エピソード40(脚本)
〇洋館の一室
ジョマ「酒場に解決祝いに行きますか! ロク」
そう言いながらジョマは、僕の側に歩み寄ってきて、腕を絡ませてきた。胸が当たっている。
ロク「い、いやまだ勤務中だし!」
レストルア「そうですよ! 勤務中です! ジョマ、離れなさい!」
僕の事を援護射撃してくれるレストルア。
しかし、なぜかそのまま、僕を挟むようにジョマの反対側に回り、腕を絡ませてきた。言葉と行動が合っていないような。
そして、つつましいが確かに存在する胸が当たっている。
ジョマ「言葉と行動が合ってないんですよ! この発情犬!」
ジョマの言葉に、レストルアは一瞬たじろぎつつ、応戦していく。
レストルア「はっ発情なんてしてません! ジョマの方こそ、発情しているのでは?!」
ジョマ「私は経験豊富なので、この程度いつもの事ですぅ」
レストルア「ぐっ・・・・・・ハレンチエルフ!」
ジョマ「エルフはたいがいハレンチなんですぅ」
渾身の悪口のつもりだったらしいレストルア。それに対して普通に返すジョマ。
というかなんという偏見だろうか。しかもそれを、エルフが言うのか。
言葉を失っているレストルアに勝利の微笑みを浮かべて、ジョマは歩き始める。
それに引っ張られる形で僕も歩き始めた。さらにレストルアも僕に腕を絡めているから、一緒に歩き出してしまう。
ジョマ「解決祝いです、解決祝いぃ」
上機嫌のジョマが、僕とレストルアを引きずる様に進んでいる。
レストルア「だから、勤務中ですよ!」
ロク「そうだよ!」
僕とレストルアは、二人で踏ん張るけど、全く歯が立たず引っ張られていく。
レストルア「こうなったら、私も行きます、ジョマとロクを二人っきりにしたくない」
レストルアが決意する様に言葉を発する。ただ最後の方だけ、ごにょごにょと言っていて聞こえなかった。
ジョマ「あぁん、発情犬も来るんですか」
レストルア「監督です! 難事件を解決したので、少しくらいは良いとしても、行き過ぎない様に私が見張ります!」
レストルアの言葉に、ジョマは一瞬だけ照れくさそうにして口を開く。
ジョマ「まぁ、レストも少しは役に立ちましたし、いいですよ」
すぐに元の表情に戻ったジョマが、特殊捜査室のドアを開けた。
〇怪しげな酒場
結局、少しだけにならず、夜になってしまった。
ジョマ「うぃぃぃ」
ジョマはジョッキを握り締めながら、机に突っ伏して、謎の声をあげている。
レストルア「はぁ」
レストルアは手のひらをおでこに当てて、ため息をついた。
そうは言っても、反対側の手には、しっかりお酒のグラスが握られている。
レストルア「結局こうなってしまいました」
レストルアの言葉に、僕は曖昧に返事をしつつ、苦笑を浮かべた。まぁこういうのもたまには悪くないのでは。
そんな事を考えている内に、レストルアもいつの間にか、机に突っ伏していた。
ロク「・・・・・・マジか」
二人も運ばないといけないのか。
ロク「はぁ」
僕は現実逃避する様に、思考の中に身をゆだねる。ハルソンのあの言葉についてだ。