入れ替わりパーソナリティ~好きなあの子が恋してる相手は僕に恋してる!?

れこん

エピソード5(脚本)

入れ替わりパーソナリティ~好きなあの子が恋してる相手は僕に恋してる!?

れこん

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〇狭い裏通り
  ここは来栖達の住む街にある『淀川(よどみかわ)通り』と呼ばれる場所
  今はまだ明るく、何も変わった事のない通りだが──

〇ネオン街
  ──それは表の顔で、夜になれば裏家業の人間がシノギ(商売)を行う通りへと変貌する。

〇狭い裏通り
  来栖武司はこんなお世辞にも治安が良くない場所に、薬局で購入した包帯を腕に巻いてやって来た。
来栖武司(くるす たけし)(くそが・・・。 まさかトン田の妹に復讐で襲われるとは思わんかった)
来栖武司(くるす たけし)(カッターで着られて腕がブチ痛い。 こんなんたまらんで・・・)
来栖武司(くるす たけし)(じゃけえ、いつも世話になっとる先生に見てもろうて早く治療しよ・・・)
来栖武司(くるす たけし)(確か、先生はこの辺でこっそり営業しとったの)

〇雑居ビルの一室
来栖武司(くるす たけし)「ここの部屋じゃ・・・」
来栖武司(くるす たけし)「──ったく、昼間なのに暗い場所じゃの。引っ越せばエエのに・・・」
来栖武司(くるす たけし)「おーい、伊良子先生居るか!? 来栖武司じゃ!すまんがちぃーとケガしたけぇ治療して貰いに来たで!」
???「わかった、ちょっと待っとれ」

〇店の事務室
伊良子先生(闇医者)「武司──お前はまた懲りもせずケガをして来たんか・・・エエ加減にせえ」
来栖武司(くるす たけし)「すまんの先生。説教は後でなんぼでも聞くけえ、まずは治療してくれや。ブチ痛いんじゃ」
  この人は伊良子正吉先生。
  俺と同じ広島に縁のある人じゃ。
  ほいじゃけぇ街でよく喧嘩しとる俺をとてもよく気にしてくれとる。
  それと、たまに喧嘩をしてケガした俺をタダで治療してくれて色々と面倒を観てくれとる。
来栖武司(くるす たけし)(先生は昔戦争に行って『名誉の負傷』とやらで不気味な姿をしとるが──)
来栖武司(くるす たけし)(腕は確かじゃ。それに優しいけえ、本当に感謝しとる)
伊良子先生(闇医者)「おうおう、こりゃ酷いケガじゃの。ぱっくり腕の肉が切られとるわ。けど此くらいならすぐに縫ってやるわい」
来栖武司(くるす たけし)(伊良子先生、余裕じゃのぉ。 流石元『軍医』じゃ!)
来栖武司(くるす たけし)「先生、麻酔はせんのんか?」
伊良子先生(闇医者)「バカタレ、ここは闇でやりよるんじゃ。ほいじゃけえそんなもんないわ。我慢せえ」
来栖武司(くるす たけし)「ひぃーー!!? 勘弁してくれや!」

〇血しぶき
  武司は痛みに耐えながら切られた傷口縫い、そしてようやく地獄のような治療の時間が終わった。

〇店の事務室
伊良子先生(闇医者)「終わったで。よぉ我慢した。 流石日本男児じゃ」
来栖武司(くるす たけし)「はぁはぁ・・・。痛すぎて治療中に死ぬかと思った」
伊良子先生(闇医者)「大袈裟な奴じゃ、このくらい野戦病院では普通でのぉ──」
来栖武司(くるす たけし)「──あーはいはい、先生が体験した戦争の話はまた今度聞くわい」
伊良子先生(闇医者)「ほうか・・・。 それで武司よ、お前今回は何したんじゃ? 腕を切られるなんて普通じゃないで?」
  武司は今日の出来事を話した。
  それとついでに、自分にはじめての彼女ができて舞い上がってる様子を伊良子に話した。

〇店の事務室
伊良子先生(闇医者)「・・・ほうか、」
伊良子先生(闇医者)「お前にも彼女ができたんか・・・。 けど、いつもの『幼馴染み(誠美)』じゃないんじゃのぉ・・・」
来栖武司(くるす たけし)(くっ・・・俺と誠美はそんなにくっつくのが普通に見えとったんか・・・)
伊良子先生(闇医者)「・・・はぁ」
伊良子先生(闇医者)「武司・・・幼馴染み意外でお前と付き合うとは──その彼女きっとまともな子じゃないのぉ」
来栖武司(くるす たけし)「どういう事じゃ先生!」
来栖武司(くるす たけし)「いくらか普段世話になっとる言うても、千陰の悪口は許さんで!」
伊良子先生(闇医者)「落ち着かんかい・・・、 真面目な話じゃ」
伊良子先生(闇医者)「ワシはお前の面倒をよーく見とる。 それで気が着いたんじゃ・・・」
伊良子先生(闇医者)「武司──お前は『こっち側』の人間に近すぎて『縁』が出来すぎとる」
来栖武司(くるす たけし)「はぁ・・・『こっち側』ってなんじゃ?」
伊良子先生(闇医者)「『こっち側』とは要するに『心の闇』を抱えた人間の事じゃ」
伊良子先生(闇医者)「そもそも、義務教育も終えとらんガキがこげな場所に居ること事態普通じゃないんじゃ」
伊良子先生(闇医者)「ほいじゃけえ武司・・・エエ機会じゃけぇ、ワシとは縁を切れ」
伊良子先生(闇医者)「普通じゃない人間は、同じ普通じゃない人間としか『縁』が持てん」
来栖武司(くるす たけし)(・・・ほうなんか? だとしたら千陰は普通じゃ無いんか?)
伊良子先生(闇医者)「武司・・・真人間になれ」

