第八話 JKだけど、清楚な娘じゃなくてもいいですか?(脚本)
〇おしゃれなリビングダイニング
花木知佳「それにしてもよかったわね、真奈央さん。ケンブリッジ大学だなんて」
花木知佳「イギリス最高峰、いえ、世界最高峰の大学だわ」
花木幸男「まだ決まったわけではない。ケンブリッジの知り合いの教授に話を通しただけ」
花木幸男「有利になるのは面接だけだ。学力は無論、最高水準が必要」
花木知佳「真奈央さんなら大丈夫よ」
花木幸男「勉学は怠らなかったか、真奈央?」
花木真奈央「は、はい、それはもちろん・・・。あの、お父様、お母様」
花木知佳「なんです?」
花木真奈央「ケンブリッジ大学の件、少し考えさせていただけませんか?」
花木知佳「なんですって!?」
花木幸男「なぜだ。理由を言いなさい」
花木真奈央「あまりに急なお話でしたし。それに、友人と会えなくなってしまうのも・・・」
花木知佳「真奈央さん! 友人は絶対ではありませんよ。いつ離れていくかわからないもの」
花木知佳「一時の感情に流されて判断を誤ってはいけません」
花木真奈央「・・・はい」
〇教室
鳥居牧子「会長、聞きましたわ!」
鳥居牧子「卒業したら、ケンブリッジ大学に進学なさるんですね!」
花木真奈央「まだ、決まったわけでは・・・。どなたから聞いたのかしら」
鳥居牧子「うちの母が会長のお母様からうかがいましたの」
鳥居牧子「あああ、流石は会長。やはり会長には英国貴族のような生活こそふさわしいですわ!」
花木真奈央「いえ、そんな・・・」
鳥居牧子「ああ、早くお祝いのパーティーを催したいですわ」
花木真奈央「牧子、私はまだ・・・」
鳥居牧子「はああ、私も会長のように世界に羽ばたいていきたい!」
花木真奈央「まだ行くと決まってないわ! 勝手に盛り上がらないでちょうだい!」
鳥居牧子「も、申し訳ありません。つい興奮してしまって」
鳥居牧子「どうか、お嫌いにならないでください・・・」
二人の様子を、教室の隅から綾が見ていた。
一ノ瀬綾「・・・ふむ」
〇学校の昇降口
花木真奈央「ふう・・・」
一ノ瀬綾「まーなーおっ!」
花木真奈央「綾・・・」
一ノ瀬綾「ちょっと、おしゃべりしてこうか」
〇田舎の公園
一ノ瀬綾「はあー、懐かしい。昔はよくこの公園で遊んだよね」
花木真奈央「・・・たぶん遊んだことないわよ」
一ノ瀬綾「あれ、そう? でも、小学生の時に」
花木真奈央「私たち、中学生からの仲でしょ」
一ノ瀬綾「あれー、そうだっけ。へへへ、まあ、細かいことだよ」
花木真奈央「全く、テキトーなんだから」
一ノ瀬綾「ねえ、なんかあった?」
花木真奈央「え!」
一ノ瀬綾「教室ですっごい居心地悪そうだったし、最近なんだか忙しそうだから。大丈夫かなって」
花木真奈央「居心地悪そうだった?」
一ノ瀬綾「そりゃあもう。あれ、おしっこでも漏らしたかなって思ったもん」
花木真奈央「そんなわけないじゃない!」
一ノ瀬綾「それぐらい顔がひきつってたってこと」
花木真奈央「そう・・・。もっと生徒会長らしく、いつでも優雅でいないといけないわね」
一ノ瀬綾「・・・あのね、真奈央はそんなに素敵な子じゃないからね」
花木真奈央「は?」
一ノ瀬綾「結構バカだし、ドジで抜けてるし、時々性格悪いし、バカだし」
花木真奈央「バカって二回も・・・」
一ノ瀬綾「調子乗んな!」
花木真奈央「なんなのよ!」
一ノ瀬綾「だから、愛してるぜ」
花木真奈央「はい?」
一ノ瀬綾「もうー、鈍いなぁ」
花木真奈央「私が悪いの!?」
一ノ瀬綾「要は、なんでも相談してってこと」
花木真奈央「綾・・・」
一ノ瀬綾「それだけ言いたかったんだよー」
花木真奈央「・・・分かりにくいわよ」
一ノ瀬綾「へへへ、すまんねぇ」
花木真奈央「ふふふ」
〇公園の入り口
一ノ瀬綾「じゃあ、また明日ねー」
花木真奈央「ええ、気を付けて」
花木真奈央「なんでも、相談して・・・か」
〇古いアパートの一室
まらすけ「はい、僕の漫画。初版本なんだから汚すなよ」
花木真奈央「『ブルー・ブルマー』『ラブポーション』の初版本。はぁはぁ・・・じゅるり」
まらすけ「よだれ出てる! 拭け!」
花木真奈央「す、すみません、つい」
まらすけ「でも、ホントにエロ漫画描いてることカミングアウトするの?」
花木真奈央「はい。綾ならきっとわかってくれます。師匠の作品を見せれば、きっとエロ漫画の魅力を理解してくれます」
まらすけ「どんな子か知らないけど、少なからず偏見は生まれる。きっと後悔することになるよ」
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