「鬼の巣くう家」第二話 (脚本)
〇断崖絶壁
旧友の工藤赤士からの依頼で赤士の実家、通称『鬼ヶ島御殿』へとやってきた僕──小林海戸と枢木先生。
工藤邸は崖の上に立つ立派な洋館で僕たちはそこへと続く、かずら橋の前に立っていた
〇ボロボロの吊り橋
小林 海戸(こばやし かいと)「うわぁー、なんて言うか怖い橋だね・・・」
工藤 赤士(くどう あかし)「あぁ、ガキの頃からここを渡るのは怖かったなぁ」
工藤 赤士(くどう あかし)「でも家にはここを通らないと絶対、着けないからなぁ」
小林 海戸(こばやし かいと)「ガキの頃って・・・ 今でも充分、怖いんだけど・・・」
枢木 京太郎(くるるぎ きょうたろう)「おーい、君たち! いつまでそこに居る気だ?」
いつの間にか橋を渡り始めていた枢木。
小林 海戸(こばやし かいと)「ちょ!先生いつの間に・・・」
工藤 赤士(くどう あかし)「なんて言うかマイペースな人だな」
小林 海戸(こばやし かいと)「もう・・・。 待ってくださいよ!先生!」
小林 海戸(こばやし かいと)「・・・あぁ、これは怖いぃ」
工藤 赤士(くどう あかし)「海戸、ゆっくりでいいから」
〇立派な洋館
小林 海戸(こばやし かいと)「ふぅ・・・着いたぁ・・・ 帰りもあそこ通るのか・・・」
工藤 赤士(くどう あかし)「お疲れ、小林」
枢木 京太郎(くるるぎ きょうたろう)「やっと来たか」
枢木 京太郎(くるるぎ きょうたろう)「さあ、ここが『鬼ヶ島』だね・・・」
工藤 赤士(くどう あかし)「えぇ・・・」
そこには薄暗い空の下に不気味にそびえ立つ洋館があった。
小林 海戸(こばやし かいと)「ここが・・・」
枢木 京太郎(くるるぎ きょうたろう)「さぁ!早く行こうではないか!」
小林 海戸(こばやし かいと)「あぁ!先生!また勝手に!」
〇ホテルのエントランス
藤嶋(ふじしま)「おかえりなさいませ、赤士坊ちゃま。 お久しぶりでございます」
工藤 赤士(くどう あかし)「ただいま、藤嶋さん」
工藤 赤士(くどう あかし)「でも坊ちゃまはやめてよ。 もういい歳なんだから」
藤嶋(ふじしま)「これは大変失礼いたしました、赤士様。 お会いできて嬉しゅうございます」
藤嶋(ふじしま)「そちらの方々が?」
工藤 赤士(くどう あかし)「あぁ、こっちが学生時代からの付き合いの小林海戸。 それでこちらが探偵の枢木京太郎さん」
藤嶋(ふじしま)「小林様に枢木様ですね。 私は工藤家で執事をしております、藤嶋と申します」
藤嶋(ふじしま)「この館にいる間、何かご用命がありましたら何なりとお申し付けください」
小林 海戸(こばやし かいと)「あ、よ、宜しくお願いします!」
工藤 赤士(くどう あかし)「実は例の手紙の件を教えてくれたのは藤嶋さんなんだ」
枢木 京太郎(くるるぎ きょうたろう)「なるほど。 ところで赤士くん」
枢木 京太郎(くるるぎ きょうたろう)「藤嶋さんは僕らの素性を知っているようだが、僕たちはこのまま探偵と助手と名乗っていていいのかな?」
枢木 京太郎(くるるぎ きょうたろう)「状況が状況だ、そういう輩を好まない人もいるだろう」
工藤 赤士(くどう あかし)「あぁ、その事なんですけど」
工藤 赤士(くどう あかし)「二人の事は大学時代の友達と先輩ってことで話を通してます」
工藤 赤士(くどう あかし)「こっちには旅行に来ていて、ついでに家に泊まってもらうって事に」
枢木 京太郎(くるるぎ きょうたろう)「なるほど、了解した。 では、こちらもそれに合わせよう」
