異世界転生に本格ミステリぶっこんだら、新感覚ざまぁになりました!

高岩唯丑

エピソード38(脚本)

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〇城の会議室
ハルソン「それでどうして、私がやった事になるのです! 子供の頃私が火事に巻き込まれただけの話でしょう」
ロク「・・・・・・では、話を現在の事件に戻しましょうか」
  僕は極めて冷静に、そう告げる。感じてしまっている優越感に自己嫌悪しながら、口を開いた。
ロク「事件が起こったのは朝の通勤時、もちろん日の光はしっかり降り注いでいました、それに基本的に空気が乾燥している」
  湿気はかなり少ない。燃える条件は整っている。
ロク「ネリアル氏は基本的に同じ時間に出勤していたそうですね、」
ロク「あなたはその時間より早くアカデミーにやってきて、さり気なくネリアル氏を待っていた」
  どこにいたかわからないけど、隠れて待っていたら怪しまれてしまうから、
  おそらく目立たない様に、さり気なくどこかに待機していたのだろう。
ロク「そして、出勤してきたネリアル氏を見つけて、あなたは魔法を使った」
ハルソン「魔法を使ったら、私の魔力紋が残る! でも」
  ハルソンが苦し紛れにそう言うのを、僕は手で制して止めた。
ロク「そう・・・・・・魔力紋が残る、でも最初に言ったでしょう、例外があると」
  ヒュッと息を詰まらせるような音がハルソンから聞こえた。
ロク「あなたは、強化魔法を使って、日の光を強化したんです」
  拳を握り締めたハルソン。体は強張り、震えている顔には、冷や汗をかいている。
  日の光が凶器だと思ったのは、ネリアル氏の遺体を現場記録で確認した時。焼けた跡が、日焼けを連想させた。
  もちろん黒焦げなんだけど、焼けた方のムラが日焼けのそれに近かった。
  日の当たる部分が強く焼けて、当たっていない部分、つまり影になる部分は、燃え広がった火によって焼けただけだった。
  僕は言い逃れができない様に、畳みかける。
ロク「本来、強化魔法は自分以外にかけると、使い物にならない程度の強化しかできない、」
ロク「でもあなたはそれを物ともしない・・・・・・それに魔力紋はネリアル氏の体には残りません、」
ロク「日の光・・・・・・厳密には熱ですが・・・・・・を強化していますから、」
ロク「そして魔力紋が残ったはずの日の光も、消えてなくなっている」
  これで、魔力紋が残っていない焼死体が出来上がる。
ロク「動機があり、強化魔法のスペシャリストであり、日の光に熱があると気付く機会があったあなたが犯人の可能性は極めて高い」
  物的証拠がない。その事に気付かないでくれと、僕は祈りながらそう言った。
  ハルソンは力が抜けてしまったのか、膝から崩れ落ちる。諦めてくれたのだろう。僕は少し安心した。自白と考えてもいい行動。
ジョマ「やっぱり、ネリアル氏が妬ましかったんですか?」
  ジョマがハルソンに歩み寄りながら問いかける。ハルソンは俯いたまま、暗い声色を響かせた。
ハルソン「私が何十年もかけてたどり着けなかった場所に、彼は・・・・・・一瞬でたどり着いたんだ」
ジョマ「それで、バカにでもされましたか?」
  少し呆れたような声を出すジョマ。それに対してハルソンは首を振った。
ハルソン「違ったよ・・・・・・彼はどこまでいっても完璧な人間だった、」
ハルソン「まだ人を見下すようなクズ人間だったら、追い抜かれた皆で悪口でも言って、終わったかもしれない」
  なんとなく気持ちは分かる気がした。才能で追い抜かれて、その他も勝てる部分がない、圧倒的な負け。
  きっとハルソンは惨めになった事だろう。
ハルソン「人が周りに集まって、笑顔でみんなと接する彼が、明るく眩しかった、それこそ日の光みたいに」
  床についた手を握り締めながらハルソンは続ける。
ハルソン「そんな時に、あの火事を思い出した、」
ハルソン「子供の頃、発火の瞬間を見ていたおかげで、原因はなんとなく分かっていた、」
ハルソン「それを活用する方法も降ってくるように思いついた、そして」
  そこまで言ったハルソンが、顔をあげて僕を見据えた。
ハルソン「誰かが耳元で囁いた気がした・・・・・・その方法なら、誰にもバレずに邪魔者を消せると」
  僕は首を横に振って見せる。だとしても。
ロク「たとえ妬ましくて、自分が惨めだったとしても、誰にもバレない方法を思いついたとしても、実行するべきじゃなかった」
  僕は腰をかがめて、ハルソンに自分の視線を合わせる。目を見据えて、きちんと伝えるべきだと思ったから。
ロク「人の命を奪ったんです、ただ頑張って生きていただけの人の命を、あなたの身勝手な思いで」
ロク「・・・・・・これから受ける報いは、あなたが選択した愚かな行為の結果です」
  僕はそれだけ言って、立ち上がりハルソンに背中を向けた。
  後ろから聞こえてくるのは、後悔に苛まれて、罪悪感の痛みに耐える様な、そんな声ばかりだった。

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