俺とマドンナの廃劇場

ヒナタクチ

読切(脚本)

俺とマドンナの廃劇場

ヒナタクチ

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〇センター街
  202x年、東京に怪人デストロイヤーがいきなり現れて街を破壊し続けた。
  怪人だ!怪人デストロイヤーが来たぞ!!
  逃げろ!!!
怪人デストロイヤー「家族や友人、知人の悪口は言ってもいい」
怪人デストロイヤー「だが俺の悪口は許さねぇぇええええ!!!」

〇荒廃したセンター街
  ギャー!!火事だぁぁぁぁぁ
  助けて!!!
怪人デストロイヤー「ワハハハハハハハ」

〇温泉の湧いた渋谷
モブ「ギャー雷だ!!」
モブ「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い」
怪人デストロイヤー「ガハハハハハハ」

〇荒廃したハチ公前
怪人デストロイヤー「全て壊れてしまえ! 全て破壊してしまえ!!! ワハハハハハハハ」

〇SHIBUYA SKY
怪人デストロイヤー(今日も暴れたな、ハハハ)
怪人デストロイヤー(...)
怪人デストロイヤー(チッ、何かが物たりねぇ)
怪人デストロイヤー(何故だ...)

〇狭い畳部屋
  俺のことをムカついたら殴るカスな父親も
  俺の事を無視して間男と浮気していた母親も

〇教室
  俺の事をキモイだの消えろだの虐めてきた
  クラスメイトや先公も

〇SHIBUYA SKY
音無 奏「消してきたって言うのに!! 何が足りねぇぇんだ!!!」
怪人デストロイヤー「俺の人生本当にクソだったな!!!」
「それは本当にそうかしら」
怪人デストロイヤー「だ、誰だ!?」
「クワガタの怪人の格好してるのってもしかして今も虫取りしていたりするの?」
怪人デストロイヤー「何でそれを知って!? いや、サッサと出てこいや!!!」
怪人オペラ「お望み通り出てきたよデストロイヤー。 私の名前は怪人オペラ。よろしくね」

〇SHIBUYA SKY
怪人デストロイヤー「ウワァァァ!?いきなり出てくるんじゃねぇ」
怪人オペラ「あらら、ごめんね。一応本職は舞台俳優だから演出に力を入れているんだよ」
怪人デストロイヤー「あとお前誰だ!?俺に何のようだ」
怪人オペラ「...私の事わからないの?ショックだなぁ」
怪人デストロイヤー「俺は燃えてる野郎なんて知らねーよ!!」
怪人オペラ「あぁ、そうだね。確かにこの姿だとわからないかも」
富士桜サチ「これでわかった?」
怪人デストロイヤー「えっオマエ女の子だったの?」
富士桜サチ「そうだったね、昔から失礼な奴だったよ君は」
怪人デストロイヤー「失礼って言うやつの方が失礼だろ! それにあんたみたいな上品な美人に縁もゆかりも無い育ちだったんだ!!!」
怪人デストロイヤー「あんたは俺を誰かと勘違いしてないか? 場合によっては殺すぞ!!!」
富士桜サチ「勘違いしてないよ。 音無 奏(オトナシカナデ)くんだよね。 私、伊集院幸子。芸名は富士桜サチ」
富士桜サチ「8歳の頃、私の大事なキーホルダー湖に落とした時虫取り網でとってくれたよね」
怪人デストロイヤー「えっ...あったような無かったような」
怪人デストロイヤー「でもこのブサかわいいキーホルダーは見たことある気がする...何のキャラだっけ?」
富士桜サチ「ブサかわじゃなくてかわいいに訂正して」
怪人デストロイヤー「ウッ、わかったよ。かわいいキーホルダー。これでいいだろっ!!」