枢木 京太郎(くるるぎ きょうたろう)「良いね、小林くん」
小林 海戸(こばやし かいと)「了解です!」
その時、エントランス奥の階段上から女性が二人、声を掛けてくる
工藤 響子(くどう きょうこ)「赤士、帰ってたんですね」
工藤 赤士(くどう あかし)「母さん!久しぶり!」
階段を降りてくる響子たち。
工藤 響子(くどう きょうこ)「久しぶりですね、まったく帰ってこないから心配だったのよ」
工藤 響子(くどう きょうこ)「元気にしていた?」
工藤 赤士(くどう あかし)「あぁ、この通り元気にしてるよ」
工藤 赤士(くどう あかし)「母さんこそ身体の調子は?」
工藤 響子(くどう きょうこ)「最近は調子がいいのよ、ふふっ」
木島 富美子(きじま ふみこ)「お久しぶりですね!坊ちゃん!」
工藤 赤士(くどう あかし)「うおっ、富美子さん、相変わらず元気だなぁ」
木島 富美子(きじま ふみこ)「あっはっは、赤士坊ちゃんも元気そうで何よりです!」
木島 富美子(きじま ふみこ)「あ、後ろのお二人が?」
工藤 赤士(くどう あかし)「あぁ、大学時代の友達と先輩だよ」
小林 海戸(こばやし かいと)「小林海戸です。お世話になります」
枢木 京太郎(くるるぎ きょうたろう)「枢木です」
工藤 響子(くどう きょうこ)「赤士の母の工藤響子と申します。 どうぞ、ゆっくりしていってね」
木島 富美子(きじま ふみこ)「私は工藤家で家事全般を任されてる 木島富美子って言います」
木島 富美子(きじま ふみこ)「美味しいご飯作るから楽しみにしててね!」
枢木 京太郎(くるるぎ きょうたろう)「ほう、それは楽しみですね」
そうこうしていると、また声が聞こえてくる。
工藤 青太(くどう せいた)「なんだかガヤガヤうるせーと思ったら赤士かぁ、久しぶりじゃねぇか」
若い派手な女を連れた男が現れる。
工藤 赤士(くどう あかし)「おじさん・・・」
工藤 青太(くどう せいた)「デカくなったなぁ、ちゃんと女遊びやってっかぁ」
工藤 赤士(くどう あかし)「何言ってんだよ・・・ それよりその人は?」
工藤 青太(くどう せいた)「あぁ、こいつか?俺の奥さんだよ」
工藤 赤士(くどう あかし)「はぁ、おじさんが結婚!?」
工藤 青太(くどう せいた)「あぁ?なんでそんなに驚くんだよ!」
工藤 赤士(くどう あかし)「いや、奥さんにしてはその・・・若くない?」
工藤 青太(くどう せいた)「へへっ、そうだろぉ」
工藤 青太(くどう せいた)「おい、実里」
工藤 実里(くどう みさと)「よろしくね、赤士くん」
工藤 赤士(くどう あかし)「あ、あぁ、ども・・・」
工藤 実里(くどう みさと)「なんだぁ、こんなカッコいい子がいるんだったら赤士くんと結婚しとくんだったぁ」
工藤 赤士(くどう あかし)「えっ!?」
工藤 青太(くどう せいた)「おいおい、甥っ子に手ぇ出すんじゃねえぞぉ」
工藤 実里(くどう みさと)「あははっ、冗談だって」
工藤 青太(くどう せいた)「あ、富美子さん。実里が晩飯に良いワイン飲みたいらしいから用意よろしくぅ」
木島 富美子(きじま ふみこ)「は、はぁ、承知しました・・・」
工藤 実里(くどう みさと)「赤士くん、これからよろしくねぇ。ふふっ」
そう言って青太と実里は去っていく。
工藤 赤士(くどう あかし)「・・・・・・」
木島 富美子(きじま ふみこ)「赤士さん、あの実里さんには気を付けて下さいよ」
工藤 赤士(くどう あかし)「え?」
