5崋山先生と六十匹の猫(脚本)
〇村に続くトンネル
金持ちから
本を盗んだ泥棒猫を助けた
惣七と縁
礼が欲しけりゃついて来いと言われたが?
ヤマブキ「はよ 来い」
惣七「どこまで 歩かせんの? (俺達 馬鹿されてないよな?)」
縁(えにし)「かれこれ 一時間は 歩いてるねぇ」
ヤマブキ「軟弱者が 人間みたいに 嘘 つかん」
ヤマブキ「もうすぐそこ」
〇寂れた村
ヤマブキ「ここ」
惣七「こんなところに村が」
ヤマブキ「もう 真っ暗だから ヤマブキんちに 泊まれば?」
縁(えにし)「本当にぃ? 良かったね惣七」
惣七「おいおい そんなに信用していいのか?」
〇古民家の蔵
ヤマブキ「ここ ヤマブキ達の ねるとこ」
惣七「達?」
ウノハナ「おかえり~」
ウスニビ「かえり~」
スミ「なにそれ?」
キガラ「だれそれ?」
惣七「うわ〜!猫屋敷か〜!?」
縁(えにし)「凄いね 何十匹といる」
ヤマブキ「六十匹 全員合わせて 六十匹」
惣七「華山先生は猫好きで 有名だったが これ程までとは」
ヤマブキ「最後の 本【六十猫伝】は ヤマブキ達が 旅する 話だった」
惣七「なになに 一話ごとの題名が 色の名前か?これは」
ヤマブキ「カザンは ヤマブキ達に 色の名前付けた」
惣七「墨、卯の花、薄鈍 確かに色の名前だが ヤマブキは山吹色じゃない・・・よな?」
ヤマブキ「・・・」
ヤマブキ「そう ヤマブキは この色」
惣七「おー!そーそー もっと黄味が強くて 白が濃いな」
惣七「え? この顔料(絵具)どしたの?」
ヤマブキ「作った ヤマブキが」
惣七「凄いな!猫ってそんなことも出来るのか!」
縁(えにし)「アッハッハッハ!」
惣七「何だよ縁?」
縁(えにし)「いや、続けて (妖怪やら神様やらに慣れたのか、惣ちゃんは嫌に飲み込みが早くて面白いね)」
惣七「お前はどちらかと言うと 柴(ふし)色とか、松染(まつそめ)色、 茶褐色、あたりかな?」
ヤマブキ「お前」
ヤマブキ「詳しいのか? 色」
惣七「ん~まぁ~ こう見えても絵師だからなぁ~」
惣七「そこいらの? ぼ~っとしてる奴らよりかは? 色数、知ってると思うよぉ~??」
ヤマブキ「なんか気持ち悪 まあいいや」
ヤマブキ「じゃ お前 黄昏(たそがれ)色 わかるか」
惣七「え? なに?タソガレってなんだ?」
ヤマブキ「夕刻に見える空の色らしい」
惣七「え?あーそれな!タソガレ! えーとお ほらえーとあれだよほら」
ヤマブキ「知ったかぶるな」
惣七「すまん、分からん」
惣七「何で その色を作りたいんだ?」
ヤマブキ「タソガレ色は」
ヤマブキ「カザンが 読者に伝えたかった色だから」
惣七「崋山先生が? あ、そういや この本完結してるけど」
惣七「挿絵が無いって言ってたな」
ヤマブキ「【六十猫伝】を頼んだ カザンがそう 言った」
〇古民家の蔵
カザンは あまり目のよくない ニンゲンだった
絶景 崋山(ぜっけい かざん)「これ いるか?」
カザン の身の回りの世話は
ヤマブキ達がしていた
絶景 崋山(ぜっけい かざん)「お~いるな いるな」
カザン 文字は 書けた
でも絵は描けなかった
色も見えてないみたいだった
絶景 崋山(ぜっけい かざん)「今度の 作品はな、凄いぞ お前達が主役だ」
絶景 崋山(ぜっけい かざん)「そして、旅をする物語だ 綺麗な景色が山程出て来るぞ」
絶景 崋山(ぜっけい かざん)「お前達 また 面白い挿絵を頼めるかい?」
絶景崋山の挿絵は 猫達で描いてた
