第10話 私の卑弥呼様…見つけた(脚本)
〇テーブル席
ミス卑弥呼コンテスト本選に向けて準備を進める2人。
玲子と大和が考える、コンテストで玲子が表現する卑弥呼とは・・・
玲子「いよいよコンテスト本選ね」
大和「はい」
玲子「そこで私は卑弥呼様になる!」
玲子「けど、どうやって卑弥呼様を表現するか・・・」
玲子「あんなに卑弥呼様になりたがっていたのに・・・」
玲子「いざ本番となると、卑弥呼様をどう表現したらいいかわからない・・・」
大和「・・・」
玲子「弥生さんから連絡が来てる!」
弥生「コンテストの準備は進んでる?」
弥生「私たちは順調。完璧な仕上がりよ」
弥生「あなたたちには悪いけど、優勝は私たちで決まりね」
弥生「じゃ、本番で会うのを楽しみにしてるわ」
玲子「・・・」
玲子「弥生さん、完璧な仕上がりだって」
玲子「すごい自信があるみたい」
玲子「それに比べて私たちはまだ・・・」
伊代「大和、何してるの?」
大和「伊代さん!」
玲子「伊代ちゃん!」
大和「実は・・・」
伊代「まだコンテストの発表内容の打ち合わせをしてる?」
伊代「そんなんで本番に間に合うの?」
大和「それは・・・」
玲子「だ、大丈夫よ。だいたい完成してて、ちょうど最終確認してたのよ」
大和(玲子さん、そんな嘘ついて・・・)
伊代「ふーん」
伊代「ま、どっちにしても、私が演じる壱与(いよ)ちゃんには敵わないわよ」
伊代「あなたたちや他の参加者には申し訳ないけど、観客の目は私一人に釘付けね」
伊代「でも、落ち込まないでね」
伊代「大和、コンテストが終わったらまた2人で遊びに行こうね♥️」
大和「あの、伊代さん、それは・・・」
伊代「じゃあ、またね」
大和「玲子さん、すみません」
玲子「別にー。私、何とも思ってないから」
〇テーブル席
大和「とにかくコンテスト本選について考えないと」
玲子「そうね。もう時間がないわ。どうすれば・・・」
玲子「そうだ!」
玲子「合宿よ!」
大和「合宿?」
玲子「そう。コンテスト本選に向けて合宿を行うわよ!」
大和「でも、本番までもうそんなに時間がないですよ」
玲子「大丈夫。ちょうど明日からは夏休み」
玲子「明日と明後日の2日間でやるわよ!」
大和「明日!?」
玲子「今から場所を決めるわよ。そして、帰ったらすぐ準備よ!」
大和(今さらだが、とにかく行動力がすごすぎる・・・)
〇山中の坂道
玲子「自然の中を歩くって気持ちいいね」
大和「ハア、ハア・・・はい」
大和(なぜこんなことに・・・)
大和「玲子さん、コンテスト直前にどうして合宿をするんですか?」
玲子「アニメや映画だと合宿のシーンがよく出てくるじゃない」
大和「はい?」
玲子「そして、その合宿を経て、メンバーの結束が固まったり、今後の進むべき方向性が見えてきたりするのよ」
大和「はあ・・・」
玲子「だから、合宿をすれば、私たちがコンテストでどんな卑弥呼様を表現すべきかが、きっと見えてくるはずよ!」
大和(そんな何の根拠もない理由で・・・)
玲子「さ、行くわよ」
大和「はい・・・」
〇山道
大和「道の端に誰か座っていますね」
玲子「大丈夫ですか?」
おじいさん「これはどうも。すみません、大丈夫です」
玲子「ケガでもされたとか・・・」
おじいさん「いやいや、疲れて休んでいるだけです」
おじいさん「「まだまだ若い者には負けん」と思って登っていたんですが、甘く見ていたようです。ハハハ」
おじいさん「さて、そろそろ行くか」
玲子「荷物重そうですね」
おじいさん「キャンプ道具も持っているんです。先に出発した連れの分もあるからね」
玲子「よろしければ、途中まで荷物をお持ちしましょうか?」
おじいさん「いやいや、そんなことを若い娘さんにお願いするわけには・・・」
大和「僕が持ちますよ」
玲子「遠慮しないでください」
おじいさん「・・・じゃあ、お願いしてもいいかい」
大和「はい」
玲子「じゃあ、行きましょう」
おじいさん「いやあ、ありがたいねえ。お嬢さんがまるで女神様のように見えるよ」
玲子「まあ。でも、私は女神様じゃなくて、邪馬台国の女王・卑弥呼様になるんです!」
おじいさん「は?」
〇湖畔
玲子「おじいちゃんも無事に連れの人に会えてよかったね」
大和「そうですね」
玲子「ここもきれいな場所ね」
玲子「ん? あそこで何か倒れてる」
大和「動物・・・みたいですね」
玲子「行ってみましょう」
大和「はい」
トナカイ「・・・」
玲子「鹿?」
大和「いや、トナカイみたいですね」
玲子「苦しそうな顔をしてる。どうしたのかしら?」
大和「あっ! 足から血が出てます。何か針のようなものが刺さってますね」
玲子「これは釣り針と釣り糸・・・誰かがここに捨てたのね」
玲子「ちょっと待っててね」
玲子「・・・よし。針を抜いて、簡単な治療をしてと。これで大丈夫かしら?」
大和「傷も浅いようですし、表情もよくなった気がします」
トナカイ「・・・」
玲子「走っていったわ。あれだけ走れれば大丈夫ね」
大和「そうですね」
大和(玲子さんは誰に対してもやさしい)
大和(そして、すぐに手を差し伸べる行動力もある)
大和(すごいな)