木島 富美子(きじま ふみこ)「青太さんが何処かの高級クラブから連れてきた人なんですけどね」
木島 富美子(きじま ふみこ)「あの人、お金目当てで青太さんと結婚したみたいなものですから」
木島 富美子(きじま ふみこ)「さっきみたいに高いお酒飲みたいとか派手な宝石も結構買ってるみたいですよ」
枢木 京太郎(くるるぎ きょうたろう)「たしかに先ほども派手な宝飾品を身に着けていましたね」
木島 富美子(きじま ふみこ)「そうなんですよぉ、案外ホントに赤士さんのこと──」
工藤 響子(くどう きょうこ)「富美子さん」
木島 富美子(きじま ふみこ)「あらやだ私ったら、また余計なことぉ」
工藤 響子(くどう きょうこ)「とにかく、今は家族なんですからあまり変なことは言わないでね」
木島 富美子(きじま ふみこ)「はい、すみません」
工藤 響子(くどう きょうこ)「それにお客さんも立たせっぱなしですし」
工藤 響子(くどう きょうこ)「二人とも、ごめんなさいね」
小林 海戸(こばやし かいと)「あぁ、いえ!気にしないで下さい!」
枢木 京太郎(くるるぎ きょうたろう)「赤士くん久しぶりの家族の団欒だ。 僕たちは部屋で休ませてもらうから君もお母様たちと少し話をするといい」
工藤 赤士(くどう あかし)「え?あぁ、大丈夫ですか?」
小林 海戸(こばやし かいと)「僕たちの事は気にしなくていいよ!」
藤嶋(ふじしま)「では、お二人は私がご案内いたしますね」
枢木 京太郎(くるるぎ きょうたろう)「えぇ、よろしくお願いします」
藤嶋(ふじしま)「それではこちらへ──」
工藤 赤士(くどう あかし)「じゃあ、二人とも夕食の時にまた!」
〇城の廊下
小林 海戸(こばやし かいと)「なかなか、個性的な叔父さんでしたね」
枢木 京太郎(くるるぎ きょうたろう)「あぁ、あれはなかなかの遊び人と見た」
藤嶋(ふじしま)「青太さまは昔から良く言えば自信家、悪く言えば少し自己中心的な方ではありましたね」
藤嶋(ふじしま)「ですが工藤家の人間ならばそれくらいの方が丁度いいのかもしれませんが・・・」
枢木 京太郎(くるるぎ きょうたろう)「なるほど、しかし例の怪文書を送る様な人物には見えなかったな」
枢木 京太郎(くるるぎ きょうたろう)「まあ、人間の本性は一目見ただけでは分からないものだが・・・」
小林 海戸(こばやし かいと)「これであと会ってないのは赤士のお父さんとお爺さんだけかな?」
藤嶋(ふじしま)「そうですね。大旦那様と赤士様のお父上――灰治様はご夕食にはお会いできるかと」
枢木 京太郎(くるるぎ きょうたろう)「そうですか。ではそれまでは各自、部屋でゆっくりしておこうか」
小林 海戸(こばやし かいと)「了解しました!」
藤嶋(ふじしま)「お二人とも、部屋に着きました」
藤嶋(ふじしま)「部屋にある電話が私の所に繋がる様になっていますので何かございましたらそちらから」
小林 海戸(こばやし かいと)「ありがとうございます! これからよろしくお願いします!」
枢木 京太郎(くるるぎ きょうたろう)「よろしくお願いします」
藤嶋(ふじしま)「こちらこそ、何卒よろしくお願い致します」
藤嶋(ふじしま)「それでは失礼いたします──」
〇黒
???「何があっても、やるしかない。 鬼退治を始めよう・・・」
「鬼の巣くう家」第二話fin──
個性的なキャラクターが色々と登場し、同物語に作用していくのでしょうかね。それにしても、ラストのセリフが意味深ですね。次話からストーリーが動きそうな気配、楽しみです。