ヤマブキは色を作って版画で摺る係
”摺師”(すりし)というやつ
絶景 崋山(ぜっけい かざん)「山吹、山吹や」
ヤマブキは 確かに
山吹色ではなかった
だけど カザンが 山吹色に見えたなら
絶景 崋山(ぜっけい かざん)「可愛い ヤマブキ あったかいねぇ 柔らかいねぇ」
絶景 崋山(ぜっけい かざん)「あまり見えてはいないけれど お前は さぞ 綺麗な色だろうねぇ」
カザンが ヤマブキと言うのなら
ヤマブキは山吹だと思った
絶景 崋山(ぜっけい かざん)「お前には だい〜じな 役目 黄昏色を作ってほしい」
ヤマブキ「?」
絶景 崋山(ぜっけい かざん)「何でも 夕刻過ぎに 見える色で 燃える紅、眩しい橙や 海の底のような深い藍 他にも色んな色が混ざっているらしい」
絶景 崋山(ぜっけい かざん)「この文を見てご覧 最終章でお前たちが見る色だ」
絶景 崋山(ぜっけい かざん)「私には 皆目見当の付かない色だが 読者にみせてやりたい」
絶景 崋山(ぜっけい かざん)「頼んだよ」
それは 酷な 頼みだった
ヤマブキ達に
紅や橙色は見えなかった
見えない色を作るというのは
難しかったが
黄昏色を
カザンが読者に見せたいと言った色を
作りたかった
そして カザンはまもなく
【六十猫伝】の執筆を始めた
でもカザンは
寝たきり 多くなった
ジュミョウ、というやつだった
カザンは なんとか執筆 終えたが
もう床から ほとんど 出て来なくなった
ヤマブキ達は 挿絵の完成を急いだ
カザンが旅立つ その前に
カザンが行きたかった 山や街
想像した美しい風景を 見せたかった
絶景 崋山(ぜっけい かざん)「・・・・・・・・・・・・これ」
絶景 崋山(ぜっけい かざん)「これ・・・いるか・・・・・・・・・・・・・・・?」
絶景 崋山(ぜっけい かざん)「どうやら お迎えが来たみたいだ」
絶景 崋山(ぜっけい かざん)「あぁ、お前たちに囲まれて 極楽だったなぁ」
絶景 崋山(ぜっけい かざん)「あの世へ行っても 本を書けるだろうか」
絶景 崋山(ぜっけい かざん)「美しい 景色を 見れるだろうか」
絶景 崋山(ぜっけい かざん)「【六十猫伝】を頼んだ」
そして カザンは そのまま 旅へ出た
六十匹の猫達は カザンの
体に身を寄せた
〇古民家の蔵
ヤマブキ「だから 黄昏色を 完成させて 読者にみせてやるのは」
ヤマブキ「カザンの 夢をかなえる ことなんだ」
ヤマブキ「おい なんで泣いてんだ」
惣七「泣くよ! 大泣きだよ!」
惣七「そうか それで黄昏色を」
惣七「にしても 猫には紅色が見えないんだな?」
ヤマブキ「ああ 藍色と黄色ならわかる」
惣七「よし!じゃあ夕刻の空の色を再現してやるよ!」
惣七「しかし、その何色か混ざり合ってるってのが厄介だなあ」
縁(えにし)「橙と青を混ぜて ぼかして そこに星屑をすこぉーし 散らせば いいんじゃない?」
ヤマブキ「橙と 藍色・・・ ぼかし?」
縁(えにし)「ン~筆を貸してご覧」
縁(えにし)「筆に色をつけた後に水で 湿らせて こうやって・・・ 少しずつ 少しずつ ならしていく」
縁(えにし)「そして 最後に 星屑を振りかけりゃ」
縁(えにし)「すると ほら 綺麗だろ?」
ヤマブキ「!!!」
ヤマブキ「これが・・・ カザンが 伝えたかった色」
惣七「おー! ぼかしも使えるのか さすが縁」
惣七「光ってんのは 黒雲母(くろうんも)か? こんな 高価なもんどこで」
