第4話/先輩の彼氏力が高すぎる(脚本)
〇女の子の部屋
((あった、鎖女の元ツイート))
鎖女の噂、マジだった! やばい!
〈引用リツイート〉
莉々子「もしもし、ユウナ? 部活、お疲れー」
ユウナ☎️「莉々子! LINE読んだよ!」
ユウナ☎️「色んな意味でびっくりしたんですけど!」
莉々子((だろうなぁ))
部活中のユウナに、LINEで全部話した。
鎖女に襲われたこと、そして・・・
柏木先輩の、こと・・・
ユウナ☎️「とにかく無事でよかったよー!」
ユウナ☎️「でも、柏木先輩? マジで漫画とかアニメの人みたいだね!」
ユウナ☎️「いっぺん見てみたいな、ホンモノの除霊! 演技の参考になりそう!」
莉々子「あはは、ユウナは本当に演劇に対しては真面目だよね」
ユウナ☎️「そりゃそうよ!」
ユウナ「だって、推しの俳優さんといつか共演するのが夢なんだもん!」
莉々子「うん。がんばってね、応援してる!」
莉々子((・・・まあ))
莉々子((無理だとは思うけど・・・))
だってそうでしょ。
推しているトップ俳優と、一介の演劇部の女子高生。
共演どころか、出会うことすら、ありえない。
見るだけ無駄な『夢』だ。
莉々子((・・・あ))
莉々子((今あたし、すごく嫌な子になってる))
莉々子((親友の夢を否定して、見下してる))
莉々子((だって・・・ 電話越しでも、夢を語るユウナの瞳がキラキラしてるって分かるんだもん))
莉々子((あれ、ちょっとだけ・・・ツラいんだよね))
あたしには、何もないんだって、事実を突きつけられてるみたいで
ユウナ☎️「莉々子、聞いてる?」
莉々子「え、何?」
ユウナ☎️「さっきも言ったけどさ、もう大丈夫なんだよね?」
ユウナ☎️「柏木先輩が除霊したんだから、もう莉々子は襲われないよね?」
莉々子「うん、鎖女はもう現れないと──」
莉々子「あっ!」
莉々子((やば! あたし今、ユウナに鎖女の話しちゃった?))
莉々子「(ていうか、ツイッターの引用リツイートで出現報告とかしちゃったし・・・つい)」
莉々子((いや・・・大丈夫だよね 名前だけポロッと口走っただけだし! 文字だけだし!))
莉々子「(うわー気をつけないと・・・)」
遅い時間になったので、ユウナとの通話を切った。
〇女の子の部屋
おやすみなさーい
・・・
・・・・・・
やっぱり電気つけよっ。
〇女の子の部屋
今度こそおやすみっ
・・・・・・
〇女の子の部屋
〇黒
・・・
・・・・・・
・・・や め ろ ・・・
〇シンプルな玄関
翌朝、
あたしは、口の歯ブラシを落っことしそうになった。
柏木「おはよう」
チャイムが鳴ったからハミガキしながら出ていったら、
そこには目が覚めるようなイケメン──つまり柏木先輩がいた。
柏木「迎えに来た」
莉々子「そ、それは・・・一緒に登校しようって意味ですか・・・?」
柏木「それ以外に何がある」
柏木「また鎖女が現れるかもしれない。 朝だからと言って、油断はできないからな」
キッパリと言い切る先輩に、あたしは大いに慌てた。
莉々子「ちょっとお待ちになってください!」
変な日本語になった!
あたしは慌てて家の中に戻って、ダッシュで身支度をする。
莉々子((わーん、髪に寝癖ついたままだ!))
莉々子((ていうか中学時代の芋ジャージだし! ラクだからって寝巻きにしてるやつ!))
莉々子((サイアク・・・今度、可愛い部屋着買お・・・))
〇一戸建て
莉々子「お待たせしましたっ!」
柏木「いや。こっちこそ、早く来て悪かったな」
莉々子((先輩って・・・))
莉々子((口調はぶっきらぼうなのに、気遣いにあふれてるんだよなぁ・・・))
昨日と同じようにヘルメットをかぶせてもらって、バイクの後部座席に乗る。
柏木「しっかり捕まっていろよ」
柏木「俺の腰に手を回していいから」
莉々子「は、はいっ」
莉々子「(腰回り、がっしりしてる。男の人だぁ・・・)」
〇通学路
徒歩30分の通学路を、流れ星みたいに走る。
風が気持ちいい。
学校近くになると、生徒たちが次々とあたしたちの方を向いた。
柏木の友人「おっ、柏木ー! なんだよ、カノジョかー?」
先輩の友達らしき人がそんな声をかけてきた!
