終活魔王のエンディングノート

大河内 りさ

P8・スキル〈ラッキースケベ〉発動!?(脚本)

終活魔王のエンディングノート

大河内 りさ

今すぐ読む

終活魔王のエンディングノート
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇貴族の応接間
ヴィエリゼ「そんなことが・・・」
ミア「そんな『勇者』だから、 称賛もあれば非難もあって・・・」
ミア「同じような考えの人じゃないと、 パーティを組んでも長続きしないのよね」
ミア「それが分かっているから、ギルドも ルカードにはあまり口出ししないの」
ヴィエリゼ「ミアさんは、 どうしてルカードと組んでるの?」
ミア「実はね──私の旦那はハーフエルフなの」
ヴィエリゼ「えっ」
ミア「エルフの血が入ってるくせに 魔力はほとんどないんだけどね」
ミア「人間と魔族の間に生まれたというだけで、 偏見の目で見られることは少なくないわ」
ミア「私は、それを無くせたらいいなって思ってる」
ヴィエリゼ「キオルさんは?」
ミア「・・・キオルは、もう少し複雑ね」
ヴィエリゼ「そっか・・・」
ヴィエリゼ「私、何も知らなかった」
ヴィエリゼ「そんな事件があったことも、ルカードが手を尽くしてくれていたことも・・・」
ヴィエリゼ「それなのに、彼の人間界での立場も考えずに、自分の理想だけ押し付けて・・・」
ヴィエリゼ「ダメだなぁ・・・」
ミア「新米魔王なんだもの、これからよ!」
ヴィエリゼ「そう・・・かな?」
ヴィエリゼ「──ちょっと待って。 今、新米魔王って・・・」
ミア「現魔王様でしょ、ヴィエリゼちゃん?」
ヴィエリゼ「何で知ってるの!?」
ミア「ごめんね、旦那から聞いちゃったの」
ミア「それに、見ていれば分かるわ」
ミア「ルカードとキオルは 気が付いてないみたいだけど・・・」
ヴィエリゼ「お願い、このことは内緒にして!!」
ヴィエリゼ「私が魔王だったからって、ルカードが態度を変えるとは思えないけど、でも──」
ヴィエリゼ「私が魔王だって、彼には知られたくない」
ミア「そうねぇ」
ミア「いつか、貴方の口からちゃんとルカードに説明してくれるって約束してくれたら、内緒にしてあげる」
ヴィエリゼ「説明・・・?」
ミア「ずっと秘密にしておくことなんて できないと思うの」
ミア「だから、貴方の思う時に、貴方の口から、ルカードに説明してあげて」
ヴィエリゼ「・・・分かった」
ヴィエリゼ「ありがとう、ミアさん」
ミア「そんなふうに真っ直ぐお礼を言われたら照れちゃうわ」

〇露天風呂
ルカード「やたら立派なお風呂に 案内されてしまった・・・」
ルカード「酒も入ってるし、 あまり長湯はしないで──」
???「キャーッ! エッチー!」
ルカード「えっ!?」
ルカード「──何でスライムがお湯の中に!?」
ルカード「大丈夫!? 溶けてない!?」
スライム「触ラないでッ!!」
ルカード「ええっ!?」
  ガラリ──
ヴィエリゼ「ローレットとダーリナ、何してるのかな」
ヴィエリゼ「様子を見に行ったミアまで戻って来ないし、つまんないの」
ヴィエリゼ「ん?」
スライム「イヤー! ヘンタイー!!」
  べちゃっ。
ヴィエリゼ「ぶえっ!?」
ヴィエリゼ「一体どうし・・・」
ヴィエリゼ「わっ!?」
  スライムの残滓に足を取られて、身体が傾ぐ。
ヴィエリゼ「きゃあっ!!」
ルカード「危ないっ!!」
「わああああっ!!」
  ザッパーン!
ルカード「いてて・・・」
ルカード「大丈夫、ヴィエリゼ?」
ヴィエリゼ「うん、大丈──」
ヴィエリゼ「キャーッ!!」
ヴィエリゼ「どっ、どうしてルカードがここにいるの!?」
ルカード「ガスタインさんに案内されて・・・」
ヴィエリゼ「ここ女湯!」
ルカード「えっ!?」
ルカード「じゃあ、さっきのスライム女の子だったの!?」
ルカード「うわ、どうしよう!?」
グエル「ヴィエリゼ様、いらっしゃいますか?」
ヴィエリゼ「グエル!?」
グエル「失礼いたします」
グエル「今ほどスライムが、 浴場に変質者が出たと──」
グエル「・・・・・・・・・」
グエル「・・・失礼いたしました」
「ちょっと待ってーっ!!」