〇池のほとり
彼女「ねぇ、そこのあなた!網を貸してくださらない?キーホルダーが落ちてしまったの!!」
音無奏「ギャーギャーうるせぇけど仕方ねーからとってやるか」

〇SHIBUYA SKY
怪人デストロイヤー「...少し思い出したな。確かに8歳の時だった」
怪人デストロイヤー「でも何で俺の名前知っているんだ。一度しか会ってないだろ」
富士桜サチ「メモ帳に書いてって何度もお願いして無理矢理書いてもらったからね」
怪人デストロイヤー「何で俺に今更会いたいって思ったんだ?」
富士桜サチ「フフフ、いい場所に連れてってあげるよ」
怪人デストロイヤー「ぶ、不気味な笑い方だな」
富士桜サチ「ヒドイ!」
怪人デストロイヤー「...仕方ないだろ。俺は色んな奴らに裏切られたんだ。もう誰も信じられねーよ」
怪人デストロイヤー「でも確かに悪かったな、...ゴメンな」
富士桜サチ(...)
富士桜サチ「ついてきて」

〇銀座
音無 奏(暇だからコイツについてきたら...銀座じゃねーか)
富士桜サチ「この先を右に曲がってもうすぐで着くから」

〇劇場の舞台
音無 奏(寂れた劇場?)
富士桜サチ「先週、ここで私の劇団は公演していたんだ。 もうこの劇場は取り壊されるんだけどね」
音無 奏「記憶違いかもしれねーけど、あんた確か医者の娘とかじゃ無かったっけ?医者にならなかったのか?」
富士桜サチ「なりたく無かったよ、子どもの頃は何不自由無い贅沢な暮らしだったけど私の夢は俳優だったんだ」
富士桜サチ「でもお父様もお母様も大反対してね...18歳の時に演劇に関する物全て捨てられてしまったんだ。私は激怒した勢いで家出したよ」

〇渋谷駅前
富士桜サチ「たまたま東京に事情を理解してくれた演劇友達がいたから運が良かった。私は高卒でバイトしながら俳優を目指した」

〇シックなバー
富士桜サチ「ガールズバーで日中働いてその貯めたお金で舞台の専門学校に行った」

〇劇場の舞台
富士桜サチ「その後、運良く私は舞台俳優になれた」
  幸せだった。...だけどその時
怪人オペラ「やぁ、そこのお嬢さん。美人だねぇ。ボクのスマートな姿と交換してみない?」
富士桜サチ「あなた誰?その特殊メイクは見事だけど」
怪人オペラ「ボクはオペラが好きな怪人さ♪ 色々な姿に変身できるんだ〜」
富士桜サチ「キャッ」
怪人オペラ「ビックリしたでしょう〜でも残念な事に姿を貸さないと1分しか持たないんだよね...」
富士桜サチ「ねぇ、私に何をさせようと言うの?」
怪人オペラ「安心してね。君に害は与えないよ。ボクは友好型の怪人だからね〜君の姿を貸してくれるなら君にボクの姿を貸してあげよう!」
怪人オペラ「火を扱えるし空も飛べる、ショーにつかえるかもね!!」
富士桜サチ「いや、別にいらないし私にメリットないじゃない?」
怪人オペラ「そんなぁ...」
怪人オペラ「あ、そういえば」
怪人オペラ「勝手に君の記憶をのぞいたんだけど」

