エピソード39(脚本)
〇洋館の一室
レストルア「まさか、日の光であんな事ができるとは思いませんでした、さすがロクですね」
ハルソンに犯人と告げた日から翌日の特殊捜査室。レストルアが少し顔を赤らめながらそう言った。
ちょっと上目遣い気味で見つめられると、ドキリとしてしまう。僕はそれを悟られない様に、口を開く。
ロク「たまたまだよ、夏になると、肌が赤くなるでしょ? それがヒントになってさ」
レストルア「なるほど、熱があるから、肌が赤くなるという事ですね、考えてみれば確かにです」
レストルアは感心する様に明るい声を出す。それと対照的に、ジョマは不機嫌さが混じった声を出した。
ジョマ「そうですね・・・・・・発情犬め」
相変わらず、レストルアがいるとジョマは不機嫌になる。
腕を組んで、机に体重をかける様に立って、白けた視線をこちらに向けていた。
レストルア「それにしても、今回の件は、厳重に秘密にしなければいけませんね」
先ほどまでの浮ついた表情を引っ込めて、真剣な表情になるレストルア。僕はそれに対して、頷いて返した。
今回の事で、魔力紋を残さずに人を殺せる方法が確立されてしまった。万が一この方法を知った誰かが、使用してしまったら。
今回はハルソンが強化魔法のスペシャリストだったから、限りなくハルソンにしかできない犯行と言えた。
でも、人を殺すために強化魔法を特訓して、日の光を凶器に変えられるようになってしまった場合、犯人特定が難しい。
それこそ、何人もの人がそれをできる様になってしまったら、恐ろしい事になりかねない。
ジョマ「そんなに、危ないですか」
少し悩んだ感じの声でジョマが問いかけてくる。
ロク「・・・・・・方法が分かっても実行しない人の方が多数だと思うよ・・・・・・でも」
魔法という凶器を誰もが持っているこの世界で、そこらじゅうで魔法による殺人が起こっていない。
だから、ほとんどの人は良心がきちんと備わっている。でも少数はきっと違う。
誰にもバレずに、ハウンドに追われる事もない。邪魔者を消しても、これまで通りの生活ができる。
そう知った時、使用する人はいる。
ジョマは、僕の言葉の行間を読んでくれたのか「そう・・・・・・ですか」と呟いた。
レストルア「今回の事は、私の判断で秘匿事項として、詳細をふせて解決したとだけ、上に報告しました」
レストルアが僕とジョマに、順番に視線を送ってから、続ける。
レストルア「詳細を知っているのは、私たちと、犯人のハルソンのみです・・・・・・報告書は特殊捜査室で厳重に管理をしてください、」
レストルア「ジョマ、いいですね?」
ジョマ「・・・・・・わかりました」
さすがに反発する事なく、ジョマは頷いて見せた。これがたぶん一番いい方法だろうな。しばらく三人の間に沈黙が流れる。
ジョマ「さて!」
突然、弾ける様にジョマの明るい声が響いた。