〇荒廃した市街地
  ワシらの世代は故郷が壊滅したけえ、そこで生きる為に毎日必死じゃった。
  それで、仕方なく人の道を踏み外すような事した・・・

〇店の事務室
伊良子先生(闇医者)「ほいじゃけえ今のワシみたいに表じゃ生きていけれん人間がよぉさんできた」
伊良子先生(闇医者)「じゃけど、この平和な時代にお前までワシらと同じような生き方をする必要は無いんじゃ・・・」
来栖武司(くるす たけし)「・・・」
伊良子先生(闇医者)「もう一度言うで・・・、 お前はこっち側に近すぎる。 今からでも間に会うけえ、普通に生きろや」
来栖武司(くるす たけし)「いやじゃ!」
伊良子先生(闇医者)「何? お前はワシの話を聞いとらんかったんか?」
来栖武司(くるす たけし)「うるさいんじゃい! 俺は闇が有ろうが彼女に惚れとるんじゃ! (そもそも千陰が不幸かどうかなんかわからん)」
来栖武司(くるす たけし)「それと、散々世話になっとる先生に感謝して義理を感じとるけえ、縁なんか切らんぞ!」
伊良子先生(闇医者)「バカタレが、どうなっても知らんぞ」
伊良子先生(闇医者)「お前はまだまだガキじゃけえわからないかもしれんが、こっち側(闇)の人間の行き着く先は後悔にまみれた『死』だけじゃぞ」
伊良子先生(闇医者)「言うとくが、関わった人間も影響を受けて同じ目に会うぞ」
来栖武司(くるす たけし)「ハッ! ジジイが何か言いよる。どうせ俺を脅すためにいいよるんじゃろ。ガキじゃけえってナメんな!」
来栖武司(くるす たけし)「それと心に闇を抱えとるじゃと? そんなもん俺がなんとかしちゃるわい!」
伊良子先生(闇医者)「・・・ほうか。 ほんなら──」

〇モヤモヤ
  オドレハ戦場デ大勢ノ兵士達ヲ助ケレナカッタ──ワシノ罪ヲ何トカシテクレルカ?
  本土ニ帰還シテ、身内ヲ一人残ラズ喪ッタ、ワシノ憎シミヲ癒シテクレルンカ?

〇店の事務室
伊良子先生(闇医者)「──心の闇は戦後数十年経過しても、中々ワシの中からは消えん」
来栖武司(くるす たけし)「・・・先生、すまん」
伊良子先生(闇医者)「・・・いや」
伊良子先生(闇医者)「──謝るのはワシほうじゃ、 お前がまだガキなのを忘れてついムキになってしもうた」
伊良子先生(闇医者)「武司──お前はとても強くて、内側に強い『ヒカリ』を宿しとる」
伊良子先生(闇医者)「けどの・・・、時にそのヒカリは心に闇を抱えとる者には眩しすぎるんじゃ」
伊良子先生(闇医者)「それで、もしかすれば相手が拒絶してお前を傷つける事があるかもしれん」
来栖武司(くるす たけし)「伊良子先生。忠告はわかった。 けど俺は・・・何とかうまくやるわい」
伊良子先生(闇医者)「ほうか、 ほんなら最後にあともう1つ忠告しとくで」
伊良子先生(闇医者)「お前とこの前喧嘩した高校生──確か戸田剛って言うた奴じゃが、」
伊良子先生(闇医者)「知り合いの接骨院に治療の為に通っとる。 理由は喧嘩をしたとき、お前が素人の癖に変に地面に叩きつけたけぇじゃ」
伊良子先生(闇医者)「ほんでそのあと打ち所が悪くて大怪我になったらしいで?」
来栖武司(くるす たけし)(そういう事じゃったんか! 道理で妹から復讐される訳じゃ・・・)
伊良子先生(闇医者)「のぉ武司、いつまでもバカな事やっとったいけん。いつか相手から恨まれて殺されるぞ」
来栖武司(くるす たけし)「わかった・・・。(ちっ・・・胸糞悪いわ)」
来栖武司(くるす たけし)「先生、世話になった。 じゃあの・・・」

〇田舎の学校

〇保健室
木下誠美(きのした なるみ)「うーん・・・武ちゃん。 ダメ、居なくならないで」
藤堂千陽(とうどう ちはる)「・・・うなされてる」
藤堂千陽(とうどう ちはる)「委員長・・・いや、木下さん。 やっぱり君には来栖武司は相応しくないよ・・・」
  続く。

次のエピソード:エピソード6

コメント

  • 伊良子先生〜!闇医者?!
    学園モノなのに、いつもスゴイブッコミに震えます!
    広島弁なのも、迫力倍増。
    戦争の経験を語る人には、活字や映像には無い確かな説得力がありますね。
    私も何年か前に満州のお話しを90代の方に聞いたことがありましたが、ニュースとかでは聞いたことのないような壮絶な地獄の話しでした。
    でも武司は今は脳内お花畑だから、聞けないですよね〜。

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