第8話 ブルートという街(脚本)
〇西洋風の部屋
アルノに連れられ、
孤児院にやってきたカレンとハンナ。
二人はフレディに案内され、
客間に座っていた。
フレデリック(恋愛小説家)「すみません、何もなくて」
カレン「ううん、気にしないで!」
カレン「私たちが勝手にここまで来ちゃったんだし」
フレデリック(恋愛小説家)「それで、・・・あの、御用というのは?」
フレデリック(恋愛小説家)「あぁ!」
フレデリック(恋愛小説家)「僕のアドバイスが役に立たなかったから、お役御免ですね!」
フレデリック(恋愛小説家)「どうぞ僕ので良ければ首でも何でも持って帰って・・・」
カレン「そんなわけないでしょ!」
ハンナ「フレディさん、姫様は・・・」
ハンナ「あの・・・えっと・・・」
カレン「私、回りくどいの嫌いだから率直に訊くね」
カレン「フレディ、あなた、ジークなんでしょ!?」
フレデリック(恋愛小説家)「・・・はぁ!?」
〇西洋風の部屋
アルノ(宮廷画家)「あっはっは!」
アルノ(宮廷画家)「フレディがジーク王子だって?」
アルノ(宮廷画家)「ちょ~面白いんだけどっ!」
フレデリック(恋愛小説家)「あの、僕・・・そんなにジーク王子っぽいですか?」
カレン「いや、そういうわけじゃ・・・」
ハンナ「ご、ご、ご、ごめんなさい!」
ハンナ「私の無理のある推測のせいなんです!」
ハンナ「本当ごめんなさい!」
アルノ(宮廷画家)「あっはっはっ!」
フレデリック(恋愛小説家)「もちろん、僕はジーク王子ではないけれど──」
フレデリック(恋愛小説家)「プリンセスとハンナさんにはそう思った理由があるんですよね?」
カレン「えっと・・・まぁ・・・ね」
フレデリック(恋愛小説家)「・・・もしかして、さっき王宮で僕が言ったことですか?」
フレデリック(恋愛小説家)「他の人には言えない秘密。それが──」
フレデリック(恋愛小説家)「僕がジーク王子だってことだと思ったんじゃないかって」
カレン「・・・」
フレデリック(恋愛小説家)「本当に、プリンセスはジーク王子に愛されたいと願っているのですね」
カレン「ち、違っ!あれはハンナの話だって・・・」
フレデリック(恋愛小説家)「だって、僕を探して会いに来てしまうくらい──」
フレデリック(恋愛小説家)「プリンセスはジーク王子と一緒にいたいと思っていらっしゃるのでしょう?」
アルノ(宮廷画家)「やっぱり、プリンセスはジーク王子とラーブラブになりたいんだ!」
アルノ(宮廷画家)「なんて、知ってたけどね〜☆」
フレデリック(恋愛小説家)「プリンセス、」
フレデリック(恋愛小説家)「僕が言うのもおかしいですが・・・」
フレデリック(恋愛小説家)「ジーク王子は、愛に溢れたお方です」
カレン「え?」
フレデリック(恋愛小説家)「誰よりもこの国を愛していらっしゃいますし──」
フレデリック(恋愛小説家)「誰よりもプリンセスのことを想っていらっしゃいます」
カレン「どういうこと──?」
フレデリック(恋愛小説家)「この施設がどういう経緯で建てられたか、ご存知ないですか?」
カレン「ええ。孤児院の訪問リストに、ここはなかったし──」
カレン「存在自体、ついさっき知ったの」
フレデリック(恋愛小説家)「そうか──」
フレデリック(恋愛小説家)「ジーク王子は、ここをプリンセスには知られたくなかったのかもしれませんね」
カレン「・・・」
カレン「教えてくれない?」
カレン「この孤児院の、秘密・・・」
フレデリック(恋愛小説家)「・・・」
フレデリック(恋愛小説家)「僕が喋ったって、内緒ですよ?」
カレン「うん──」
〇荒廃した街
フレデリック「4年前、ブルートの街が戦争で焼かれたのはご存知ですか?」
カレン「ええ。ジークが武功をあげたっていう」
フレデリック「あの日、焼かれたブルートの街」
フレデリック「そこから、生存者を救い出してくれたのが、ジーク王子でした」
カレン「え?」
ジーク王子「生きている者はいないか!?」
フレデリック「火の中に飛び込んで、一軒一軒声をかけて・・・」
ジーク王子「くっ・・・」
ジーク王子「お前、動けるか!?」
フレデリック(恋愛小説家)「は、はい・・・」
ジーク王子「この手を取れ!」
フレデリック(恋愛小説家)「え、でも・・・」
ジーク王子「敵味方など関係ないだろ!!」
ジーク王子「死にたくなければ──」
ジーク王子「フッ」
フレデリック(恋愛小説家)「あ、あの・・・」
ジーク王子「ん?」
フレデリック(恋愛小説家)「ありがとう、ございます・・・」
ジーク王子「構わん。お前も俺と同じ、人間だろ?」
〇西洋風の部屋
フレデリック(恋愛小説家)「ジーク王子は、敵兵だった僕まで助けてくれました」
フレデリック(恋愛小説家)「そして、助けた人をこの孤児院に集めて、不自由なく暮らせるようにと──」
カレン「そうだったんだ・・・」
カレン「じゃあ、この孤児院は──」
フレデリック(恋愛小説家)「ブルートの街から生き延びた皆の居場所。 ジーク王子の支援で成り立っています」
フレデリック(恋愛小説家)「ジーク王子には、ここで育てた花を毎月献上することになっていて──」
フレデリック(恋愛小説家)「それで、今日、僕は王宮に行ったのですが・・・」
カレン(待って、つまり──)
カレン(ジークは変わってなんてなかったんだ!)
