黒いキューピット

平家星

#2 フェイバリット・グラス(後編)(脚本)

黒いキューピット

平家星

今すぐ読む

黒いキューピット
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇白い校舎
  アキラを見つめる瞳。その眼鏡には今西サラが映っている。
小野瞳「アキラ先輩・・・嘘でしょ? 今西さんのことが好きなんて・・・。この眼鏡、きっと壊れたんだ。そうに決まってる・・・」

〇ファンシーな部屋
  瞳のスマホに、アキラからのメッセージが届く。
小野瞳「アキラ先輩!」
  『……急な予定が入っちゃって、週末、水族館行けなくなった。ゴメンね』
小野瞳「えっ?」
小野瞳「ほ、本当に予定が入っちゃっただけかもしれないし・・・」

〇市街地の交差点
小野瞳「あれから、先輩から返事なかったな・・・」
  瞳が角を曲がると、前方にアキラとサラが親しそうに歩いているのが見えた。
兵藤アキラ「うそ~。サラちゃんは絶対モテるでしょ?」
今西サラ「そんなことないですよぉ」
  瞳がアキラをじっと見ると、アキラの好きなものとして、眼鏡にはサラの姿が映る。
小野瞳「先輩・・・。もしかして、本当にサラのことが・・・」

〇教室
  瞳は、楽しそうに話しているサラをボーっと眺めている。
小野瞳「・・・・・・」
女子生徒「ねぇサラちゃん、あいつ、こっち見てんだけど」
小野瞳「!」
  瞳は慌てて目を逸らした。
今西サラ「え? あ~、瞳? ほっといてやってよ。あいつ、誰からも相手にされなくて可哀そうだからさ」
小野瞳(・・・どういう意味?)

〇明るい廊下
  瞳が廊下を歩いていると、アキラが男子生徒と談笑しながら歩いてくる。
小野瞳「あっ、アキラ先輩・・・」
兵藤アキラ「お、おう・・・瞳ちゃん」
小野瞳「・・・水族館なんですけど、もし良ければ、別の日にでも・・・」
兵藤アキラ「い、いや。ちょっと、部活が忙しくってさ。しばらくは無理・・・。ゴメン、俺、もう行くよ」
小野瞳「えっ、先輩、そんな・・・」
男子生徒「アキラ、今のが例の1年生? めっちゃ必死じゃん。怖っ・・・」
小野瞳「・・・先輩、今までになく冷たかった。それにあの人の言葉、『例の1年生』って、私のこと・・・?」

〇学校の昇降口
小野瞳「・・・はぁ」
今西サラ「そうそう、先週、ショッピングモールでアキラ先輩に偶然会ってさ。教えてあげたの。『瞳は先輩のストーカーです』って」
女子生徒「マジ!? 最高なんだけど」
今西サラ「先輩も心当たりあったみたいでさ。『俺の好きな物とか、やたらとよく知ってた』っ言ってた」
女性生徒「ハハハ! あいつ、いつも窓から先輩見てたし、マジキモかったから」
今西サラ「別に、嘘ついてないよね、私」
今西サラ「あ~。聞かれちゃったか」
小野瞳「・・・・・・」
今西サラ「先輩も、たぶん私のこと好きなんじゃないかなぁ~。私たち、超いい感じなの」
小野瞳「・・・・・・」
今西サラ「黙ってんじゃねえよ。そもそも、お前みたいなクラスの5軍が話していい相手じゃねえだろ。アキラ先輩は」
小野瞳「・・・今西さん、お願い。先輩に言って。私のことで、嘘ついたって。正直に言ってよ・・・」
今西サラ「はぁ? ゴミのくせに調子乗んなよ。言うわけないじゃん」
  瞳はサラに土下座をする。
小野瞳「・・・お願いします」
今西サラ「気持ち悪ぃな! それ、やめろ!」
  サラが瞳を蹴り飛ばす。
  瞳はとっさに、カバンからカッターナイフを取り出して立ち上がった。
小野瞳「先輩に説明さえしてくれればいいから・・・」
女子生徒「瞳、それはシャレにならないでしょ・・・」
今西サラ「し、しまえよ」
小野瞳「お願い・・・私には先輩しかいないから・・・」
今西サラ「どうせ刺せないんだから、そんなのしまえって。ほら!」
  瞳はとっさに、サラの伸ばした手を振りほどく。
  その時、瞳の持つカッターの刃先が、サラの頬をかすめる。
今西サラ「痛ッ!」
  サラの頬に、一筋の傷ができ、血が流れる。
小野瞳「・・・!」
今西サラ「イヤァァァァァ!」
女子生徒「サラちゃん! 大丈夫!?」
小野瞳「そんな! 私、こんなつもりじゃ・・・」
今西サラ「・・・死ねっ! お前なんか生きてる価値ねぇんだよ! うわぁぁぁん!」
女子生徒「先生! 誰か先生呼んでっ!」
小野瞳「ごめ・・・ごめんなさい・・・」
  瞳は、逃げるようにその場から駆け出した。

