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きせき

エピソード28-青色の刻-(脚本)

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〇昔ながらの一軒家
北石刻英「本当に良かったんですか? この子の名前、青慧くんで・・・・・・」
喜多井譲治「ええ、青く聡いなんて、素敵じゃないですか?」
喜多井譲治「それに、優しくて、強いお姉さんのようになって欲しい、というのも素敵です」
北石刻英「ときよ、ちゃん。だから・・・・・・きよと、くん」
北石刻英「えぇ、刻世ちゃんは本当に優しい人なんです。それに、強い人なんです」
北石刻英「でなければ、あの家を継ぐことできなかった」
北石刻英「本当なら、私も彼女を傍で支えたかったし、そうすべきだった筈なのに・・・・・・」
喜多井譲治「何だか、妬けますね」
北石刻英「え?」
喜多井譲治「いや、だってそうでしょう? 私なんてまだまだ刻世さんには及ばない」
喜多井譲治「刻世さんを超えることは無理なのかも知れませんが、並ぶこともまだできそうになくて」
北石刻英「そんな・・・・・・譲治さんと刻世ちゃんは全然、違います」
北石刻英「確かに、一緒にいる長さだけなら刻世ちゃんの方が長いです」
北石刻英「でも、譲治さんも優しくて、強い人です。そして、これからも一緒に生きて行きたい人」
北石刻英「・・・・・・なんですよ。私の人生が続く限り」
喜多井譲治「刻英さん・・・・・・」
北石刻英「譲治さん・・・・・・」

〇配信部屋
明石青刻「さて、また話が逸れてしまいましたが、今度は貴方の質問に答えましょう」
黒野すみれ「私の、質問・・・・・・」
明石青刻「ええ、おそらく、貴方は先程から何度か、疑問を抱いているのでは?」
明石青刻「何故、僕があのオルゴールで貴方を殺しかけた事実を知っているのか」
明石青刻「何故、僕がこの封筒を持っていたのか?」
明石青刻「ハッタリだけでは口にできないことを知りすぎていないか?」
明石青刻「・・・・・・と思っていても、不思議じゃないです」
黒野すみれ「・・・・・・」
  それは彼の言う通りだった。
  確かに、秘術のことを知っていて、ある程度、
  推測が立てられることもあるだろう。
  だが、よく考えてみれば、何故、彼は川西刑事との
  会話の詳細を知っていたのか。
  あとは、玄人さんに胡蝶庵で何回も会ったことも
  推測は立てられるが、推測ではないのだとしたら?
  私はそのことをそのまま、青刻さんに伝えると
  彼は一瞬だけ、驚いた。
明石青刻「成程、ミステリーは苦手と聞いていたので、少しヒントを出しすぎましたかね」
黒野すみれ「教えてくれますか? 貴方が何故、そのことを知っていたのか?」
  私は青刻さんの答えを待つ。
  悩んでいるような素振りを見せる青刻さん。
  そして、彼は次第に口を開き始めた。
明石青刻「すみません。答えようとは思ったのですが、今は答えない方が良いと思ってしまいました」
黒野すみれ「え?」
  困惑する私に、落ち着き払う青刻さん。
  彼は真面目なのか、冗談なのか、こうも続けた。
明石青刻「物語の展開は美しい方が良い。美しければ、美しいだけ物語の最後はとても美しい」
黒野すみれ「美しいって・・・・・・」
明石青刻「あぁ、すみません。貴方がどこまで自分の力で物語を完結できるか。運命を覆せるのか」
明石青刻「それも知りたいのかも知れません」

〇配信部屋
明石青刻「あれ? 破棄分のオルゴールが1つない?」
明石青刻「確か、これは春刻君から依頼があったヤツだから・・・・・・あ!!」
  それは悪魔の悪戯のような手違い。
  このままだと・・・・・・

〇屋敷の書斎

〇配信部屋
明石青刻「まぁ、今は警察もうろついてるし、無闇に動かない方が良いか・・・・・・」
明石青刻「痛くない腹も突かれるのは痛いしね」
明石青刻「で、もし、彼が死ぬことがあれば、助けて・・・・・・」
明石青刻「大丈夫。僕ならできる・・・・・・あの力だって殆ど解明できてる」
明石青刻「いや、もしかすると、僕以外にも運命を変えようとする人が現れるかも知れないかも」

〇新緑

〇配信部屋
明石青刻「あの人だってむざむざ自分が死ぬ運命を受け入れるタイプじゃないだろうし」
明石青刻「運命か・・・・・・馬鹿馬鹿しいけど、もし、覆すことができるなら爽快かもね」

