット収録』だ」
風見 闘莉(かざみ とうり)「ヒメもウチの金の卵になる可能性が──」
風見 闘莉(かざみ とうり)「おい、なんだよ!?」
莢蒾 ナゴミ(がまずみ なごみ)「お前は大人しく 食われてりゃいーんだよっ」
　　くそっ
　　潰す

〇ラブホテルの部屋
　　アイツだけは

〇幻想2
　　絶対潰してやるッ

〇銀杏並木道