ep.3 海の王国(脚本)
〇水の中
「あなたは・・・?」
わたしは・・・ラノ
「ラノ──それがあなたの名前?」
うん・・・きっとそうだ
ベスル「そう・・・ラノ、 私があなたを守ってあげる」
〇黒
〇水の中
「お前は・・・」
・・・わたし、は・・・
「お前は──ラノだ」
ラノ・・・それが、わたしの名前
カルディア「ラノ、お前の望みは叶えよう──」
〇黒
──どうして
どうして、僕が僕であるだけで
ベスル「ラノ!」
カルディア「ラノ」
君たちは、優しくしてくれるの?
だから僕は、君たちのために──
〇城の客室
「・・・」
「・・・」
ラノ「ルディ!」
ラノ「・・・」
ラノ「ここ、どこ!?」
ラノ「あ──そうだ、僕・・・」
〇荒れた競技場
「ルディ、止まって・・・」
〇黒
〇城の客室
ラノ(・・・あの後、気を失って 誰かに運ばれたんだ・・・!)
ラノ(──ルディはどこだ?)
ラノ「あっ──!」
クレム「おっ! おはよーございます!」
ラノ「ルディはどこ?」
クレム「ルディさんは・・・ 今ごろ帝国にいるはずです」
ラノ「どうして──!」
クレム「あの時も言いましたが それが最善の方法だったんです!」
ラノ「そんなはずない・・・!」
クレム「ちょっと! どこに行くんですか!」
ラノ「ルディのところ! 離してよ!」
クレム「そんな簡単に行けないですよ!」
ラノ「・・・簡単だなんて思ってない」
ラノ「どこかに行くのが難しいことなのは よく知ってるよ・・・!」
ラノ「それでも僕は行かないと──」
ラノ「行かないと・・・」
クレム「大丈夫ですか! まだ傷が癒えてないんですよ!」
「・・・でも、ルディが・・・」
クレム「・・・ルディさんは大丈夫ですよ」
クレム「俺は君の味方です! だから、手を──」
ラノ「・・・」
ラノ「一人で立てるよ」
ラノ「・・・クレム、僕は君のことを 何も知らないから信用できない」
ラノ「でも、君が僕を助けてくれたぶんだけは 君のことを信じたいんだ」
ラノ「ルディが無事だって信じるよ」
ラノ「・・・僕に教えて」
ラノ「王国と帝国のこと──知りたいんだ ルディを助けるために必要だと思うから」
クレム「もちろんですよ!」
クレム「俺にも君のことを教えてほしいです」
ラノ「うん──情報交換しよう」
ラノ(僕も君のことが気になるよ、クレム どうして僕を助けたのか──)
クレム「君は空から来たんですよね・・・ 地上のことは何も知らないんですか?」
ラノ「そう思ってくれていいよ」
クレム「りょーかいです! じゃあ外へ行きましょう!」
ラノ「え・・・外へ?」
クレム「はい! だってまずは知りたいでしょ?」
クレム「自分の知らないセカイのこと」
ラノ「──!」
ラノ「うん・・・そうだね 僕はそのために地上へ来たんだ」
クレム「知らないことを知るために?」
ラノ「うん・・・色んな世界を見たかったんだ 空の世界は狭いから」
クレム「なるほど・・・ これから知るのが楽しみですね」
クレム「それじゃ、着替えは用意してあるので 先に部屋の外に出てますね」
〇洋館の廊下
「えーと・・・」
ラノ「着方、合ってる? こんな服、見たこともないから・・・」
クレム「バッチリ! 似合ってますよ~」
ラノ「変じゃないならよかったよ」
クレム「それじゃ、行きましょうか──」
クレム「あっ! そういえば名前を聞いてなかったです!」
ラノ「ああ──僕の名前は、」
〇空
「ラノ」
「ラノさん・・・ですか ──素敵な名前ですね!」
〇綺麗な港町
ラノ「わぁ・・・! あれ、海?」
クレム「海ですよ そっか、空に海はないですもんね」
ラノ「すごい・・・ ルディが言ってたんだ」
ラノ「地上には”理想郷”があるって」
クレム「理想郷・・・?」
クレム「──そんなの、どこにもないですよ」
ラノ「え──そんな・・・」
クレム「ここはリカステア王国の 王都、サファイユです」
クレム「ちなみにさっきまでいたのはお城ですよ!」
〇西洋の城
ラノ「これがお城・・・ クレムって王様なの?」
クレム「まさか! 俺は国王様のしがない側近の一人です」
ラノ「城って──なんか、派手だね・・・ なにか理由があるの?」
クレム「派手な理由・・・ですか 富の象徴とか、そんな感じですかねぇ」
ラノ「・・・へぇ、権力者も大変だね あの飾りなんか何の意味が──」
ラノ「な、何? 城が攻撃された?」
クレム「おそらく帝国の仕業です! 城にまで手を出すなんて・・・!」
〇木の上
クレム「城が──!」
ラノ「塞がっちゃった・・・」
クレム「ラノさん、こんなものしかないですが」
ラノ「短剣?」
クレム「君のことはなるべくお守りしますけど、 念のため持っていてください」
ラノ「え、えぇ・・・ 僕、こういうの使えないんだけど」
クレム「それでも持っていてください!」
ラノ「い、一応受け取るけど── 僕、人のことを傷つけたりは・・・」
クレム「必要なときもありますよ、きっと」
クレム「とにかく、城内の人を助けないと──」
クレム「そこにいるのはわかりました!」
「流石」
「だが──そちらはどうかな?」
クレム「ラノさん! 後ろ──」
ラノ「クレム!」