〇配信部屋
  私は彼の意思を1つ1つ、考える。
  確かに、明石青刻は明石春刻の兄弟ではない。
  いや、実の兄弟だってたまたま同じ家に住むことになった
  他人のようなもの、かも知れない。
  しかも、彼は幼い頃の記憶で本物だというものが
  存在しない。
  そんな彼に一般論で何かを言うのは間違っているような
  気さえした。
黒野すみれ「・・・・・・」
明石青刻「薄情・・・・・・だと思いますか?」
明石青刻「本当なら、彼を救うべく貴方に全面協力するべき場面なんでしょうけど」
黒野すみれ「・・・・・・分かりません」
明石青刻「分からない?」
黒野すみれ「だって、私は貴方ではないから。そして、貴方は貴方で、他の誰かではないから」
  よく脚本を読んでいると、自分の都合で主人公なり、
  周囲の人間なりを巻き込んでいくような人物がいる。
  そして、巻き込まれるのを拒むと、
  ヒステリーを起こしたり、正論を振り翳したりする
  人物も出てくる。
  冷静に考えれば、誰もが同情心や共感力を持っている
  訳ではないだろうに・・・・・・。
  私はそんなことを言うと、青刻さんは何故か、笑った。
明石青刻「ふふ、何だか、春刻君が羨ましいですね」
黒野すみれ「う、羨ましい?」
明石青刻「えぇ、もし、これがゲームなら今度は春刻君でプレイしたいですね」
明石青刻「あ、でも、もし、そうなら、玄人くんやトキさんとの関係も変わるのかな」
明石青刻「あと、母さんや刻世さん、父さんとの関係性も・・・・・・」
  寂しそうに言う青刻さんは息を少し吐き出した。
  視線を彷徨わせ、私を見る。
  その仕草は奇しくも彼によく似ていた。

〇風流な庭園

〇配信部屋
明石青刻「ねぇ、もし、貴方がどうしても、春刻君・・・・・・彼を救えなかった場合、」
明石青刻「僕は貴方の力になることを誓う、と言ったらどうでしょう?」
黒野すみれ「え?」
明石青刻「まだこの先のことは分からないけど、もしかすると、そういう未来もあるかも知れない」
明石青刻「そんな未来は・・・・・・来ないで欲しいけど、未来は保証できないから」
  未来よりも、今、手を貸してくれる方が明らかに
  良い気がするのだが、こればかりは私の事情にすぎない。
黒野すみれ「分かりました。もし、私が彼を救えなかった時は助けてください」
  おそらく、彼にも大きな力があるのだろう。

〇黒
  それは明石家の秘術の書に匹敵するような、大きな力。

〇配信部屋

〇電脳空間

〇魔法陣のある研究室

〇配信部屋
明石青刻「ところで、これから、どうするつもりなんですか?」
  どうするつもり・・・・・・というのは
  これから、何をするつもりなのか。ということだろう。

〇黒
  確かに何人かは現在、疑っていない人物がいた。

〇配信部屋
黒野すみれ「消去法ですが、夕梨花さんを私はあの庭で見ています」
明石青刻「夕梨花さん・・・・・・」
明石青刻「朝兄さんの専属使用人の彼女ですね」
黒野すみれ「えぇ、最初は怪しい人達が沢山いたので、忘れていたんですけどね」
黒野すみれ「春刻を消す為に何か仕掛けに行ったのか」
黒野すみれ「まさか、秋川さんに花を供えてたとかも考えたんですが、考えすぎですかね・・・・・・」
明石青刻「花ですか・・・・・・ちなみに、彼女の情報とかは?」
黒野すみれ「まだ読んでいません」
  私は基本的に「怪しい」と思った時に、あのマリさんの
  真理の封筒を開けるようにしていると言う。
明石青刻「成程、確かにこのファイルには偽りがない。逆に言えば、偽りがないから」
明石青刻「それに引きづられて、思考することや推理することはできなくなる」
黒野すみれ「あとは知られたくないことくらいありますよね。誰でも」
明石青刻「・・・・・・まぁ、確かに誰彼構わず知られるには嫌な過去を持ってるかも知れませんね」
明石青刻「僕以外は・・・・・・」
  3歳までの北石青慧としての記憶と
  18歳から現在までの明石青刻としての記憶しかない
  ある意味、過去を持たない彼。
  果たして、どちらの方が幸せで不幸かなんて分からない。
  だが、簡単に決めつけて良いものではないだろう。
明石青刻「本当に・・・・・・貴方は探偵向きじゃないようですね。優しすぎますから」
黒野すみれ「優しいかはわかりませんが・・・・・・えぇ、確かに探偵には向かないでしょうね」
明石青刻「じゃあ、彼女の情報を読みに帰った方が良いですね」
  そう言うと、青刻さんはリエさんを呼んでくれて、

〇殺風景な部屋
  リエさんが迎えに来てくれた。
明石青刻「すみません、玄人君には急な用事を頼んでしまったので」
  青刻さんは尤もな理由を言うと、
  リエさんは「いえいえ」と答えた。
リエ「では、参りましょう」
黒野すみれ「えぇ、青刻さん。ありがとうございました」
明石青刻「いえいえ、こちらこそ。あ、そうだ。これを・・・・・・」
  そう言うと、彼は私に何かを握らせて、エレベーターを
  作動させた。

〇黒

〇華やかな広場

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