姫様は冷徹王子の溺愛をご所望です

朝永ゆうり

閑話 ウソから出たマコト?(脚本)

姫様は冷徹王子の溺愛をご所望です

朝永ゆうり

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〇洋館の廊下
  ジークとカレンが手を繋ぎ
  部屋へ入って行くのを目撃した
  ハンナとウェルナー。
  しばらく固まっていた二人だったが──
ハンナ「はっ!!」
ハンナ「ウェルナーさん!どういうことでしょう?」
ハンナ「姫様は、姫様は・・・」
ウェルナー(専属護衛)「まあ・・・そういうこと、だろうな」
ハンナ「じゃあ、姫様とジーク王子は──」
ウェルナー(専属護衛)「誤解が解けた、といったところか」
ハンナ「誤解・・・やっぱり、誤解だったのですね」
ハンナ「ジーク王子は、“氷王子”なんかじゃ──」
ウェルナー(専属護衛)「“氷王子”か・・・」
ウェルナー(専属護衛)「こうなった以上、ハンナ殿にも知っておいてもらいたいのたが──」
ウェルナー(専属護衛)「ジークは、虫も殺せない、優しすぎる男だ」
ハンナ「え?」
ウェルナー(専属護衛)「何だ?」
ハンナ「それじゃあ、視線でハエを殺す、なんてこと──できるわけないですよね?」
ウェルナー(専属護衛)「視線でハエを・・・?」
ハンナ「私、ついこの間見ちゃったんです!」
ハンナ「執務室の扉が少し開いていて、それで・・・」
ハンナ「ジーク王子が飛び回るハエを睨み付けたら、そのハエがポトリと・・・」
ウェルナー(専属護衛)「・・・」
ウェルナー(専属護衛)「ハエトリ草だ」
ハンナ「ハエトリ草?」
ウェルナー(専属護衛)「今の時期はハエが多くて、執務に支障が出る」
ウェルナー(専属護衛)「だから、ハエトリ草を焚いて香りでハエを追い払っていたんだが──」
ウェルナー(専属護衛)「執務室に紛れ込んだヤツが一匹いたんだ」
ウェルナー(専属護衛)「追い出そうと窓を開けても、なかなか出ていかなくてな」
ウェルナー(専属護衛)「部屋の扉も開けていたのだが、どうやらハエはジークを気に入ってしまったらしい」
ハンナ「もしかして、ジーク王子は・・・」
ウェルナー(専属護衛)「早く出ていけと視線で追っていただけだ」
ウェルナー(専属護衛)「ハエトリ草にハエを殺してしまう効果があるとは知らなかったらしい」
ウェルナー(専属護衛)「そういえば、宮殿の中庭の隅に、あのハエの墓を作らされたな・・・」
ハンナ「じゃあ、視線で人を殺すっていう噂も──」
ウェルナー(専属護衛)「そんなことできるわけないだろう」
ウェルナー(専属護衛)「ジークも我々と同じ、ただの人間だ」
ウェルナー(専属護衛)「まあ、出来たとしてもジークなら簡単に誰かの命を奪ったりはしないだろうがな」
ハンナ(・・・やっぱりただの噂だったのね)
ハンナ(ジーク王子は、私が思ってたような方では──)
ウェルナー(専属護衛)「そんなことより──」
ウェルナー(専属護衛)「・・・使ってくれ」
ウェルナー(専属護衛)「目元が濡れている」
ハンナ「え・・・?」
ハンナ「あーー!」
ハンナ(さっき取り乱しちゃったんだった!)
ハンナ(姫様がいらっしゃらなくて、それで・・・)
ハンナ(ウェルナーさんが、頭ポンポンって・・・)
ハンナ(頭、ポンポン・・・?)
ハンナ「チラッ」
ウェルナー(専属護衛)「ん?」
ハンナ(キュン・・・?)
ハンナ(やっぱり、私・・・)
ウェルナー(専属護衛)「使わないなら、いい」
ハンナ「あーーーっ!」
  と、ハンナはハンカチをしまいかけたウェルナーの手を掴んだ。
ハンナ(やば、掴んじゃった・・・)
ウェルナー(専属護衛)「ハンナ殿・・・?」
ハンナ「あっ!っと・・・」
ハンナ「貸して、欲しい、です・・・」
ウェルナー(専属護衛)「どうぞ」
ハンナ「ありがとう・・・ございます・・・」
ハンナ(ウェルナーさんって、紳士的よね)
ハンナ(頭ポンポンは素だったのかしら?)
ハンナ(それとも私だけ?なんて・・・ふふ)
ハンナ(だとしたら、この後──)

