第三話 JKだけど、編集長を前屈みにしてもいいですか?(脚本)
〇テーブル席
鹿嶋紳助「年齢、27歳」
花木真奈央「17です」
鹿嶋紳助「職業、広告代理店社員」
花木真奈央「高校生です」
鹿嶋紳助「性別、男」
花木真奈央「女です」
鹿嶋紳助「全然ちゃうやん、プロフィールと全然ちゃうやん!」
花木真奈央「す、すみません・・・」
鹿嶋紳助「嘘書いたらアカンやろ」
花木真奈央「本当のこと書いたら、選ばれないと思って・・・」
鹿嶋紳助「選ぶに決まってるやろ!」
花木真奈央「そうですよね・・・」
花木真奈央「え、選ぶんですか!」
鹿嶋紳助「当たり前や。ワイの基準はシンプル。エロいもん描けるかどうかだけや」
花木真奈央「やった! それじゃあ、描かせてもらえるんですね!」
鹿嶋紳助「待て待て。これはあくまでワイの基準や。編集長はちゃう」
花木真奈央「青天の編集長といえば、あの渋井編集長ですか」
鹿嶋紳助「なんや、知っとんかい」
花木真奈央「もちろんです。エロ漫画家を志す者で渋井編集長を知らない人はいません」
花木真奈央「エロ漫画界の生きるレジェンド。そんな人のもとでエロ漫画を描けたら・・・はぁ、はぁ」
鹿嶋紳助「興奮しとるとこすまんけどな。編集長は今まで一度も女と未成年にエロを描かせたことがない。そういう信念やねん」
花木真奈央「そんな、それじゃ・・・」
鹿嶋紳助「諦めるんか?」
花木真奈央「いえ、私が渋井編集長の信念を破る、最初の女になっちゃうと思って」
鹿嶋紳助「くっくっく、図太い神経しとるわ」
鹿嶋紳助「よっしゃ、ほんなら善は急げや。早速行こか」
花木真奈央「どこへですか」
鹿嶋紳助「決まっとるやろ。青天編集部や」
〇大企業のオフィスビル
花木真奈央「すごい。さすがは天下の青年天国」
鹿嶋紳助「なにしとんねん、こっちや」
花木真奈央「?」
〇寂れた雑居ビル
鹿嶋紳助「あっちはうちの親会社の中学館本社や」
鹿嶋紳助「うちら青天は分社化したあと、倉庫代わりに使われてた隣の雑居ビルをあてがわれたっちゅうわけや」
花木真奈央「なんて、汚い・・・」
鹿嶋紳助「がっかりやろ」
花木真奈央「ナイス、ナイスですね! やっぱりエロは日陰でひっそりと露に濡れる汚い雑草のようでないと!」
鹿嶋紳助「どんな感性やねん。ほら、行くで」
〇小汚い廊下
渋井豪「帰れ! ここはガキの来るとこじゃねぇんだよ!」
〇雑誌編集部
鹿嶋紳助「編集長、そこを何とか」
渋井豪「鹿嶋、俺の信念は知ってるよな。女、子供にはエロは描かせねぇ」
花木真奈央「どうしてですか。私は描けます!」
渋井豪「うるせぇ、処女が調子のるな」
花木真奈央「な、なぜ処女だと・・・!」
渋井豪「制服のリボン”処女結び”。椅子の座り方”処女腰掛け”。茶の飲み方”処女ごっくん”」
渋井豪「お前のすべての行動が俺に処女だと教えている」
花木真奈央「さ、さすが、元AV監督。御見それいたしました」
鹿嶋紳助「編集長の経歴まで知ってるんか。マニアやな」
渋井豪「そんな処女のお前が、あの漫画をどうやって描いた」
渋井豪「あれは、初めての彼氏にヤリ捨てされる女の物語だ」
花木真奈央「それは・・・」
渋井豪「あの迫力は本当にヤリ捨てされてないと出せない」
花木真奈央「・・・私の親友が経験したことなんです。彼氏にひどい仕打ちを受けたって、泣きながら私に相談してきて」
渋井豪「それで、お前はどう思った」
花木真奈央「ああああ、興奮するーって!」
鹿嶋紳助「最低やん!」
花木真奈央「最低なんです。でも、彼女の語る初体験の一コマ一コマがあまりにも生々しくて」
花木真奈央「まるで自分がヤリ捨てされている気分になってきて」
渋井豪「描かずにはいられなかったか」
花木真奈央「その時、彼女はどんな声を出しただろうか。どんな表情だっただろうか。 どんなに乳房は張り詰めただろうか」
花木真奈央「興奮してしまって。はぁはぁはぁ・・・」
渋井豪「たしかに、それはお前の才能だろう。他人の経験を我が事として語ることができる。認めるよ」
渋井豪「認めた上で、普通の漫画を描け」
花木真奈央「普通ってなんですか。私にとっての普通はエロ漫画です」
渋井豪「屁理屈言うな。俺が女とガキにエロ描かせねえのは、別に面白いもんを描けねえからじゃねえ」
渋井豪「そいつの人生に責任を持てねえからだ」
花木真奈央「私は、自分で責任を持てます・・・」
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