悪魔のTHE END

咲良綾

少年とTHE END(脚本)

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咲良綾

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〇荒廃した市街地
ジエンド「・・・ランクG。 このあたりが潮時か」
  次の狩場は・・・

〇地球
  ・・・平和そうな惑星だな。
  しかし辺境すぎて誰も手をつけていないらしい
  様子を見てみるか

〇黒

〇けもの道
  ──まずいな。
  ここで動けなくなって、
  どれくらい経っただろう。
  何か喰いたい。
  喰って回復したい。
  足音?
  ・・・喰えるやつか?
佐谷沖斗「あっ・・・」
佐谷沖斗「誰?」
  なんだこいつは。
  負のオーラがほとんどない。
ジエンド「・・・我は、ジエンド」
佐谷沖斗「そうなんだ、かっこいい。 僕は佐谷沖斗(さやおきと)」
  名乗るだけで、特別なリアクションはない。
  何を考えているのだろう。
  しかし、上質な匂いは感じる・・・
  喰えるものなら、喰いたい。
佐谷沖斗「ねえ、もしかして、君ってヒーロー?」
ジエンド「・・・ヒーロー? なんだ、それは」
佐谷沖斗「テレビで見たよ、 そういう格好して戦ってるの」
佐谷沖斗「ね、君は正義の味方なんでしょう? 僕を助けてくれる?」
ジエンド「正義など知らぬ。 我は、我が物欲のために戦い、糧を得るのみ」
佐谷沖斗「やっぱり戦うんだね!」
佐谷沖斗「物欲って、お金が必要ってこと?」
佐谷沖斗「お金を払えば・・・ お父さんとお母さんを消してもらえる?」
ジエンド「消す? お前は、親を消したいのか」
佐谷沖斗「う、うん・・・ こんなこと考えちゃダメだって思ってたけど、僕もう、限界なんだ」
佐谷沖斗「お父さんとお母さん、 変な宗教にハマっちゃって、 僕が言う通りにしないと、 悪魔だって言って叩くんだ」
佐谷沖斗「厳しい決まりごとで束縛されて、 いつでも神様が一番で、 本当の僕なんか全然見てくれない」
佐谷沖斗「僕に人権はないし、愛されてもいない。 あんな親いらない。自由になりたい」
  空腹が、疼く。
  ああ、罪が喰いたい。
佐谷沖斗「衝動的に逃げてきたけど、 これ以上どこへ行けばいいのかわからなくて 困っていたら、君が現れたんだ」
佐谷沖斗「これはきっと、運命だと思う! お願い、お父さんとお母さんを消して」
佐谷沖斗「お金は、財産とか保険金とかあるでしょ? そういうので払うから」
  もし、この子の両親が蹂躙されたら。
  どんなに多くの罪と恐怖が溢れることだろう。
  それはどんなに美味いことだろう。
  想像だけで、舌なめずりしそうになる。
ジエンド「わかった。案内しろ」
佐谷沖斗「ありがとう!」