〇大樹の下
玲子「着いた。ここが今日泊まる場所よ」
大和「いいところですね」
玲子「でしょ。昨日調べた瞬間ここにするって決めたのよ」
玲子「大和くんはテントをお願い。食事の用意は私に任せて!」
大和「わかりました」
玲子「おいしいキャンプ飯を作るわよ♪」
玲子「・・・」
玲子「あれ?」
玲子「!!」
玲子「大和くん!」
大和「はい?」
玲子「食材がない!」
大和「は?」
大和「どこかに置き忘れてきたとか・・・でも、玲子さんの荷物はひとつですよね」
玲子「まさか・・・」
玲子「今日家を出る前に卑弥呼様になるイメトレをやっていて・・・」
玲子「そうだ! それで夢中になって食材をリュックに入れるのを忘れてた!」
大和「えっ・・・」
玲子「大和くん、どうしよう?」
大和「どうしようと言われても・・・」
大和「そろそろ暗くなりますし、食べられるものを探しに歩き回るのは危ないですね」
大和「朝まで我慢するしかないですね」
玲子「えー、お腹すいた」
大和「仕方ありません」
大和「時間もあるので、コンテストのアイデアでも考えましょう」
大和「この大自然の中で考えればいいアイデアが・・・」
玲子「お腹すいた・・・」
おじいさん「これは先ほどのお若い2人」
玲子「おじいちゃん!」
大和「ここでキャンプをしていたんですね」
おじいさん「何か困った顔をしとるの。どうかしたのかい?」
大和「実は・・・」
おじいさん「ハッハッハ。食材を忘れたか。それは災難じゃったのお」
玲子「笑い事じゃありませんよ」
おじいさん「いやあ、すまんすまん」
おじいさん「なあに、そんなことなら心配いらない」
おじいさん「わしらのほうに食材はたくさんある。料理も今作ってる」
おじいさん「よかったら一緒にどうじゃ?」
玲子「いいんですか!」
おじいさん「もちろんじゃ。2人には助けてもらったしの」
おじいさん「それに食事はみんなで食べるほうがおいしい」
「ありがとうございます!」
〇大樹の下
おじいさん「さあ、好きなだけ食べてくれ」
玲子「おいしそう! いただきまーす!」
大和「いただきます!」
「おいしい!」
おじいさん「そうかい、それはよかった」
おばあさん「おいしそうに食べるわねえ」
玲子「この料理おいしすぎ。幸せ♥️」
大和「はい!」
大和「ん? あそこにいるのは・・・」
玲子「さっきのトナカイ?」
大和「何かをくわえてますよ」
大和「これ・・・木の実ですね。食べられるやつです」
玲子「これを私たちにくれるの?」
トナカイ「・・・」
玲子「ありがとう!」
玲子「そうだ! トナカイくんも一緒に食べようよ」
トナカイ「・・・」
おじいさん「どうだ、うまいかい?」
おばあさん「おいしそうに食べてるわね」
玲子「トナカイくん、楽しそう」
おじいさん「みんなで楽しく食べるご飯がおいしいのは、動物も人間も一緒だ」
玲子「本当ですね」
大和「はい」
〇原っぱ
玲子「きれい・・・」
大和「そうですね」
玲子「いろいろあったけど、楽しかったね」
大和「はい」
玲子「あー、でも私はダメだなあ。食材を忘れるなんて」
大和「仕方ないですよ」
大和「でも、おじいさんとトナカイを助けようとすぐに動いたのは玲子さんです」
玲子「まあ、それはそうだけど・・・」
玲子「でも、こんなので何でも完璧にできる卑弥呼様になんてなれるのかな?」
大和「何でも完璧にできる人なんていないですよ」
大和「確かに卑弥呼はカリスマ性を備えた偉大な人物だったと思いますが・・・」
大和「邪馬台国のことをすべて卑弥呼がやったわけじゃないですよ」
大和「卑弥呼も周りの協力を得ながら国を治めていたと思います」
大和「卑弥呼を支える人たちがいたからこそ、卑弥呼は邪馬台国を治めることができた・・・と僕は思っています」
玲子「みんなの協力を得て国を治めていた・・・」
大和「だから、みんなで助け合っていけばいいんじゃないでしょうか」
玲子「・・・」
玲子「みんなで助け合っていく・・・か」
玲子「大和くん」
大和「はい?」
玲子「私の卑弥呼様・・・見つけた」
〇空港の滑走路
玲子「いよいよコンテスト本番ね」
玲子「大和くん、行くわよ」
大和「はい」
玲子は、ついに自分が表現する卑弥呼を見つけた。
そして、いよいよミス卑弥呼コンテスト本選が始まる・・・
情けは人の為ならず、といった所でしょうか。
優しい玲子だから、きっと人が集まるんでしょうね☺️
そしてそれが卑弥呼像に近づいていく……
いよいよ卑弥呼コンテスト、楽しみです😆
理想の為政者像からの卑弥呼像をイメージした2人、心根が優しいからこそ至ったイメージですね。玲子さんの”思い立ったらすぐ行動”、”まずは手助け”は、そこに至るまで必要な尊い気質ですよね!
突然の合宿に、ラブモード突入かと思いましたが、人助けや食材も忘れてそれどころじゃなかったかな?
玲子はトナカイと心を通わせるなんて、特殊能力開花じゃないですか!?(人慣れしているだけかも)
学生らしく、ほのぼのムードの合宿でしたがコンテストのヒントが掴めたようてすね。
私には玲子が何をするか想像つかないので、引き続き読みたいと思っています。