終活魔王のエンディングノート

大河内 りさ

おまけ・魔界の珍味(脚本)

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〇暖炉のある小屋
ローレット「よし、やるわよ!」
ダーリナ「やるって何を・・・」
ローレット「手料理作れって、 ダーちゃんが言ったんじゃん!」
ダーリナ「作れとは言っていません」
ダーリナ「珍味だと言っただけです」
ローレット「珍味じゃない!」
ダーリナ「とにかく結構です」
ダーリナ「時間がもったいないので、 お菓子だけ持って早く戻りましょう」
ローレット「大丈夫だって。 簡単なデザートささっと作るだけだから」
ダーリナ「デザート・・・?」
ローレット「そっ!」
ローレット「最近、氷魔法もちょこっと操れるようになったから、アイスくらいなら作れるはず」
ダーリナ「はず、って・・・」
ローレット「いろいろ混ぜて冷やせばいんでしょ? 簡単じゃん」
ダーリナ「不安しかないのですが」
ローレット「何してんの?」
ダーリナ「毒耐性の強化です」
ローレット「こんにゃろ」
ローレット「見てなさいよ~!」
ローレット「卵と~」
ローレット「牛乳と~」
ローレット「生クリームに・・・」
ローレット「砂糖!」
ローレット「これを全部混ぜて~」
ダーリナ「同時に入れちゃダメですよ!」
ダーリナ「砂糖と卵黄だけ先に混ぜないと!」
ローレット「どうせ最後に全部混ぜるんだから、 いつ入れても一緒じゃない?」
ダーリナ「一緒じゃない!」
ダーリナ「こんなもの間違ってもヴィエリゼ様の 口に入らないようにしないと・・・」
ローレット「さっきから失礼すぎじゃね?」
ローレット「とにかく、これを混ぜてっと・・・」
ダーリナ「ちょっ・・・牛乳が跳ねた!!」
ダーリナ「混ぜ方が雑すぎます!!」
ローレット「よしっ!」
ダーリナ「うっわ」
ダーリナ「どうして混ぜただけで そんな色と中身に・・・」
ローレット「んで、これを冷やす!」
ローレット「完成よ!!」
ダーリナ「何がどうしてこうなったのかサッパリ分かりませんが、見た目は綺麗ですね・・・」
ローレット「どんなもんよ!!」
ダーリナ「味はどうなんでしょう」
ローレット「ほれ、あーん」
ダーリナ「嫌ですッ!!」
ローレット「さっき耐性魔法かけてたじゃん〜」
ダーリナ「それでも嫌です!!」
ダーリナ「製造過程のあの緑色の液体を見てしまっては、ぜっっったい食べたくありません!!」
ローレット「じゃあ味見なしで エリゼとミアに出すけどいいのね?」
ダーリナ「ダメですよ! 人様にお出しできる食べ物とは思えません」
ローレット「何よさっきから文句ばっかり!」
ゲイダル「・・・どうかしましたか?」
ローレット「あ、ダルちゃん」
ゲイダル「ダルちゃん・・・?」
ローレット「聞いてよ、ダーリナってばヒドイの!」
ローレット「あたしがせっかくデザート作ったのに、 食べたくないって言うんだよ!」
ゲイダル「これですか?」
ゲイダル「何の菓子か分かりませんが、 おいしそうに見えますよ?」
ローレット「マジ!? 一個あげるから感想聞かせてよ!」
ダーリナ「いけません、ゲイダルさ──」
  ぱくっ。
ゲイダル「────ッ!!」
ローレット「えっ、ちょっと・・・」
ローレット「泣くほどおいしい!?」
ローレット「やったー!  エリゼに食べさせても大丈夫ね!」
ローレット「届けてくる!!」
ダーリナ「待ちなさい、ローレット!!」
ゲイダル「み、水・・・を・・・」
  ドサッ。
ダーリナ「ゲイダルさん!?」
ダーリナ「大変!  私、回復魔法は使えないのに──」
ダーリナ「誰か来てーっ!!」

