10話:威流楓のくだらない目的(脚本)
〇生徒会室
岸野 俊介(うぉぉぉぉぉぉーーー!!!)
岸野 俊介(全ての神よ!!!女神よ!!! 俺に!!俺に!!奇跡ををををを!!!)
〇教室
─遡ること・朝HR─
江頭 仁「皆に伝え忘れていたんだが」
江頭 仁「飲食の出店は各学年1枠だ!!」
岸野 俊介「おいおい!まじかよ!?」
栗木田 真衣「せっかくいい模擬店が決まったのに!」
江頭 仁「今日の放課後、生徒会室で厳正なくじ引きがあるから、忘れずに参加するようにな!」
江頭 仁「くじを引くのは誰でもいいぞ!」
江頭 仁「当たりを引いたらヒーローだ!!」
威流 緋雨「俺は運がないから。 岸野、お前に任せる」
岸野 俊介「え、俺!?」
岸野 俊介「愛田さんは!?」
愛田 星乃「私もあんまり運は良くないから」
愛田 星乃(当たりなんて引けるわけないじゃない・・・)
愛田 星乃「岸野くんなら、きっと当たりを引けるわ」
威流 緋雨「がんばれ、岸野・・・」
岸野 俊介「え~!? クラス中の希望が重いぃぃぃーー!」
栗木田 真衣「無理しないできっし~」
栗木田 真衣「私がくじ引こうか!?」
栗木田 真衣「みんながいいって言ってくれたらだけど!」
岸野 俊介「栗ちゃんは駄目だ!!」
岸野 俊介「俺が!!実行委員として!! 全ての運を使って!!」
岸野 俊介「絶対に当たりを引いてくるから!!」
〇生徒会室
─そして・決戦の時─
文化祭・副実行委員「それでは、1年A組、岸野俊介君。 くじを引いてください」
岸野 俊介(うぉぉぉぉぉぉーーー!!! 全ての神よ!!!女神よ!!! 俺に!!俺に!!奇跡ををををを!!!)
文化祭・副実行委員「実行委員長。くじの箱をお願いします」
威流 楓「はい、どうぞ」
岸野 俊介(あの穴はブラックホール!! そして箱の中は宇宙!!)
岸野 俊介(勇者・俊介はダークマターの力を使って!! 異次元から当たりを引く!! 引く!!引く!!引くーーーーー!!!)
岸野 俊介(栗ちゃんの為に!!栗ちゃんの為に!!! うぉぉぉぉぉぉぉーーーー!!! あ・た・り・を引くーーーー!!!)
岸野 俊介(引いたぜ。 俺はやりきった。 後は見るだけ、見るだけ・・だ・・)
岸野 俊介「おおおおおお!!!? これは当たりっぽい!!?」
威流 楓「おー!おめでとうー! 飲食出店は1年A組に決定~!」
岸野 俊介「いや、いやっ、やったぜーーー!!!!」
岸野 俊介「栗ちゃーーーーん!!!!」
〇教室
─翌日・朝HR─
岸野 俊介「みんなーーーー!!! 飲食の出店枠とったぜーーー!!!!」
栗木田 真衣「きっし~!! すっごーーーい!!!」
威流 緋雨「よくやった」
栗木田 真衣「『cafe♡新たなるぶどうの味覚』これで出店できるねー!! 楽しみーーー!!!」
岸野 俊介「俺にかかればこんなもんだぜ!」
岸野 俊介「皆で文化祭の準備進めていくぞー!!!」
江頭 仁「それじゃぁ授業を始めるぞ!」
岸野 俊介「そういえばさ、お前の兄さん! 文化祭実行委員長だったぞ」
岸野 俊介「どこにでも顔が広くてすごいのな!」
威流 緋雨(やはりそうか。それなら・・・)
威流 緋雨(岸野も頑張ってくれたんだ。 俺もこいつらの為に・・・)
〇おしゃれなリビングダイニング
威流 楓「夕暮れ時は~♪ ふふんふ~ん♪」
威流 緋雨「あんたに話がある。 今いいか?」
威流 楓「おやおや。これはお珍しい」
威流 楓「どうしたの?」
威流 緋雨「さ、3人目のことなんだが・・・」
威流 緋雨「・・・」
威流 楓「だ~め♪ いくら可愛い弟の頼みでも」
威流 楓「ちゃんと言わなきゃ。何も言えないよ」