〇キラキラ
ウェルナー(専属護衛)「ハンナ!君が好きだ!」
ウェルナー(専属護衛)「君以外、考えられない!」
ウェルナー(専属護衛)「だから、僕と──」
ウェルナー(専属護衛)「付き合ってくれ!!」

〇洋館の廊下
ウェルナー(専属護衛)「ハンナ殿?」
ハンナ(なーんてことになったらどうしましょ?)
ウェルナー(専属護衛)「ハンナ殿!」
ハンナ(あーなんか、ハンカチもいい匂いする気がする・・・)
ウェルナー(専属護衛)「ハンナ殿!」
ハンナ「ははは、はい!何でしょう?」
ウェルナー(専属護衛)「先日、これを拾ったのだが・・・」
ハンナ「こ、これ・・・!」
ハンナ(私、どこで落として・・・!?)
ウェルナー(専属護衛)「アルノ殿に確認したら、ハンナ殿のものだと・・・」
ウェルナー(専属護衛)「それで、その・・・」
ハンナ「あ、あの、これは・・・」
ハンナ「ちちちち、違うんです!!!!!!!」
ウェルナー(専属護衛)「違う・・・か」
ハンナ(あれ、ウェルナーさん、しょんぼりしてる・・・?)
ハンナ(ってことは、もしかして、──!?)
ハンナ(でも、勝手な思い上がりだったらどうしよう・・・)
ハンナ(思い込みの激しい自惚れ屋って思われる? そんなの・・・)
ハンナ(こういうとき、姫様なら──)
ハンナ(きっと、想いを伝えるわよね)
ハンナ(ええい、ここはハンナ! 女を見せるのよ!!)
ハンナ「あの!」
ウェルナー(専属護衛)「・・・何だ?」
ハンナ「え、えーっと・・・」
ハンナ(何でこういう時にいい言葉が出てこないの!? ハンナのおバカっ!)
ハンナ「えーっと、えーっと・・・」
ウェルナー(専属護衛)「ふっ」
ウェルナー(専属護衛)「ははっ!」
ハンナ(最悪だ、笑われちゃった・・・)
ウェルナー(専属護衛)「あ、いや、泣かせるつもりは・・・」
ハンナ「良いんです、ウェルナーさん。 笑ってください。私なんて──」
ウェルナー(専属護衛)「違うんだ。私は、ただ──」
ウェルナー(専属護衛)「ハンナ殿の表情がコロコロ変わるのが、可愛らしいと、思ったんだ・・・」
ハンナ「!!!???」
ウェルナー(専属護衛)「・・・驚かせて、すまない」
ハンナ「えっと、それって、つまり──」
ウェルナー(専属護衛)「俺は、どうやらハンナ殿に気があるらしいのだが──」
ウェルナー(専属護衛)「そういうのは、ハンナ殿には迷惑か?」
  ハンナはもげそうな勢いで首を横にぶんぶん振った。
ウェルナー(専属護衛)「つまり──」
ウェルナー(専属護衛)「──期待しても?」
  ハンナは、今度は首を縦にぶんぶん振った。
ハンナ「ハイっ!!!!!!!!!」
  この日、王宮の誰も知らないところで
  新たなカップルが、誕生した──

次のエピソード:第10話 “氷王子”の秘密

コメント

  • ハンナが可愛い💕
    カップル誕生おめでとう~😆

  • 最初はハンナが1人で舞い上がってるだけの展開になりそうだったので、よかったです。本編以上に気になっていたので(笑) ハンナもこれで幸せになってくれれば…

  • ハエのお墓……!
    ジーク様、お優しい……。
    ウェルナーとハンナ、おめでとう!🎉

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