〇洋館の廊下
ローレン「あっ、お姉ちゃん!」
ローレット「まだ起きてたの、ローレン?」
ローレン「眠れなくて、 お外にお散歩に行こうと思ってたの」
ローレット「もう暗いからダーメ!」
ローレット「昼間、迷子になったばっかなんだから、 おとなしくしてな」
ローレット「ほら、これあげるからいい子で寝なさい」
ローレン「わぁ〜い、おやつだ!」
  ぱくっ。
ローレン「う"っ・・・」
ローレット「ローレン、あんた今 すっごいブサイクな顔になってるよ?」
ローレン「これ、お姉ちゃんが作ったの?」
ローレット「おいしいでしょ?」
ローレン「ボクはお姉ちゃんの料理に耐性があるからまだ大丈夫だけど、これ、他のヒトが食べたら・・・」
ローレン「死──」
  ドサッ。
ローレット「ローレン?」
ローレット「も〜、急に寝ちゃうなんて、 まだまだ子供ねぇ」
ローレット「竜化しないと部屋には運べないなぁ・・・」
ローレット「変化すんの面倒だから、 ゲンティムに運んでもらおっと」

〇城の会議室
ローレット「あっ、いたいた」
ローレット「ゲンティム!」
ローレット「──って、まだ飲んでたの?」
ゲンティム「ヒック・・・あー? ローレットか、どうした?」
ローレット「ローレンが廊下で寝ちゃって」
ローレット「部屋に運んで欲しかったんだけど、 そんなに酔ってちゃムリか」
ゲンティム「いやいや、だいじょーぶだぞぉ!」
ローレット「いやダメっしょ」
フェゴール「でしたら私がお運びしましょう」
フェゴール「魔法でちゃちゃっと片付けますよ」
フェゴール「ふふふ・・・ほほほ・・・」
ローレット「フェゴちんも酔ってんじゃん」
ゲンティム「それ何だ?」
ローレット「あたしが作ったアイス!」
ゲンティム「丁度サッパリしたものが 欲しかったんだよ」
  ぱくっ。
ローレット「あげるって言ってないのに!」
フェゴール「どれ、私も」
  ぱくっ。
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
ローレット「どお?」
「まっっっず!!」
ローレット「うっそ!?」
ゲンティム「何だこれ!? あまりの味に酔いが醒めたわ!!」
フェゴール「口に入れた瞬間に香る生臭さ・・・ 材料が混ざりきっておらず不協和音を奏でています」
ゲンティム「内臓への刺激がやべえ」
フェゴール「何という衝撃的なお味なのでしょう・・・」
フェゴール「ローレットさん」
フェゴール「まさかこれ、他の方には 食べさせていないでしょうね?」
ローレット「え、ゲイダルとローレンが食べたけど」
「ええっ!?」
ゲンティム「ゲイダルは無事か!? 生きてるのか!?」
フェゴール「ローレンも心配です! 様子を見てきます!」
ローレット「・・・そんなにまずかった?」
ゲンティム「まずかった」
ゲンティム「下級魔族なら即死レベルだ」
ローレット「そんなに!?」
ローレット「あーあ、 マジで珍味になっちゃったよ・・・」
ローレット「残りは捨てるか」
キオル「あ、水属性女だ」
ローレット「ローレットよ!」
キオル「何持ってんの?」
ゲンティム「アイスと見せかけた毒物だ」
ローレット「ゴミよゴミ」
キオル「アイス?」
キオル「いただきまーす」
  ぱくっ。
「あっ!!」
ローレット「ちょっと!?」
ゲンティム「すぐ吐き出せ死ぬぞ!!」
キオル「・・・・・・」
キオル「うまい」
ゲンティム「嘘だろ!?」
キオル「ほんとほんと」
ローレット「酔ってて味覚が おかしくなってんじゃない?」
ゲンティム「おい、大丈夫なのか?」
キオル「もう一個ちょーだい?」
ローレット「別に、いいけど・・・」
ゲンティム「人間の味覚は魔族と違うのか・・・?」
キオル「ん、おいしかった!」
キオル「また作って?」
ローレット「・・・っ」
ローレット「きっ・・・気が向いたらね!」
  その後──
  様子を見に来たミアに、お皿に残っていたアイスの欠片を食べてみてもらったら、その場でバッタリ倒れてしまった。
  後で聞いた話によると、ゲイダルとローレンは、意識不明に陥っていたところを、フェゴールの回復魔法によって助けられたらしい。
  どうしてキオルだけ無事だったのかは、謎のままである。

次のエピソード:P9・お出掛け

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