第11話 決戦前夜(脚本)
〇飛行機内
いよいよミス卑弥呼コンテスト本選が始まる。
玲子と大和の2人はコンテスト会場の邪馬台国パークに向かっていた・・・
玲子「いよいよコンテスト本選ね」
大和「はい」
玲子「大和くん、緊張してる?」
大和「そうですね、少しは」
大和「玲子さんは緊張してるというより、むしろ楽しそうですね」
玲子「うん。だってようやく卑弥呼様になれるからね」
玲子「それに、会場で弥生さんや伊代ちゃんに会えるのも楽しみ」
大和「僕も館長や真治さんに会えるのが楽しみです」
玲子「なんか、楽しみすぎて興奮してきた・・・」
大和「えっ・・・」
玲子「この気持ちが抑えられない!」
大和「玲子さん、飛行機の中ですので静かに・・・」
玲子「私は卑弥呼様になる! そして、ミス卑弥呼コンテストで優勝する!」
大和(またやった・・・)
客室乗務員「お客様、機内ではお静かに・・・」
客室乗務員「・・・って、またあなたですか!」
玲子「すみません・・・」
客室乗務員「はあ。全く・・・」
客室乗務員「気をつけてくださいね」
玲子「はい・・・」
客室乗務員「それと・・・」
客室乗務員「コンテストで優勝できるといいですね」
玲子「・・・はい! かんばります!」
玲子「私は卑弥呼様になる! そして・・・」
客室乗務員「・・・」
〇植物園のドーム
玲子「着いたー!」
玲子「またここに来れたね」
大和「はい」
館長「いらっしゃい」
玲子「館長さん! こんにちは」
大和「お久しぶりです」
館長「君たちにまた会えてうれしいよ」
玲子「私たちもです!」
館長「君たちの予選の書類も見させてもらったよ」
館長「若き日の卑弥呼を思わせる面白い写真じゃった」
玲子「えへへ」
館長「卑弥呼と邪馬台国への思いが書かれた作文も、気持ちが伝わってきてとてもよかった」
玲子「私と大和くんで考えたんです!」
館長「邪馬台国の記述は、熱い思いだけでなく、なかなか冷静な分析も書いてあって興味深かった」
大和「ありがとうございます!」
館長「明日のミス卑弥呼コンテストも楽しみにしているよ」
玲子「はい!」
館長「今日はコンテストの参加者や関係者が集まっての前夜祭がある」
館長「君たちもぜひ出席してくれ」
玲子「もちろん出ます! ね、大和くん」
大和「はい。楽しみです」
玲子「前夜祭まで時間があるけど、どうする?」
大和「僕はここの博物館に行きたいと思っています」
玲子「そっか。前は時間がなくて少ししか見れなかったもんね」
玲子「じゃあ、行こっか」
大和「はい」
〇美術館
大和「こ、これは!」
大和「この骨角器は・・・古代の人たちはこれを使って吉凶を占っていたのか」
大和「これは稲作の道具かな? どうやって使っていたんだろう・・・」
大和「ま、まさか・・・これはあの!」
玲子(大和くんはここに来ると人が変わるなあ)
玲子(古代史や邪馬台国が本当に好きなのね)
大和「ん?」
大和「ここには最近発表された論文も置いてあるんだ・・・」
大和「タイトル『邪馬台国の場所はほぼ特定された』!?」
大和「「邪馬台国の所在地論争に終止符を打つ」「この説を裏付ける証拠は」すごい・・・」
玲子「大和くん、何を読んでるの?」
大和「邪馬台国について書かれた論文です」
玲子「へえ。「私の説に間違いはない」「これまでの空理空論で書かれた論文とはわけが違う」・・・」
玲子「なんかすごい高飛車な物言いね。書いたのは誰なの?」
大和「吉野 氷見子(よしの ひみこ)さんという研究者です」
玲子「女性なんだ。有名な人なの?」
大和「はい。邪馬台国の研究で今最も注目されている研究者です」
玲子「ふーん。すごいのかもしれないけど、文章も高飛車だから、本人もきっと偉そうなおばさんなんでしょうね」
大和「それはわかりませんが・・・」
氷見子(ひみこ)「ごめんなさいね、偉そうなおばさんで」
大和「わっ!」
玲子「えっ!」
氷見子(ひみこ)「この高飛車な論文を書いた吉野氷見子です」
大和「吉野氷見子さん!?」
玲子「うそ、本人!?」
玲子(注目されている研究者っていうから、てっきり年配の方だと思っていたら・・・)
玲子(まだ若くて、しかも美人!)