縁(えにし)「いんや これは星屑だよ そう言ったろ?」
惣七「え? 星屑に見立てた何かじゃなくて?」
縁(えにし)「そうだよ 星屑の光を 細かく砕いて上から振りかける アタシ独自の手法さ」
惣七(縁の絵って不思議だと思ってたけど 使っている道具も不思議だな)
ヤマブキ「お前達 絵師なのか?」
惣七「んーまぁ 縁が絵師で俺は版元だよ (今は) 俺たちは 神社で 問屋を開くんだ」
ヤマブキ「問屋・・・」
ヤマブキ「頼みがある」
ヤマブキ「【六十猫伝】の挿絵を 描いてくれないか」
惣七「え!? いいのか?あの崋山先生の読本の挿絵を!?」
ヤマブキ「挿絵 他の猫達が 取り掛かっていたが 苦戦してる」
惣七「え、縁! これは、大きな転機かもしれないぞ!!」
惣七「有名読本作家の挿絵を担当出来れば多くの人の目に止まる!」
縁(えにし)「・・・」
縁(えにし)「断るよ」
惣七「そうだろ! この機を逃すなよ!崋山先生の名前に乗っかって・・・」
惣七「ひぇい!? 断る!? なんで!!!」
縁(えにし)「だってさ」
縁(えにし)「崋山先生を知らない アタシに 何が描けるんだい?」
縁(えにし)「上手い絵? あー惣七が言うところの凄い絵なら 描けるよ」
縁(えにし)「でも売れる絵は描けない ン~ なんだろね? 何ていうんだろうね?」
縁(えにし)「命が宿らない」
ヤマブキ「・・・」
ヤマブキ「わかったよ 挿絵はやっぱり ヤマブキ達で完成させる」
惣七「え?あーそー そうだ・・・な!」
惣七(うお~い! 正気かよ~! 折角、楽に有名になれそうだったのに! 逃した魚は大きいぞ!?縁~!)
ヤマブキ「じゃ 別のお願い」
ヤマブキ「ヤマブキ もっと絵のこと 知りたい」
ヤマブキ「ヤマブキを 摺師として 雇って」
惣七「え?摺師? まぁ いずれ必要だとは思っていたが」
縁(えにし)「摺師?(すりし)」
惣七「絵師の描いた浮世絵に色を摺るのが摺師だ」
惣七「ただ、ヤマブキ 悪いが 雇えるだけの金がうちにはない」
ヤマブキ「お駄賃 問屋が 売れてからでいいから お願い」
ヤマブキ「そうだ まだ 礼上げてなかった」
ヤマブキ「これ 生前 カザンが大事にしてた 何かの 絵」
惣七「先生が大事にしていた絵? ごくり」
惣七「こ、これは!」
惣七「ど、どえらい 春画だ・・・!(恐れおののき)」
それは どえらい 春画だった
ヤマブキ「これ やるから ヤマブキを 雇って ください」
ヤマブキは 鼻の頭で
どえらい春画を押した
惣七「仕方がない・・・」
惣七「崋山先生が これを大事にしていたんだ 俺が その意志を継がなければ」
惣七は 皺にならないように
慎重に どえらい春画を懐へ入れた
縁(えにし)「何を 継いだって?」
やれやれ 締まらないねぇ
金がない癖に従業員だけ増やして・・・
まあ でも
これで 摺師のヤマブキが 恩暮呂堂の一員に
なったわけだ
はてさて これから どうなることやら
続きはまたのお楽しみ
惣七ぃぃぃぃ
それは…
まあしょうがないですね。
ところで兼巻さんの運命は…
気になる。
さて、次回はどうなるのか? 期待。
猫たち可愛い~😍✨昔の色の名前も綺麗ですね🏳️🌈
詩さんの声あるとやっぱり可愛さ増し増し⤴️
ねこいっぱい!😆
ヤマブキちゃん可愛いですね💕
あと、これを言ったら失礼かもしれませんが、喋りがアーニャぽいですね!可愛い。
春画を懐に入れる惣七、過去一凛々しい顔しやがって……www