〇渋谷駅前
怪人デストロイヤー「フハハハハハハ」
音無 奏「アハハハハハハハ」

〇劇場の舞台
怪人オペラ「ビデオカメラに映ってるのは今日のお昼のニュースさ、魔法のビデオカメラだから人には見えなかったものも見えてるけどね〜」
怪人オペラ「記憶とビデオカメラを調査してわかったんだけど...」
怪人オペラ「彼は8歳の時の君の恩人の音無くんだろう?白髪が目立つよね〜面影も当時のまんまだしね〜」
怪人オペラ「彼、悪い事しすぎたせいで指名手配になっているんだよ。怪人姿しか世間では知られてないけどね」
怪人オペラ「会いたいと思わないかい?」
富士桜サチ「!」
富士桜サチ「わかったわ。契約するから、ちなみに好きな時に怪人の姿に変化できるらしいけど副作用は無いの?」
怪人オペラ「副作用は変身しすぎると肉体にダメージが出ることかな。これは他の怪人も一緒だけど」
怪人オペラ「まぁ、契約成立ってことで!」
富士桜サチ「じゃあね〜ボクはこの姿でぶらぶら観光するつもりだからまたね〜」
富士桜サチ「...行っちゃった」

〇劇場の舞台
富士桜サチ「...という訳だったんだよね」
音無 奏「あんた、もしかして俺のこと惨めな奴って上から目線で同情してんのか⁈」
富士桜サチ「えっ?どうしてそうなるの?」
音無 奏「だってよぉ、あの街の爆撃事件のビデオを見てどうして俺に会おうとしたんだよ!まさかあんたも俺の邪魔するのか!?」
怪人デストロイヤー「邪魔するなら殺すぞ!!!!! 俺は間違った事はしていねぇ!!!!!」
富士桜サチ「邪魔する気は無いよ。 もし邪魔するなら私1人で会うんじゃなくて警察や自衛隊も引き連れて数で奏くんを仕留めるつもりだけど」
富士桜サチ「むしろ「同情」じゃなくて「共感」だったんだけどね」
怪人デストロイヤー「は?」

〇名門校の校門(看板の文字無し)
富士桜サチ「確かに私は奏くんと経済的な境遇は違うけど親は私の事を跡継ぎとしか見ていないし本音で話せる友達も学校にはいなかったんだよね」
富士桜サチ「だからずっと、ひとりぼっちな感覚だった」

〇劇場の舞台
富士桜サチ「だから奏くんに会えて嬉しかったんだよ」

〇池のほとり
音無奏「ホラっ、拾ったぞ」
彼女「ありがとう!!すごく嬉しいわ」
音無奏「じゃぁオレこれで帰るから」
彼女「待って、あなたのお名前は?」
音無奏「メンドクセー」
彼女「絶対ウソよ! 忘れちゃ嫌だからメモ帳に名前書いて!」
音無奏「は?何で?」
彼女「また会えた時に名前覚えた方がいいでしょ?」
音無奏「ヤダよ」
彼女「ヒドイ!!教えてくれたっていいでしょ!! ねぇ!!お願い!!!」
音無奏「わかったよ、ホラって」
彼女「フフフ、ありがとう」
音無奏(変な奴だ)

〇劇場の舞台
怪人デストロイヤー「ガアアアアアァァァァア」
怪人オペラ「危ないじゃない!!やめなよ!!」
怪人デストロイヤー「意味わかんねぇ、本当にイミワカンネェ!! 何であんただけなんだ!!!リカイデキネェ!!!」
怪人オペラ「待ってよ!!」
怪人オペラ「一旦、落ち着いて話そうよ」
怪人デストロイヤー「落ち着いていられるか!!」
怪人デストロイヤー「何でポッと出てきたあんたは俺と話そうとしてくれるのにヨォ、俺の親父とオフクロは俺の話を聞いてくれねーんだよォォォォオオ」
怪人デストロイヤー「幼なじみだった友達も俺がいじめられた時に見捨てたんだ!!!ドウシテカワカンねぇよォォォォオオ!!!!!!!!!」
怪人オペラ(...)
怪人デストロイヤー「もう、もう裏切られるのは懲り懲りなんだ!あんたは俺を裏切らないかもしれないが俺はあんたを信用できないんだ!!」
怪人デストロイヤー「だからあんたを殺す事に決めた!! 殺せば死ぬ事だけは確実だからな!!!」
怪人オペラ「わかった、なら正々堂々と戦おう。 ...もう手加減はしないよ」

