#1 フェイバリット・グラス(前編)(脚本)
〇リサイクルショップ
リサイクルショップ『BLACK ARROW』
〇リサイクルショップの中
天海愛「いらっしゃいませ。リサイクルショップ『ブラックアロー』にようこそ。もしかして、恋のお悩みですか?」
天海愛「あなたが手にしたその商品、きっとお役に立つと思いますよ」
〇白い校舎
兵藤アキラがサッカーゴールにシュートを決める。
兵藤アキラ「うしっ!」
チームメイト「アキラ! ナイス!」
兵藤アキラ「集中! もう一点取るぞ!」
〇教室
お昼休みの時間。小野瞳(おのひとみ)は窓際の席に座り、一人で弁当を食べていた。
窓の外、グラウンドにいるアキラをじっと見つめている。
小野瞳(・・・アキラ先輩、カッコいいな。先輩と仲良くなれたら、どんなに幸せだろう)
???「ひとみ~。何見てんの?」
小野瞳「い、今西さん・・・」
今西サラ「お腹に優しい、おかゆ作ってあげるよ」
小野瞳「えっ・・・」
そう言うとサラは、雑巾を絞って、瞳の弁当の中に汚水を入れた。
今西サラ「ほら、完成」
周りの女子「わぁ、おいしそ~。良かったね」
小野瞳「・・・・・・」
今西サラ「何か言えよ。つまんねぇな」
小野瞳「・・・やめて」
今西サラ「あ? 聞こえないんだけど」
サラは瞳の顔からメガネを取り上げた。
今西サラ「ほら、大声出してみなよ」
小野瞳「・・・かっ、返して!」
瞳は眼鏡を取り返そうとするが、サラは眼鏡を踏みつけて壊してしまう。
小野瞳「あっ・・・」
今西サラ「はい。お望み通り、返すよ」
小野瞳「・・・・・・」
今西サラ「『ありがとう』は?」
小野瞳「・・・ありがとう」
小野瞳(これが私の日常・・・。アキラ先輩と仲良くなるなんて、夢のまた夢・・・)
〇商店街
小野瞳(はぁ・・・。新しい眼鏡、買わなくちゃ)
瞳はふと気がつくと、知らない道を歩いていた。
小野瞳(あれ? こんな路地、あったっけ?)
〇リサイクルショップ
小野瞳「ブラックアロー・・・リサイクルショップか。初めて見たお店・・・」
〇リサイクルショップの中
小野瞳「すごい。変わった物がたくさん・・・」
小野瞳「眼鏡もあるんだ」
その時、背後から瞳の頭の横を、何かが飛んでいった。
小野瞳「きゃっ!」
ピーチ「キューッ!」
小野瞳「えっ? なに? 動物!?」
モモンガがとまった先は、ロングヘアが美しい女性店員・天海愛の肩の上だった。
天海愛「いらっしゃいませ。ごめんなさいね。この子が驚かせて。モモンガのピーチって言うんです」
天海愛「ほらピーチ、挨拶して」
ピーチ「キュー」
小野瞳「あっ・・・こんにちは」
天海愛「ふふっ。こんにちは」
小野瞳(店員さん、すごく綺麗な人・・・)
天海愛「それ、きっとお役に立つと思いますよ」
愛は、瞳が持つ眼鏡を指さした。
小野瞳「えっ? これが・・・?」
促されて、瞳は眼鏡をかけてみた。
小野瞳「すごい、度、ぴったりだ。よく見える・・・」
天海愛「すごく似合ってますよ」
小野瞳「なんだろう。この人に言われると、買わなきゃいけない気がする・・・」
小野瞳「じゃ・・・じゃあ、これ、いただきます」
〇リサイクルショップの中
天海愛「・・・今度のあの子は、上手くいくかなぁ」
ピーチ「さあね。人間ってバカだから、すぐ間違えるだろ? 期待すんなよ」
天海愛「もう。ピーチ、口悪いぞ」
〇女子トイレ
小野瞳「今西さん、やめて・・・」
今西サラ「あんたのためじゃん」
サラは瞳にバケツの水を浴びせる。
小野瞳「・・・!!」
今西サラ「ほら、ゴミが少しは綺麗になった。また遊ぼうね、瞳」
小野瞳「・・・・・・」
