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きせき

エピソード29-白色の刻-(脚本)

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〇安アパートの台所
白城桃香「じゃあ、百合香。母さん、行ってくるから」
白城百合香「うん、今日も遅いの?」
白城桃香「うん、もしかしたら、百合香が学校に行くまでに帰れないかも」
白城桃香「百合香はしっかり者の、良い子だから明日もちゃんと起きて学校、行けるよね?」
白城百合香「うん。大丈夫だよ」
白城桃香「うんうん。さすが、私の自慢の子だよ」
???「桃香、早くしないとお店、また遅刻するよ?」
白城桃香「もぉ、龍之(たつゆき)はせっかちなんだから。すぐ行くから車で待ってて」
???「へいへい。じゃあね、百合香ちゃん」
白城百合香「はい・・・・・・おか・・・・・・いえ、桃香さんをよろしくお願いします」
???「うわぁ、礼儀正しい。やっぱり、桃香には勿体ない子だわ」
白城桃香「はいはい、龍之さん、少し騒がしいですよ? はい、行った! 行った!!」
白城百合香「今度はあの人がお父さんになるの?」
白城桃香「うん、龍之、お金持ちだから百合香の行きたい学校に通わせてあげられるかなって」
白城百合香「行きたい・・・・・・学校?」
白城桃香「うん、だって、百合香は凄い勉強できるからさ」
白城桃香「あたしは勉強は苦手だったからこんなだけど、」
白城桃香「百合香なら幸せな未来が待ってると思うからさ」
「おーい、桃香!!」
白城桃香「もぉ、本当にせっかちな男。じゃあ、ご飯、チンして食べて、朝はこれね」
白城百合香「(あ、今日、消費期限、切れたパンだ)」
白城桃香「じゃあ、火は使わないことと、学校に行く時は・・・・・・」
白城百合香「鍵を閉めて、鍵は落とさないだね」
白城桃香「うん、よろしい! じゃあ、行ってくるね」
白城百合香「お母さん・・・・・・」

〇黒
  それが白城百合香の少女時代の家庭環境で
  これが学校環境だった。

〇学校の下駄箱
白城百合香「おはよう」
男子小学生「うわぁ、白城だー」
男子小学生「白城だー!!」
男子小学生「お前の家の母ちゃんって夜のオンナってヤツなんだろ。大人はみんな、言ってるよ」
男子小学生「あれだろ? 政治家とか社長とか金持ちに群がるんだよな」
男子小学生「まぁ、お前んち、貧乏だもんなぁ」
男子小学生「そうそう、服は洗濯しているからって言ってけど、毎日、おんなじ服はねぇよな」
白城百合香「・・・・・・」
男子小学生「ちっ、何とか言えよ。先公にまたチクらねぇのかよ」
男子小学生「そうそう、チクっても無駄だけど、何も言わねーのも無視されてみたいで、気分悪いわ」
「あんた達、バッカじゃないの?」
男子小学生「あんた、達?」
男子小学生「バカ?」
女子小学生「そうよ、あんた達はバカ。百合香ちゃんはいつも100点でしょ」
男子小学生「うるせぇよ、バカスミ」
男子小学生「そうだ、そうだ。デカスミも100点じゃねぇだろう」
女子小学生「お生憎様」
女子小学生「今日、返ってくるテスト、さっき先生に私の点数、聞いたら、最高得点でした〜」
女子小学生「あ、勿論、百合香ちゃんもね」
男子小学生「・・・・・・」
男子小学生「・・・・・・」
男子小学生「ふん、ガリ勉どもと話してたら、勉強しか能がなくなるや」
男子小学生「そうだ、そうだ。行こっ行こっ」
白城百合香「花純(かすみ)ちゃん・・・・・・」
女子小学生「あ、百合香ちゃん。おはよう!!」
白城百合香「おはよう・・・・・・さっきはありがとう」
女子小学生「え? 私は本当のこと、言っただけだよ」
女子小学生「いつもテストは満点だし、本も沢山読んでるし、係の仕事も完璧だし、凄いよね」
白城百合香「そんなことないよ・・・・・・花純ちゃんだって運動神経、良いし、」
白城百合香「図工もこの前、市のコンテストで銀賞だったし・・・・・・凄いよ」
女子小学生「ふふっ、ありがとう」
先生「やぁ、白城さんに水野(みずの)さん、おはよう」
白城百合香「あ、先生・・・・・・おはようございます」
女子小学生「おはようございます。って、私、もうさっき、挨拶しましたけどね」
先生「まぁまぁ、良いじゃないか。朝の挨拶は何回、やっても。あ、そうだ」
先生「1時間目が始まる前に2人にお願いがあるんだけど、良いかな?」
女子小学生「お願いですか?」
先生「うん、1時間目はみんなで学校周りの地図を作る予定だから水野さんは教室に行って、」
先生「班用の机にするようにして、教科書の16ページからを読んで準備しておいてって」
先生「言ってくれるかな?」
先生「白城さんは色んな地図を用意してるから先生と一緒に取りに行ってくれるかな?」
女子小学生「わー、色んな地図って楽しそう。私も百合香ちゃんとそっち、やりたかったな」
白城百合香「あ、だったら・・・・・・私が教室へ・・・・・・」
先生「あ、いや。水野さんは皆も指示を出すの、得意だろ。今回は連絡係、頼むよ」
女子小学生「ふふ、冗談ですって。地図はまた後から見れるし、百合香ちゃん、また後でね」
白城百合香「うん、また後で・・・・・・」
先生「じゃあ、行こうか」
白城百合香「あ、はい・・・・・・」
女子小学生「・・・・・・」
女子小学生「(はぁー、めんどくさー!!)」
女子小学生「(成績だけじゃなくて、内申も落とすなって言われてるから仕方なく猫かぶってるけど)」
女子小学生「(疲れてきたなぁ〜あの子、話すのトロいから眠くなるし)」
女子小学生「(まぁ、推薦確定するまでせいぜい私を良い人でいさせてね。百合香ちゃん?)」