威流 緋雨「その、もし、俺が・・・ 3人目を見逃してくれと言ったら?」
威流 楓「言ったら?じゃなくて、」
威流 楓「見逃したい、でしょ?」
威流 楓「なに?やる気なくなったの?」
威流 緋雨「そ、そうじゃない!」
威流 緋雨「家族は生き返らせたいと思っている! 必ず生き返らせる!!」
威流 緋雨「だけど、」
威流 緋雨「俺にはやっぱり!! あいつを犠牲にできない!!」
威流 緋雨「あいつの事を好きなやつだっているんだ!!」
威流 楓「くっくっく・・・」
威流 楓「あっはっはっはっは!!!!」
威流 楓「ご~めん!ごめん~! ちょっとからかいすぎちゃった~!」
威流 楓「おれは別にいいけど?」
威流 緋雨「いいけど、って・・・ 本当にそれでいいのか?」
威流 緋雨「あんたにだって目的が」
威流 楓「な~に~♡ おれのこと心配してくれるの~?」
威流 緋雨「ち、違う!目的があるのに! いつもちゃんと言わないから!!」
威流 楓「おれの目的?」
威流 楓「真面目だね~」
威流 楓「君のに比べたら。 ほんとくだらないんだよ?」
〇黒
〇綺麗な港町
─およそ300年前─
シャーロット「ねぇ、見て、マッテオ。 いつ来ても美しい景色ね」
シャーロット「あなたの不治の病が良くなって、他にもたくさんの美しいものを、見に行けたらいいんだけど・・・」
マッテオ「景色よりも美しいのは、シャーロットの方さ」
マッテオ「君はいつだって綺麗だよ」
シャーロット「もう!ほんとに! ヴェネツィアの人は調子がいいんだから!」
マッテオ「じゃぁ、これ開けてみて」
シャーロット「わ~!なにかしら?」
マッテオ「それを見れば、俺の言うことも信じられるよ」
シャーロット「嘘でしょ!?これって結婚指輪!?」
マッテオ「シャーロット、俺と結婚しよう」
シャーロット「えぇ!!もちろんよ!!」
〇城の救護室
ーそれから10年が経ちー
団員「マッテオ様。 定期報告をお願いします」
キリスト再臨の1人目として目醒めた俺は、教会から言われるがままに、2人目の候補者を報告していた。
マッテオ「カステッロ地区の果物屋・グレタ」
団員「かしこまりました」
団員「先日挙げられた候補者は、お目醒めになられていません」
団員「それでは失礼いたします」
挙げても、挙げても、2人目は現れない。
擦り減っていく心の拠り所はいつだって・・・
マッテオ「シャーロット!? 今日も会えて嬉しいよ!!」
シャーロット「今日は果物を持ってきたわ」
マッテオ「ありがとう! 今日も屋上の景色を見に行かないか?」
シャーロット「いいわよ」
シャーロット「それにしても、マッテオ。 あなた本当に見た目が変わらないのね」
シャーロット「私なんて、シミとか。 最近はシワだって・・・見えるでしょ?」
マッテオ「そんな事! 全然気にすることじゃない! いつだって君はとても美しいよ!」
〇中庭
─それからさらに10年が経ち─
団員「マッテオ様。 定期報告に伺いました」
マッテオ「銀行家・エドアルド。 サン・マルコ地区だ」
団員「かしこまりました」
マッテオ「待って」
団員「いかが致しましたか?」
マッテオ「この前、俺が挙げた2人目は?」
団員「お目醒めになりませんでした」
マッテオ「・・・」
団員「失礼いたします」
神の骨格をもつ2人目は意外と多く居た。
それなのに誰も目醒めない。
こんなにも候補者が多くいるのに、何故2人目は現れないのか。
守りたい者の為に犠牲を積み重ねる。
それは罪なのだろう。
マッテオ(俺が、こんな事を、続けられるのは・・・)
マッテオ(君のため)
マッテオ(あぁ、シャーロット、どうして君も、)
マッテオ(2人目なんだ・・・)