小野瞳(相変わらずの一日だった・・・)
〇白い校舎
小野瞳「あっ、アキラ先輩・・・」
兵藤アキラ「くそっ。もう一回・・・」
小野瞳「部活の後も、一人で自主練してるんだ。偉いな・・・」
小野瞳「・・・ん?」
アキラを見つめていると、眼鏡のレンズに何かが表示された。
そこにはハート型のワクがあり、中にはレモン味のスポーツドリンクが表示されている。
小野瞳「なにこれ? どういうこと?」
〇グラウンドの水飲み場
瞳は自販機でスポーツドリンクを買っていた。
小野瞳(さっき、なぜか眼鏡にこれが映ってた・・・)
そこへアキラがやってくる。
兵藤アキラ「あ~あ。レモン味、売り切れかぁ」
小野瞳「レモン味・・・」
兵藤アキラ「ん? どうかした?」
小野瞳「えっ、あの、いや・・・これ、良かったら」
兵藤アキラ「もしかして、差し入れくれるの?」
小野瞳「あっ・・・そ、そういうことでいいです」
兵藤アキラ「レモン味じゃん! 俺、好きなんだよ。売り切れてたからさ、サンキュー!」
小野瞳「よ・・・良かったです」
美味しそうにドリンクを飲むアキラを、瞳は不思議そうに見つめる。
小野瞳(・・・どういうこと?)
すると今度は、新作のアクション映画「ブラッド・アクト3」のポスターが、眼鏡に表示された。
小野瞳「ブラッド・アクト3・・・?」
兵藤アキラ「え!? 知ってるの!?」
小野瞳「えっ?」
兵藤アキラ「そのシリーズ、俺、超好きなんだよ! 良く知ってるね! マニアックなのに!」
小野瞳(なんか、話が盛り上がってる・・・!?)
〇映画館の入場口
小野瞳(まさか、先輩と映画を観に行くことになるなんて。信じられない展開・・・)
兵藤アキラ「お待たせ! あれ・・・私服、可愛いんだね。そういう感じの服、俺好きだわ」
小野瞳「あっ、ありがとうございます」
小野瞳(眼鏡に映った服を選んだだけなのに・・・)
小野瞳「やっぱり、間違いない。この眼鏡には、先輩の好きなものが映るんだ・・・!」
〇テーブル席
アキラはおいしそうにパスタを食べている。
兵藤アキラ「あ~。映画、最高だった。しかし、飯の趣味も合うよね! 俺ら」
小野瞳「ホ・・・ホントに、そうですね」
小野瞳「デザートは、ミルクレープが食べたいかな・・・」
兵藤アキラ「マジか! 俺もそう思ってた! スゲー。なんか、運命感じるなぁ」
小野瞳「運命・・・」
兵藤アキラ「じゃあさ、質問。犬派? 猫派?」
瞳がアキラを見ると、眼鏡には猫が映っていた。
小野瞳「ね、猫派です」
兵藤アキラ「おんなじ! イェーイ!」
ハイタッチを求めるアキラの手に、瞳は戸惑いながらも自身の手を合わせる。
小野瞳「・・・ふふっ」
兵藤アキラ「瞳ちゃん、俺と感性が似てるのかな? 一緒にいてすごく楽だよ。今度はさ、一緒に猫カフェでも行ってみない?」
小野瞳(先輩の方から誘ってくれるなんて・・・!)
〇市街地の交差点
小野瞳(あれから、毎日のように先輩と会ってる)
小野瞳(もしかしたら私たち、付き合っちゃうかも・・・なんて、調子に乗りすぎかな?)
小野瞳「・・・あっ」
今西サラ「・・・・・・」
瞳を一瞥すると、サラはさっさと歩いていった。
小野瞳「先輩と仲良くしてると、なぜか今西さんは私をいじめてこない・・・。最近、毎日が楽しい!」
〇白い校舎
兵藤アキラ「ヘイ! パス!」
小野瞳(あっ、アキラ先輩だ! 今日もカッコいい!)
見とれていると、アキラの好きなものが眼鏡に表示された。
小野瞳「え・・・? 嘘・・・でしょ?」
小野瞳「どうして!? アキラ先輩の好きな人が、どうして今西さんなの!?」
この先どうなるのか続きが気になる展開で面白いです