〇貴族の部屋
「・・・・・・・・・」
(気まずい・・・)
ヴィエリゼ「あのっ・・・」
ルカード「ごめんっ!!」
ヴィエリゼ「えっ?」
ルカード「女湯だって知らなくて・・・」
ルカード「その、ええと、だから・・・」
ヴィエリゼ「・・・・・・」
ヴィエリゼ「ぷっ」
ルカード「何で笑うの!?」
ヴィエリゼ「だってルカード、必死すぎ」
ルカード「そりゃ必死にもなるよ」
ルカード「変態だと思われて嫌われたくないし」
ヴィエリゼ「べっ、別に・・・ 嫌ったりなんてしないよ」
ヴィエリゼ「それに、再会したのも温泉だったしね」
ルカード「そうだった・・・」
ルカード「ほんと、ごめん!」
ヴィエリゼ「もういいって」
ヴィエリゼ「さっきは助けてくれてありがとう」
ルカード「・・・どういたしまして」
ルカード「で、いいのかな?」
ヴィエリゼ「ふふっ」
ヴィエリゼ「・・・・・・」
ヴィエリゼ「本当に、ありがとね」
ヴィエリゼ「今までのことも・・・」
ヴィエリゼ「お茶でも飲もっか!」
ヴィエリゼ「グエルに頼むのは気まずいから、 私が淹れてくるね!」
ヴィエリゼ「ちょっと待ってて!」
ルカード「あっ・・・」
ルカード「・・・行っちゃった」
ルカード「それにしても、広い部屋だなぁ」
ルカード「女の子の部屋、初めて入ったかも・・・」
ルカード「・・・・・・・・・」
ルカード「ヴィエリゼの身体、 柔らかかったなぁ・・・」
ルカード「いやいやいや、何を考えてるんだ俺は!」
ルカード「・・・ん?」
ルカード「何の本だろう?」
ルカード「・・・『エンディングノート』!?」
  どうしてこんな物を──と、思わずそのページを開いてしまう。
ルカード「『死ぬまでにしたい100のこと』?」
ルカード「『スライムでドッジボール』 『スライムでボウリング』 『スライムでラグビー』」
ルカード「斜線が引いてあるってことは、 もう実行済みなのか・・・?」
ルカード「『スライムでバスケ』 『スライムでバレー』」
ルカード「ははっ、どうしてスライムで 球技ばっかりやりたがるんだろう」
ルカード「『タコ焼きパーティー』 『わんこそばにチャレンジしたい』」
ルカード「あ、この辺から内容が変わって──」
ルカード「えっ・・・」
ルカード「『勇者とお出掛けしたい』 『勇者と手を繋ぎたい』」
ルカード「これって・・・」
ヴィエリゼ「お待たせ~! お茶持ってきた──」
ルカード「あっ」
ヴィエリゼ「わーーーーーーっ!?」
  茶器を半ば放り投げるようにテーブルに置いて、ルカードの手からエンディングノートを取り上げた。
ヴィエリゼ「どっ・・・どこまで読んだ!?」
ルカード「ごめん」
ルカード「『勇者のTwitterアカウントが知りたい』 ・・・くらいまで」
ヴィエリゼ「これは、そのっ・・・」
ルカード「あのさ」
ルカード「その『勇者』って・・・ もしかして、俺のこと?」
ヴィエリゼ「うっ・・・」
ヴィエリゼ「~~~~ッ」
  うまい言い逃れが思い付かず、こくん、と小さく頷いた。
  すると、ルカードがふいに右手をこちらに差し出してきた。
  思わずその手に自分の右手を重ねると、ルカードはにっこりと微笑んだ。
ルカード「これで『勇者と手を繋ぎたい』は クリアだね!」
ヴィエリゼ「ルカード・・・」
ヴィエリゼ「これじゃ手を繋ぐというより、握手だよ」
ルカード「たしかに」
ヴィエリゼ「でも、ありがとう」
ルカード「・・・他には?」
ヴィエリゼ「えっ?」
ルカード「俺にして欲しいこと、 他には何があるのか教えて?」
  ルカードの優しい笑顔に想いがあふれそうになり──
  なぜか、少しだけ、泣きたくなった。

次のエピソード:おまけ・魔界の珍味

コメント

  • わあああ😆
    一気に進展してニヤけちゃいました! 勇者と魔王という属性の恋愛、ドキドキします! エンディングノートがいい仕事してますね!

  • ラッキースケベとはけしからんですねぇ……
    (いいぞ。もっとやれ)
    これは通報(宣伝)しないと……

ページTOPへ