〇昔ながらの一軒家
  少年を探して彷徨っていたらしき両親は、
  こちらに気づくと血走った目を向けてきた。
佐谷蝶子「いたわ!! あなた、早く聖水を!」
佐谷沖斗「お、お母さん・・・」
佐谷忠也「なんだ、その禍々しい奴は・・・仲間か?」
  父親は、「聖水」と呼ばれる水を構えた。
  およそその名に似つかわしくない、普通の
  ペットボトルに入った水だ。
  もう少し、それらしき見た目にできなかった
  のだろうか。警戒もできないではないか。
佐谷忠也「去れ! 悪魔よ、去れーっ!!」
佐谷沖斗「お父さん、目を覚まして! 僕は悪魔なんかじゃないよ。 変な宗教はもうやめて!」
  必死の叫びも届かない。
  父親は、狂ったようにペットボトルの水を
  ぶちまける。
  母親は異形の男の背後に隠れた少年を、
  憎しみを込めた目線で睨み付けた。
佐谷蝶子「この悪魔!沖斗から出ていって! 沖斗を・・・ 私のかわいい沖斗を返して!!」
佐谷沖斗「僕は、僕だよ・・・ 思い通りにならなければ、僕は悪魔なの?」
佐谷沖斗「そのままの僕がいらないっていうのなら、 そんなお母さん、僕だってもういらない!」
佐谷沖斗「ジエンド、助けて!!」
  異形の男は、瞬く間に父親との距離を詰め、
  ペットボトルを持つ腕を抑えて捻りあげた。
佐谷忠也「ぐっ!」
ジエンド「その聖水とやらは、なんだ」
佐谷忠也「能力者の祈りをこめた、特別な水だ」
佐谷蝶子「・・・あなたは、聖水がかかっても平気なの?」
ジエンド「寄越せ」
佐谷忠也「あっ!」
  ペットボトルを取り上げて、突き飛ばす。
  父親も母親も、目の縁を赤らめて鬼の形相で
  突進したが、異形の男の敵ではない。
佐谷蝶子「あああああ!!」
佐谷忠也「返せーーーっ!!!」
  その必死の姿に、愉悦と侮蔑の混じったような感情が込み上げる。
  どう見ても、矯正不能な狂信者ではないか。
  可哀想に。ククッ・・・
佐谷沖斗「やれ! ジエンド、やっちゃえー!!」
  声の限りに叫んだ俺を振り向いた男の顔は、
  笑ったように見えた。
佐谷沖斗「!?」
  気がつけば、口に水のボトルが
  突っ込まれていた。
  流れ込んだ水が喉を通る・・・
佐谷沖斗「ギャアアアアア!!!」
  ナンデ・・・ ナンデ・・・
  罪のない人間を殺した輩の大いなる罪で、
  腹を満たしたかったのに。
佐谷沖斗「なんで、僕を・・・」
ジエンド「うまく隠れたな。出てこい」
佐谷沖斗「ぐうぅっ・・・」
  聖水を飲まされてしまったこの体には、
  もう留まれない。
佐谷忠也「沖斗ー!!」
佐谷蝶子「沖斗、沖斗!」
  少年の体へ駆け寄る両親の、
  溢れる愛が身を焼く。なんと忌々しい。
ジエンド「人に取り憑いては罪を誘発し、 犯させた罪を喰らう悪魔、というところか。 我の罪を喰らえず残念だったな」
悪魔「お前は、何者だ・・・」
ジエンド「ただの物欲で、異世界から紛れ込んだ狩人だ。 何に使うか知らないが、我々の世界で、 悪魔は高額で取引されていてね」
  ジエンドは、取り出した小瓶を
  こちらへ向けて傾けた。
  吸い込まれるように、意識が途切れる。

〇黒
  喰い・・・たかっ・・・

〇昔ながらの一軒家
ジエンド「ランクD・・・最初の獲物にしては上々だ。 平和に見えたが、良い狩場の匂いがする」
佐谷忠也「あの! ありがとうございました!」
佐谷蝶子「何か、お礼を・・・」
ジエンド「・・・」
ジエンド「お前たちの持っていた聖水は、使えるな。 いくらか都合できるか」
佐谷忠也「はい!」
  人間と関わるつもりはなかったが・・・
  効率良く稼ぐには、
  欠かせないパートナーとなりそうだ。
  待っていろ、悪魔ども。
  お前らを集めて、我の財と成してやる。

〇黒
  THE END

コメント

  • まんまと騙されました。
    咲良様のジ・エンドはクールで痺れます!
    ペットボトルの聖水、ホンモノだったんですね(笑)
    違う容器は無いのかって思ったら字幕でもツッコミ入ってて、ツボでした。
    少年が元に戻っても、ちゃんとした宗教なら安心して生活できそうですね。

  • 素晴らしい叙述トリック作品ですね!
    「地の文」にかすかな違和感を感じていたのですが、そのまま後半まで押し切られてしまいました!間違いなく「繰り返して読みたくなる」作品ですね!

  • もう一回読んできます!

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