〇黒
  直接的に虐められるか
  一見、友好的だが、それは利益の為のつきあいなのか
  白城百合香を取り巻く環境はあまり良いものとは
  言いがたかった。
  そして、それは担任や身近な大人達から
  齎されるものでも然程、差がなかった。
先生「(はぁ、あの子の家の家庭訪問、やっと日時、決まったよ)」
先生「(幾ら、夜の仕事だからって1日くらい融通きかせられないものかね・・・・・・)」
先生「(折角、この日、ノー残業デーなのに)」

〇安アパートの台所
白城桃香「あ、百合香? 帰ったの!?」
白城百合香「うん、近所に可愛い猫がいて、見てたの」
白城桃香「そう、百合香は誰に似たんだか、動物好きだからね」
白城桃香「あ、そうそう。百合香はこの人のこと、どう思う?」
  そこには亜麻色の髪の優しそうな男性が
  1人、写っている。
白城百合香「うん、優しそうな人・・・・・・だと思うよ」
白城百合香「(たまに、お母さんが連れてきている男の人はこわい人もいるけど、)」
白城百合香「(この人はこわくない)」
白城桃香「そう・・・・・・彼はね、夏坂昂さんって言ってね」
白城桃香「ついこの間、お母さんが困っていたら助けてくれた人なの」
白城桃香「で、お礼にお茶でもって話になって、」
白城桃香「彼にも1人、男の子がいてすっかり意気投合しちゃったの」
白城桃香「百合香はお金持ちの人と結婚するのと、優しい人と結婚するの、どっちが良いと思う?」
白城桃香「あ、夏坂さんはまだそんな段階じゃないけど、これ以上、惹かれる前に諦めたいの」
白城百合香「・・・・・・」

〇黒
  今、思えば、母は感情で行動する人だったが、
  2つのうち、どちらかで悩むと決め切れない人だった。

〇安アパートの台所
白城百合香「それはお母さんが決めて良いことだよ。夏坂さんを諦めたくないなら、諦めなくて良い」
白城百合香「お金も好きって気持ちもいつかなくなるかも知れないけど、」
白城百合香「お母さんにとって幸せな方を選んで欲しい・・・・・・と思うよ」
白城桃香「うっ、百合香はなんて良い子なんだろうね」
白城桃香「自分の幸せよりも、人の幸せを選べるなんて・・・・・・龍之じゃないけど、」
白城桃香「本当にあたしには勿体ない子だよ」
  夕暮れの中、ボロアパートで抱きしめてくれる母。
  私の記憶の中にある、最も幸せな思い出の1つ。

〇黒
  思えば、この時、私は母にかける言葉を
  間違えてしまったのだ。

〇貴族の部屋
黒野すみれ「本名は白城百合香。この屋敷では夕梨花と名乗っている」
黒野すみれ「朝刻さんの専属使用人。結論から言うと、彼女は公立の小中学校でトップの成績を修め、」
黒野すみれ「高校でも難関大学にある医学部に十分進学できる成績を残す」
黒野すみれ「ただ、母親の方は夏坂という男性と連絡が取れなくなり、以前のように不特定の男性との」
黒野すみれ「交友を繰り返し、その結果、薬物を違法に摂取させられてしまう」
黒野すみれ「その薬物が強い依存性を持っていて、ここ5年間で3回ほど、」
黒野すみれ「更生施設を行ったり、来たりしている」
黒野すみれ「それが大学にもバレて退学せざるをえなくなり、夕梨花さんはとある山の樹海へと向かう」

〇けもの道
白城百合香「(とうとうこんなところへ来てしまった)」
白城百合香「(まぁ、人がいるところだと助けられてしまうかも知れないし)」
白城百合香「(これでも飲めばすぐにこの世とはおさらばね)」
白城百合香「(母の刑が決定する少し前、私は母の知り合いの男からこれをもらった)」

〇安アパートの台所
???「あれ、桃香は?」
白城百合香「今はいませんが・・・・・・どちら様ですか?」
???「ふぅーん、あっそ。頼まれ事があったんだけど、出直すか」
白城百合香「・・・・・・」
???「あ、そうだ。これ、良かったら?」
白城百合香「これは?」
???「一言で言えば、毒。消したいヤツの1人や2人、いるだろう?」
???「茶にでも1滴、入れて飲ませれば、あの世行きかもね」
白城百合香「何故、私に?」
???「さぁ、世の中はクソって顔してたから? 俺は優しいんでね」

次のエピソード:エピソード30-白色の刻-

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