氷見子(ひみこ)「あなたたち高校生でしょ」
大和「は、はい」
氷見子(ひみこ)「こんな若い子が私の論文に注目してくれてうれしいわ」
大和「吉野さんの大胆かつ理路整然とした考察にはいつも感銘を受けています」
氷見子(ひみこ)「まあ、ありがとう」
氷見子(ひみこ)「さすがはミス卑弥呼コンテストで予選を通過した2人ね」
玲子「知ってるんですか!」
氷見子(ひみこ)「もちろんよ、葛城玲子さんに藤原大和くん」
氷見子(ひみこ)「ライバルの情報くらいは知らないとね」
玲子「ライバル!?」
氷見子(ひみこ)「あら、知らなかったの? 私もコンテストに出場するのよ」
玲子「本当だ。吉野氷見子さん・・・」
氷見子(ひみこ)「プロフィールの写真は地味なスーツ姿だから、誰も気にもとめていないかもね」
氷見子(ひみこ)「研究者の私は作文のほうでアピールして予選を通過したわ」
氷見子(ひみこ)「あなたたちも他の参加者たちもなかなかやりそうだけど・・・」
氷見子(ひみこ)「邪馬台国や卑弥呼のことで、私は負けるわけにはいかないわ」
玲子(すごい・・・この自信に満ちた表情と凜とした佇まい)
氷見子(ひみこ)「大和くん」
大和「は、はい」
氷見子(ひみこ)「あなたが邪馬台国について本気で調べたいなら、一度私の研究室に来るといいわ」
氷見子(ひみこ)「それじゃあ、また」
玲子「あの人もコンテストに出るんだ」
大和「みたいですね」
大和「研究者の間でも異端児と言われながらも、必ず成果を出しているすごい人です」
玲子「そんなすごい人も出るなんて、楽しみだね」
大和「楽しみ!?」
大和(玲子さんは、本当前向きだな)
〇お祭り会場
玲子「前夜祭、盛り上がってるなあ」
玲子「ん?」
玲子「あれは・・・弥生さん!」
玲子「弥生さん、お久しぶりです!」
弥生「久しぶりね」
弥生「あなたもちゃんと予選を突破して来たわね」
玲子「当然です!」
玲子「明日は弥生さんの歌を聴くのを楽しみにしています」
玲子「でも、優勝するのは卑弥呼様になった私です!」
弥生「相変わらずね」
弥生「私は明日、自分の全てを出し切る」
弥生「だから・・・あなたも全力で向かってきなさい」
玲子「もちろんです!」
真治「よ、久しぶり」
大和「お久しぶりです、真治さん」
真治「彼女との仲は進展してるのかい?」
大和「は? い、いや、僕たちはそういう関係では・・・」
真治「いいねえ、若い人は。うやうやしくて」
真治「大和くん、明日はお互い全力を尽くそう」
大和「はい!」
玲子「コンテストの参加者はみんなここに来てるのかな?」
大和「そうだと思いますが」
伊代「大和!」
大和「伊代さん!」
玲子「伊代ちゃん!」
伊代「どう、この服?」
伊代「この前、2人でデートしたときに選んだやつだよ」
伊代「かわいい?」
大和「えっと、その・・・」
伊代「私、金魚すくいやりたい!」
伊代「2人で行こうよ♥️」
大和「いや、その、それは・・・」
玲子「何で私の顔を見るのよ」
マネージャー「伊代、地元新聞の取材の時間だぞ」
伊代「えー」
伊代「しょうがないなあ」
伊代「あなたたち、明日の準備はちゃんとしてきたんでしょうね」
玲子「もちろん。伊代ちゃんにも負けないわよ」
伊代「あなた、本当に口だけは達者ね」
伊代「まあ、私だけがすごくてもお客さんはつまらないだろうから、がんばってコンテストを盛り上げてよね」
マネージャー「伊代、早くしろ!」
伊代「わかったわよ」
伊代「大和、今度ゆっくり遊びに行こうね♥️」
大和「玲子さん、伊代さんが言っているのは、その・・・」
玲子「別にー。私、何とも思ってないしー」
〇お祭り会場
大和「あれ? 吉野さんが正面ステージの上に立ちましたよ」
玲子「何をするつもり?」
氷見子(ひみこ)「コンテスト参加者の皆さん、前夜祭は楽しんでる?」
氷見子(ひみこ)「明日のコンテスト、お客さんに楽しんでいただけるようみんなで盛り上げていきましょう」
氷見子(ひみこ)「・・・ですが、優勝するのは当然私です」
弥生「は? 何適当なこと言ってるの。優勝するのは私よ」
伊代「ちょっと、おばさん。勝つのは私と壱与ちゃんに決まってるのよ!」
氷見子(ひみこ)「おばさんって・・・」
氷見子(ひみこ)「いいわね、あなたたち。明日が楽しみだわ」
玲子「私が卑弥呼様になって、そして・・・私たちが優勝する!」
〇先住民の村
玲子「前夜祭、楽しかったね」
大和「はい。玲子さんが突然ステージの上にあがったときはびっくりしましたよ」
玲子「えへへ。みんなを見てたら、つい体が動いちゃったのよね」
大和「玲子さんらしいです」
大和「・・・」
玲子「・・・」
大和(ここに来るまでいろいろあったけど、それも明日で終わりか)
大和(何だかんだで楽しかったな)
大和(ミス卑弥呼コンテストは明日で終わり)
大和(ということは、玲子さんとこうして過ごすのも明日で終わりか・・・)
玲子(大和くんと一緒に過ごすのも明日で終わり・・・か)
「あの・・・」
玲子「何?」
大和「・・・」
大和「玲子さん」
大和「明日は全力で玲子さんの考える卑弥呼を表現しましょう。そして、優勝しましょう!」
玲子「もちろん。私はここで卑弥呼様になる。そして、優勝する!」
玲子(大和くん・・・)
大和(玲子さん・・・)
コンテストに向けてここまでパートナーとして協力してきた玲子と大和。
そして次回、玲子は邪馬台国の女王・卑弥呼になる・・・
ここに来て、さらに強そうなライバル登場とは😆
そして二人の気持ちも確実に近付いているのに……もどかしい!けどそれがまた良いですね〜☺️
伊代ちゃん、大和が選んだからって着物で来たのがツボりました😂
引き続き楽しませていただきます✨
コンテスト前日に、さらなるライバルキャラ出現、驚きの展開ですね。ボスキャラの風格がありながら、オバサン呼ばわりされる存在。。。愛すべきキャラっぽいですねw
氷見子先生…ラスボスの風格ですが、勝負の結末はいかに!?