カレン(あの日の優しいジークのままだったんだ!)
ハンナ「ジーク王子は、どうして人を助けたことを黙っているのでしょう?」
ハンナ「国民の、姫様の誤解を招いてでも──」
ハンナ「“氷王子”でありたい理由があるのでしょうか・・・?」
フレデリック(恋愛小説家)「すみません、それは僕には分かりません・・・」
カレン「ううん。 教えてくれてありがとう、フレディ」
カレン(ここから先は、私が──)
カレン「ところで、そのシロツメクサ・・・」
フレデリック(恋愛小説家)「ああ、これですか?」
フレデリック(恋愛小説家)「ジーク王子に、直してほしいと頼まれたのですが──」
フレデリック(恋愛小説家)「僕、こういうの苦手なんですよね」
フレデリック(恋愛小説家)「それで、少しずつですが、こうして・・・」
ハンナ「ねえ、姫様・・・?」
カレン「うん。フレディ、それ貸して?」
〇西洋風の部屋
カレン「あみあみあみあみ・・・」
カレン「できた!」
「おお〜!」
カレン「これね・・・多分、私が作ったものなの」
フレデリック(恋愛小説家)「え!」
フレデリック(恋愛小説家)「そうだったんですか・・・」
カレン「これ・・・預かってもいい?」
フレデリック(恋愛小説家)「もちろんです」
フレデリック(恋愛小説家)「シロツメクサ・・・幸せを呼ぶ花」
フレデリック(恋愛小説家)「プリンセスから、ジーク王子に渡してください」
カレン「うん、必ず」
〇空
〇貴族の部屋
ハンナ「道、真っ暗でしたね・・・」
カレン「うん。ごめんね、遅くまで」
ハンナ「いえ、」
ハンナ「ジーク王子のこと、本当かどうかは分からないですが──」
ハンナ「知ることができて良かったですね!」
カレン「うん。ジークのこと、まだ分からないことだらけだけど──」
カレン「ハンナのお陰で、一歩進めたよ」
カレン「ありがとう、ハンナ!」
ハンナ「私が思ってたのとは、違いましたけど・・・」
カレン「ううん、それでも」
ハンナ「姫様・・・」
カレン「あーのさ、もう遅いから、また明日よろしくね!」
ハンナ「はい!」
ハンナ「おやすみなさい、姫様」
カレン「おやすみ」
カレン「ジーク・・・」
カレンは直した花冠を見つめた。
頭に浮かぶのは、幼い頃に交わした約束。
カレン(フレディの話が本当なら──)
カレン(どうして氷の仮面を被るの?)
カレン(ジークが優しい人だって分かれば、国民もあんなに怯えずに過ごせるのに──)
カレン(ジークのこと、ちゃんと知りたいよ・・・)
カレンは視界がぼやけていくのを感じながら、花冠を見つめ続ける。
カレン(ジークは心の奥で、何を考えてるの・・・?)
カレン「・・・やっぱり私、ジークとちゃんと話したい!」
カレンは花冠を胸に抱きしめた。
カレン(ジーク・・・)
カレン「よしっ!」
〇洋館の廊下
カレン「あ、あれ・・・?」
カレン(こんな時間なのに、ウェルナーもいない・・・)
カレン「ジーク、いないの?」
カレン(少し待ってみよう・・・)
カレンはシロツメクサの花冠を抱きしめ、壁にもたれかかった。
カレン「ジーク・・・」
〇洋館の廊下
カレン「ジーク・・・」
〇洋館の廊下
カレン「ん・・・」
カレン「はっ!」
カレン(うそ、私、ここで寝ちゃって・・・)
カレン「ブランケット・・・?」
カレン(ジークは!?)
カレンは廊下の先に、小さなジークの後ろ姿を見つけた。
その青いマントが、角を曲がってひるがえる。
カレン「ジーク!!」
〇山道
カレン「ジークは、確かこっちの方に・・・」
カレン(朝から王宮の裏の山を登るなんて──)
カレン(空もまだ半分暗いし)
カレン「一体何を考えて──」
カレン「ここは・・・!」
王子は氷王子ではなかった…んですね、たぶん。よかったです。それにしてもプリンセスは、毎回行動力がすごいですね。
やっぱり!シロツメクサはカレンのプレゼント!😆
焼けた街の子どもたちまでは予想しましたが、フレディさんが敵兵だったとはびっくりです。
それにしても、あそこまできて「ジークなんでしょ!」をやると思いませんでした。子どもたちの話はフレディエピソードだと思ったわけですね?ジーク本人とギャップがありすぎたのも一因だと思いますが、面白すぎましたw
ぬか喜びじゃないと信じながら次話を見たいと思います。行った先に何があるのかドキドキです。