莉々子「!?」
柏木「やかましい!」
莉々子((否定、しないんだ・・・!!))
〇学校の廊下
駐輪場で下ろされた後は、なんとあたしの教室まで送ってくれた。
柏木「今日の放課後の予定は? 部活は入っているのか?」
莉々子「あ、あたし帰宅部です!」
柏木「そうか。 なら、6時間目が終わったら迎えに行く」
サラリと、トンデモナイ発言を残して、先輩は去っていった。
時間差であたしの頬が熱くなる。
莉々子((今の発言、なんかもう、まるで・・・))
ユウナ「莉々子ぉ!」
ユウナ「今のセンパイ何!? 今の彼氏ヅラは一体何──!?」
莉々子「そう、それ!!」
大興奮のユウナにつられて、あたしも大声を出す。
莉々子((それだ、それ! さっきのはまごうことなき彼氏ヅラだぁ!!))
クラスメイト「莉々子、いつの間に彼氏できたの!? ずるーい!」
クラスメイト「しかも超絶カッコイイじゃん! 背ぇ高くて細マッチョで! バクハツしろ!」
クラスの友達も好き勝手言ってくる。
キャーキャー教室の出入り口で騒いでいると、
ドンッ
エミリ「どきなさいよ、邪魔よ!」
莉々子「あ、ごめん」
エミリ「フンッ」
莉々子((エミリ、いきなり何だろ・・・ 同じクラスでもロクに話したことないのに))
エミリとその友達は、遠くからやけにキツい目線をぶつけてくる。
ユウナ「莉々子。エミリのグループって、みんな柏木先輩のファンらしいよ」
ユウナ「うわ、超ニラんでるよ。 嫉妬全開じゃん。怖い〜〜〜」
莉々子((ほんとだ、視線で呪い殺しそうな勢い・・・))
莉々子((怖い、けど))
莉々子((ちょっと、気分いいかも?))
莉々子((エミリたちってけっこー目立つから。 そんな子たちに嫉妬されるなんて))
莉々子((むふふ))
昨日と同じ、退屈な授業が始まる。
莉々子((でも昨日と違って、すごーくウキウキしてる))
莉々子((放課後も、先輩と一緒にいられるんだもん))
〇教室
ユウナ「じゃあね、莉々子! 彼氏さんによろしくー💕」
莉々子「もー、からかうなっての!」
部活へ急ぐユウナを見送って、あたしは柏木先輩を待つ。
莉々子「柏木先輩、まだかな・・・」
莉々子((できれば他の子がいるうちに来てくれないかなー、なんてね))
〇教室
莉々子((できれば先輩と、どこか寄りたいな・・・))
〇教室
莉々子「(駅前のスタバとか!)」
莉々子「(・・・うーん、ダメかなぁ)」
〇教室
莉々子「(憧れだったんだよね・・・男の子と寄り道するの)」
莉々子((ダメ元で言ってみちゃおっかな!))
莉々子「・・・」
莉々子「・・・・・・」
莉々子「・・・あれ?」
〇黒
みんな、どこ行ったの?
さっきまで、クラスの子が何人かいて、ザワザワしていたのに・・・
誰も、いない・・・?
莉々子「!?」
莉々子((え、何・・・今の音))
莉々子((ジャラ・・・って))
ま さ か
莉々子「鎖の、音・・・」
あたしは、ゆっくり振り返った。
・・・ジャラッ・・・
・・・はあ──・・・
・・・はあ──・・・
ジャラッ
鎖 女 ・・・ ?
そりゃ莉々子ちゃんなら、起こった出来事をペラペラ話しちゃいますよね。ナチュラルに招いた鎖女との二度目の対峙、またも格好いい柏木先輩の活躍が見れるのでしょうかね