ガラスの目玉の涙

ウミウサギ。

エピソード1 心の傷(脚本)

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  それは、深い、深い傷。
  彼女にとっては、思い出したくもない過去として。
  彼にとっては、償いきれない罪として。
  その出来事は、二人にとっての深い傷となった。

〇教室の教壇
  とある小学校の、三年生の教室。
  そこには、学び舎に相応しくない光景が広がっている。
クラスメイトA「あれぇ?今日は保健室じゃなくていいのぉ?」
尾道 綾「う、うん・・・・・・ 今日は体調がいいから・・・・・・」
尾道 綾(・・・・・・あれ? 私のお道具箱、からっぽ・・・・・・)
尾道 綾「ね、ねぇ、私の教科書とノート、どこにあるか知らない・・・・・・?」
クラスメイトA「はぁ?そんなの必要ないでしょ?」
尾道 綾「え・・・・・・?」
クラスメイトA「だって尾道さん、学校来なくても100点取っちゃうんだもん」
クラスメイトB「マジむかつくよなー、来る意味無くね?」
尾道 綾「で、でも、教科書とノートがなきゃ授業が・・・・・・」
クラスメイトA「だーかーらー、尾道さんにはそんなの必要ないわよねって話をしてんの」
クラスメイトA「ま、どうしても返してほしかったらお願いしてみたらぁ?」
  そう言ってクラスメイトは、綾の教科書とノートを自分の机の中から取り出した。
尾道 綾(私の・・・・・・!!)
尾道 綾「か、返して・・・・・・!!」
クラスメイトB「お願いします返してください、だろ?」
クラスメイトA「成績いいのに正しい日本語使えないんだぁ、ダッサ」
  他の児童たちは、綾のことをニヤニヤ見ていたり、数人で集まって何かをひそひそ話していた。
尾道 綾「お、お願いします、返してください・・・・・・!!」
クラスメイトA「何を?」
尾道 綾「そ、それ、その教科書とノートっ、大事なものなんです、それがなきゃお勉強できないんです!!」
クラスメイトA「お勉強なんて家でもできるでしょ、尾道さんの場合」
クラスメイトA「だから学校来なくても成績がいいんでしょ?ほんと腹立つ」
尾道 綾「で、でも・・・・・・っ!!」
クラスメイトB「うっせーなぁ、二度と学校来るんじゃねぇよブス!!」
  男子児童は女子児童からノートをひったくると、綾の目の前で破いた。
クラスメイトA「あっ、それおもしろそー♪」
  続いて女子児童も綾の教科書をビリビリ破く。
尾道 綾「あ・・・・・・あ・・・・・・」
  教科書とノートが、だんだん使い物にならなくなっていく。
  綾はそれを泣きながら黙って見ているしかなかった。
尾道 綾(何も言えない・・・・・・ 何か言ったら、もっとひどいことをされる・・・・・・)
尾道 綾(助けて・・・・・・ 誰か助けて・・・・・・!!)
  その時。
  綾は圭太と目が合う。
  仙道 圭太。
  幼稚園の頃からの、綾にとっては大事な大事な幼なじみ。
  大好きな、男の子。
尾道 綾(けいくん・・・・・・)
尾道 綾(けいくん、助けて・・・・・・ 二人を止めて、お願い・・・・・・)
  だが。
  圭太は何も言わず、目を逸らした。
尾道 綾「そんな・・・・・・」
尾道 綾(けいくん・・・・・・!!)
  すっかりバラバラになってしまった教科書とノート。
  それはただの紙切れの残骸でしかなかった。
  窓から吹き込んでくる風に飛ばされないよう、綾はそれらを必死にかき集めるしかなかった。
  イジメの主犯格である二人は、それを見てゲラゲラと笑っていた────。

次のエピソード:エピソード2 広がる綻び

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