〇市街地の交差点
小野瞳(・・・私の人生は終わった。5軍の分際で、1軍を傷つけた・・・)
  瞳が走っていると、目の前に下校中のアキラが見えた。
小野瞳「アキラ先輩・・・」
兵藤アキラ「瞳ちゃん・・・。よ、様子がおかしいけど、大丈夫? ・・・その手、血・・・?」
小野瞳「・・・どうして今西さんなんですか? 私とのこと、『運命』って言ってくれましたよね?」
兵藤アキラ「そんなこと言ったっけ・・・?」
小野瞳「今西さんは、いつも私をいじめるんです。あの人は、そういう人なの。今西さんが先輩に言ったことは、全部嘘なんです!」
兵藤アキラ「え・・・? そ、それはひどいね・・・」
小野瞳「私のこと、信じてくれますよね!?」
兵藤アキラ「・・・う、うん・・・信じるよ」
  瞳がアキラを見ると、眼鏡にはサラの姿が映っている。
小野瞳「なんで!? こんなに説明しても、サラのことが好きなんて! どうかしてる!」
小野瞳「先輩がいないと、本当に私、何にもなくなっちゃうのにっ・・・!」
兵藤アキラ「な、なんだよ。ごめん。俺、もう行くよ・・・」
小野瞳「・・・先輩は、やっと見つけた私の居場所なの・・・」
小野瞳「私、先輩を手放せない・・・」
  瞳はカッターを構えて、ゆっくりとアキラの背後に近づいた。

〇地下室
兵藤アキラ「・・・ううっ」
  そこへ、食事を持った瞳がやってくる。
小野瞳「今日は先輩の好きなパスタを持って来たんですよ。私が食べさせてあげますね」
兵藤アキラ「・・・あ、ありがとう。・・・君のことが好きだ。だから、この鎖を外して・・・」
小野瞳「・・・・・・」
兵藤アキラ「一緒にいると、約束するから・・・」
  瞳はアキラをじっと見つめ、眼鏡の表示を確認する。
小野瞳「・・・嘘ですね」
兵藤アキラ「う、嘘じゃない! 本当だよ!」
小野瞳「先輩、ダメですよ~。この眼鏡に私の姿が映るまで、鎖は外せません。私はいくらでも待ちますからね」
  瞳は笑顔で、ただじっとアキラを見つめていた・・・。

〇リサイクルショップの中
  瞳とアキラの姿が、ブラウン管テレビに映し出されている。
天海愛「瞳ちゃん、あの眼鏡をうまく使えなかったか・・・。また失敗・・・」
ピーチ「まあ、ずっと一緒にいたいっていう願いは叶えたんじゃねえのか? いつまで続くかわからないけどな。クックック」
天海愛「もう! 意地悪ばっかり言う!」
天海愛「・・・さぁ、そろそろお店開けなくちゃ!」
  リサイクルショップ『ブラックアロー』は、今日も開店する

次のエピソード:#3 ソウル・ブレスレット(前編)

成分キーワード

ページTOPへ