〇劇場の舞台
怪人デストロイヤー「!?」
怪人デストロイヤー「ギャハハ、何だよコレ!! 目眩しのつもりかよ!!!」
怪人デストロイヤー「演劇しかやってないジョーヒンな怪人さまにピッタリのお遊びなお花攻撃だなァアアア!!」
怪人オペラ(ニヤリ)
怪人デストロイヤー「ウッ...い、息が...」
怪人デストロイヤー「息が全然出来ねぇ!!!!!!!」
怪人デストロイヤー「ガハッ」
怪人オペラ「言ったでしょ?手加減はしないって。ちなみにこの攻撃はとあるローマ皇帝のオペラで学んだんだよ。上品な攻撃でごめんあそばせ」
怪人デストロイヤー(俺は...死ぬのか? こんな間抜けな死に方で!?)
怪人デストロイヤー「ゲホッゲホッ... 死ぬ前に...あんたに...言っておく」
怪人デストロイヤー「俺に話しかけてくれて...ありがとな...」
怪人オペラ「⁈」
怪人オペラ「待って、奏くん!?」

〇黒背景
怪人デストロイヤー(暗いな...こんなところが地獄か)
「奏くん」

〇高級マンションの一室
怪人デストロイヤー「...ハッ!ここは?」
富士桜サチ「良かった、目が覚めて」
怪人デストロイヤー「あんたは俺を殺したんじゃ?!」
富士桜サチ「初恋の人を殺す訳無いじゃない」
怪人デストロイヤー「えっ」
富士桜サチ「私、これから仕事だからお留守番よろしくね〜」
「はつこい..ハツコイ..初恋? バカな...」
怪人デストロイヤー「アホくさ」
怪人デストロイヤー「留守番とか冗談じゃねぇ!! 俺はこの家を出て行ってやる!!」
怪人デストロイヤー(あのブサイクなキーホルダー玄関に忘れてるぞ)
怪人デストロイヤー(ハハハ)
怪人デストロイヤー「何で俺は笑っているんだ、違う、断じて違うぞ!!この家の奴がおかしいから毒されたんだ!!早く出ないとマズい!!!!」

〇シックな玄関
怪人デストロイヤー「あいつ!!玄関に変な術を使ったな!!! クッソ!!!出られねぇ!!!!」

〇高級マンションの一室
富士桜サチ「ただいま」
怪人デストロイヤー「...」
富士桜サチ「2皿あるけどもしかして私の分も作ったの?」
怪人デストロイヤー「ちげーよ、2皿とも俺が食うんだよ!!!」
怪人デストロイヤー「ちなみに閉じ込めた腹いせに冷蔵庫の食べ物全部食ったからな!!!」
富士桜サチ「酷いなぁ!」
富士桜サチ「せっかく奏くんのためにケーキ買ってきたのに...」
怪人デストロイヤー(お、俺のために?)
富士桜サチ「もう知らない!あげないから!!」
怪人デストロイヤー「あ、待て、わ、悪かったよ」
富士桜サチ「ならオムレツ1皿と交換しようね〜」
怪人デストロイヤー「お、おう」
  世間を騒がせていた怪人デストロイヤーはその日を境に街には現れなくなった。

コメント

  • 時間が経っても姿が変わっても再び結びつく二人の運命の赤い糸はどれだけ強いんだろう。最後は急にラブラブの同棲カップルみたいになってて笑っちゃいましたが、ホッとしました。

  • 彼女は怪人に自分の姿を捧げてまでも初恋の彼にあいたかったのですね。誰からも愛されず孤独で危険な彼を彼女の大きな愛が救ってくれてよかったです。すでに二人の間に温かい風が吹いているのを感じます。

  • 途中まですごく切ないお話だな、と思って読んでたんですが、ラストはキュンキュンしました!
    初恋の人なら会いに行かなくてはですね!
    彼女の一途さがすごく好きです。

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