6話:家族を蘇らせたい理由(脚本)
〇おしゃれなリビングダイニング
威流 緋雨「警察の方が何の用ですか?」
国乃景「表向き警察を装っているが、我々は、」
国乃景「足下に存在する影。 灯台もと暗し、ってやつだ」
威流 緋雨「警察ではない?通報しま」
国乃景「おいおい、物騒だぞ!?」
国乃景「こうして穏便に話しに来てるんだから、焦るな」
国乃景「今朝のニュース。 知ってるか?」
威流 緋雨「観てません」
国乃景「なんだ。ニュースくらい朝飯の時つけておけ」
威流 緋雨(余計なお世話だ!!)
国乃景「去年の11月、例年であれば解禁されているはずのボジョレーヌーボーが、日本に入ってこなかった」
威流 緋雨「それが? 不作か何かでは?」
国乃景「公にはなっていないが、ワインの輸入に不穏な動きが見え始めたのは、」
国乃景「7月、ちょうど夏休みに入る前辺りのことだ」
国乃景「そう。君という死体が遺棄された時に一致する」
威流 緋雨「お、俺は死んでなんかいない! こうして今!目の前にいるじゃないか!」
国乃景「いいや。 それはあり得ない」
国乃景「現場検証から、あの車に乗っていた者の生存は、現実的にあり得ない」
国乃景「君は、世界の、触れてはならない者に拐かされた」
国乃景「分かるかな? あの髪の長い男だよ」
威流 緋雨「あいつが何だって言うんですか?」
国乃景「そう。あいつは」
威流 緋雨「たしかにあいつは」
威流 緋雨「頭はおかしいし、気持ち悪いし、良い所なんて、挙げる方が難しいけれど」
国乃景「意外と言うねぇ、君・・・」
威流 緋雨「それが何だって言うんですか!?」
国乃景「あれはね、バケモノだよ」
国乃景「永年を生き、殺しても蘇る化け物」
国乃景「ま、俺もこんな話、胡散臭いと思ってんだけどね」
国乃景「しかし、まぁ、これが仕事なもんで。 そうなんだと思ってくれ」
威流 緋雨「その化け物と、一緒にいると何がいけないんですか?」
国乃景「そうそう。それね。 君がどこまで知っているか知らないけど」
国乃景「君たちが共にいると世界が崩壊するんだ」
国乃景「崩壊の兆候として」
国乃景「1人目が目醒めた時は、小麦の不作による大きな飢饉」
国乃景「『パンがなければケーキを食べればいいじゃない』っていうやつだ」
威流 緋雨「それは違う。 あいつは500年生きていると言っていた」
威流 緋雨「その話は、1700年代。 300年前くらいのことだ」
国乃景「まぁまぁ、そんな細かい事、俺は知らないが、2人目の時は、」
国乃景「葡萄に関する何かしらの不足が起こると推察された」
国乃景「つまりは、今回の、ボジョレーヌーボーが解禁されない、という崩壊の兆候に一致する」
威流 緋雨「そうだとして、俺にどうしろと?」
国乃景「そう!それが本題!」
国乃景「君は拐かされているんだろ? 早急にあのバケモノから離れなさい」
威流 緋雨「それはできない!」
国乃景「なんだ。 やっぱり共にいる理由があるのか」
国乃景「しかし、こちらも引けないんでね」
国乃景「公にはなっていないが。 第三の崩壊の兆候として、世界規模の食料危機、輸出入各国の規制、が見え始めている」
国乃景「生ハムやサラミ等の加工食品が入ってこないのも、表向きは、生産過程のトラブルとしているが、果たしてどこまでが真実か」
国乃景「あのバケモノに何を言われ、何を餌にされているか知らないが」
国乃景「信じるもんじゃないぞ」
威流 緋雨「それを言うなら、あなたの仕事だって胡散臭いじゃないですか」
国乃景「そう!その通り!」
国乃景「仕事なんてね、おかしな物なんだよ」
国乃景「世界をより良くする為~とか言って。 本当により良くなったら、仕事なくなっちゃうんだから」
国乃景「あんまり真面目過ぎない方がいいよ」
国乃景「それじゃ、忠告したから。 ちゃんと言う事聞いてね」
威流 緋雨「待て! 俺は離れるつもりないぞ!」
国乃景「真面目だなー。もう残業になっちゃうから、ちゃんと言う事聞いてくれればいいから!じゃっ!」
威流 緋雨(まったく何なんだ!?)
先に手を出してきたのは世界の方だろう!?
何があっても!!どんな犠牲を払おうとも!!
俺は家族を必ず蘇らせる!!!
〇明るいリビング
世界が崩壊したら
家族を蘇らせたとして
世界が無くなってしまうから
元も子もない
それでも
蘇らせようとする
だって、そうしていないと、
俺はもう生きていられない
走馬灯の家族たちが
何度も手招きをしても
俺はもうそこにいけない
俺だって
死ねない、バケモノだから
〇一人部屋
威流 楓「ふんふふ~ん♪」
威流 楓「はーい♪」
威流 楓「緋雨がおれの部屋にく」
威流 緋雨「いいから!! 大変なんだ!!」
威流 楓「な~に? そんなに急いで」
威流 緋雨「さっき、警察みたいなやつが来た」
威流 緋雨「それで俺の事を知っていた。 本当は死んでいるとか。ボジョレーヌーボーがとか。500年前はとか・・」
威流 楓「その人知ってるよ。 なんか頭固そうな面白味のない人だよね~」
威流 緋雨「どういうことだ」
威流 楓「どうもこうも、話したことあるよってこと」
威流 楓「おれって人気者だからさ~ 警察?だっけ。毎回挨拶に来るの」
威流 楓「お元気ですかって」
威流 緋雨「ふざけないでくれ!」
威流 楓「もう、ほんと真面目なんだから~」
威流 緋雨「あんたがふざけ過ぎているんだ!」
威流 緋雨「警察から離れなさい、って言われたんだぞ。それはどうすればいい・・・」
威流 楓「それは困ったな~」
威流 楓「お互いがいないともう生きていけない体に」
威流 緋雨「へ、変な事を言うな!」
威流 楓「だってそうでしょ~」
威流 楓「おれは緋雨がいないと、おれの目的を果たせない」
威流 楓「緋雨だって、おれがいないと、目的を果たせないよ?」
威流 楓「家族を生き返らせるんでしょ?」
威流 緋雨「生き返らせる。何としてもな」
威流 楓「へ~。そのわりには不真面目じゃない?」
威流 楓「入学式の時は、1日で4人も接触したっていうのに」
威流 楓「栗木田真衣、一人、何を手こずっているんだか」
威流 緋雨「・・・」
威流 楓「もう7月が終わっちゃうよ」
威流 緋雨「しょ、初日に動き過ぎて、怪しまれているんだ」
威流 緋雨「少し大人しくしていた方がいいと判断した」
威流 楓「なるほどね。 まぁ、おれは何だっていいんだけど」
威流 緋雨「それより、あんたに聞きたい事がある」