第三話 『最初で最後のデートの始まり』(脚本)
〇大きな木のある校舎
〇教室
灰島 建志「よう レズビアン」
レイン「なっ・・・!?」
レイン「あ”あ”!?」
灰島 建志「な、なんだよ 自分で言いふらしたんだろ アウティングとやらには当たらないよな?」
灰島 建志「だから おはよう レズビアンのレイン」
女子生徒「クスクス」
男子生徒「クックッ」
レイン「はあ~? じゃあ何」
レイン「アンタは毎朝イチイチ友達に、」
レイン「「おはよう、男子」「おはよう、女子」 「おはよう、ヘテロ」「おはよう、ゲイ」」
レイン「とか呼びかけてる訳? それって──すっごいバカじゃん」
灰島 建志「くっ・・・」
灰島 建志「別に・・・俺は差別したい訳じゃないし?」
灰島 建志「ほら レインも派手なメイクして レインボーパレードとか歩くんだろ?」
灰島 建志「その時は教えてくれよ クラスみんなで応援させてもらうわ」
レイン「──」
レイン「なんだ灰島 勉強してくれてんじゃん」
灰島 建志「はあ? 何がだよ」
レイン「アウティングもレインボーパレードも 意識しないと覚えられない言葉でしょ この国ではまだまだ さ」
レイン「LGBTQ──つまりクィアのこと ちゃんと勉強してくれたのね 私のために」
レイン「本当に好きなんだね 私のこと ごめんね~? 灰島の気持ちに応えてあげられなくって」
灰島 建志「ちょ、調子に・・・」
レイン「それから レディーの皆様方も どうか私のことは意識なさらず」
レイン「私だって 高校生のお子様なんか 恋愛対象としては見ていませんから」
〇並木道
〇教室
レイン「この人が私の彼女 どう? 素敵でしょ?」
レイン(お姉さん ごめんなさい)
レイン「今はまだ子ども扱いだけどね ゆっくり歩いていきましょうって」
女子生徒「そんな写真 どうとでも・・・」
灰島 建志「あ あの時のクソ女・・・!?」
女子生徒「え 何 灰島知ってるの? じゃあ 本当にこの人が彼女・・・?」
レイン「フフン」
レイン(その時 誰もお姉さんのことを 綺麗だって言ってくれないことが 悔しかったけど)
女子生徒「・・・」
レイン(ひそかに 羨ましそうな顔をしてる 女の子がいたこと 私は見逃さなかった)
レイン(今はそれだけでいい 私の心には 少し余裕が宿っている)
〇水色(ライト)
レイン「ぜーんぶ お姉さんのお陰ですよ」
〇駅のホーム
月居ゆず葉(き、来てしまった・・・ 年下の女の子との、デート)
月居ゆず葉(うう・・・ ズルズルと あの子のペースに呑まれてる気がする)
月居ゆず葉(ダメよ 心を強く持つの、私 自分の秘密は、誰にも打ち明けない)
月居ゆず葉(女の子が好き、っていう──)
月居ゆず葉(それから! 今日こそは、 デート終わりに流されない)
月居ゆず葉(これで恋人ごっこは終わりねって これからは友達でいましょうって)
月居ゆず葉(そう、伝えてあげなきゃ・・・ きっと、それがあの子のためなんだ)
〇水族館前
ああ、いたいた ──って
早過ぎじゃない? まだ30分前なのに
月居ゆず葉(一体、いつからいたんだろう あーあ 緊張しちゃって・・・)
月居ゆず葉(こんな私でも── 期待、してくれてるんだよね)
月居ゆず葉「お待たせー 早いんだね」
レイン「──」
レイン「お姉さんっ!」
レイン「良かったあー 来てくれないかと思っちゃいましたよ」
月居ゆず葉「バカね 大人は約束を破りません」
レイン「えへへー」
月居ゆず葉「いーい? 本当に、 今日が最初で最後のデートだからね」
月居ゆず葉「私はね──流されやすいのよ!」
レイン「そんな自信満々に!?」
月居ゆず葉「だから この前みたいに ノリで引っかけたりしたりしないでね」
レイン「あ、あの・・・やっぱり お姉さんはイヤでしたか?」
レイン「こんな子どもとデートなんて」
月居ゆず葉「うん? ま、来たからには楽しむわよ 水族館なんて久しぶりだし」
月居ゆず葉「こんな愛らしい女の子とデートなんて 光栄だしね」
レイン「わはあー」
レイン「安心してください 今日は純粋にデートを楽しみます!」
レイン「そしたら、お姉さんも少しは 私のことを好きになって、 またデートしたくなるかもです」
月居ゆず葉「呆れた どこから来るのよその自信は」
レイン「えへへー」
月居ゆず葉(──)
〇森の中
──違う
〇水族館前
きっとこの子は必死なんだ
──もう引き下がれないんだ
月居ゆず葉(きっと今 引き下がったら 心が折れてしまう)
〇森の中
あの日の 私みたいに──
〇水族館前
月居ゆず葉(ただ少し人と違うというだけで、 どうしてこんなに 気を張り続けなければいけないんだろう)
レイン「お姉さん? どうしました?」
月居ゆず葉「ううん こっちの話」
月居ゆず葉「さ 行きましょう」
レイン「はいっ」
レイン「──」
〇マンション前の大通り
私はもう 私だけの思い込みで
世界を閉ざしたりしないよ 先輩
〇大水槽の前
レイン「わあー、お魚さんだあー」
月居ゆず葉「フフッ 水族館、好きなのね」
レイン「あ、はい どうせなら、 好きなところを思い出の場所にしたくて」
月居ゆず葉「かわいらしいお洋服、似合ってるわよ あなたの性格とのギャップかしら?」
レイン「あ・・・えへへ・・・ お姉さんも、お洒落で綺麗です」
月居ゆず葉「どういたしまして」
レイン(ううー やっぱり大人 私、軽くあしらわれてる・・・?)
レイン(それでもいいの この幸せが どうかいつまでも続きますように)
月居ゆず葉(余裕ぶってはみたけれど・・・)
月居ゆず葉(こ、これでいいのかしら 私、デートなんて初めてなのだけど!?)
〇水中
〇水中トンネル
「ふわあー・・・!!」
〇店の入口
〇カウンター席
月居ゆず葉「気がつけば夢中になってたわ・・・ 水族館って、面白いんだね」
レイン「わ、私も、お魚さんに目移りして デートであることを忘れていました・・・」
月居ゆず葉「フフ・・・」
レイン「エヘヘ・・・」
「アハハッ──」
レイン(ああ 楽しいなぁ 幸せだなぁ)
レイン(この幸せが続くように 絶対に お姉さんを振り向かせてみせる)
レイン(今日が──)
月居ゆず葉(こうして過ごしていると 本当に子どもで 素直な良い人なのよね)
月居ゆず葉(ごめんね 今日 私は あなたをちゃんとフッてあげなくちゃ)
月居ゆず葉(今日が──)
〇沖合
今日が 終わる前に──
主人公がちゃんと真剣にレインちゃんに向き合って居るのがとても好印象です👍