エピソード36(脚本)
〇城の会議室
ロク「あなたがリドル・ネリアル氏を殺害した犯人ですね? ハルソン・ゼプファンさん」
僕とジョマは、昼間のアカデミーの一室で、ハルソン・ゼプファンを前にして、そう告げていた。
周りに人はいない。人が死んだという事で、アカデミーは休講になっているらしい。
でも教諭たちは、研究のためにアカデミーに来ているのだから、研究者は逞しい。
ハルソン「何を言っておられるのです?」
心底訳が分からないという感じで応じるハルソン。僕は少しだけため息をつく。
ここですぐさま自白してくれれば簡単だったけど、さすがにそれはありえない事だった。
ジョマ「嫉妬に狂って、あなたが殺したんでしょうが!」
我慢出来なくなったように、ジョマが声を荒げる。ヒートアップが早すぎないだろうか。
そのセリフとテンションは終盤位に出る物では。
ロク「ジョマ、落ち着いて」
僕はジョマの肩に軽く手を置く。一応それでわかってくれたのか、ジョマは少し不満そうに、一歩引いた。
ハルソン「殺したというのは?」
やっぱりわからないという感じで、ハルソンは聞いてきた。こういう態度をとられると、間違っていないか少し不安になってくる。
僕は自分を信じて、一度息を吐くと、ハルソンを見据え口を開いた。
ロク「僕はあなたがネリアル氏を魔法を使用して、殺害したと考えています」
ハルソン「は? 魔法? 魔力紋は残っていたんですか? 彼の遺体に、私の魔力紋が」
至極真っ当なハルソンの返答。魔法を使用すれば魔力紋が残る。誰もが知っている常識だ。
ロク「魔力紋は残っていませんでした、その周辺にも一切・・・・・・誰の魔力紋も一切ありませんでした」
ハルソン「では、私ではないし、そもそも不慮の事故では?」
ロク「・・・・・・魔力紋が残らない例外があるのは知ってますか?」
自分の問いかけを無視された形のハルソンは、少し不機嫌そうにした後、僕の問いかけに答える。
ハルソン「魔法によって作り出された物以外、例えば、何かを操った場合、操った物に魔力紋は残り、それ以外には魔力紋は残りません」
ロク「はい、そうです」
僕は一拍おいて、言葉を続けた。
ロク「その例外を用いて、あなたはネリアル氏を殺害したと考えています」
僕の言葉に、ハルソンは少しだけ反応する。体が強張った様に見えたのだ。
的外れではなさそうだと、僕は少し安堵しつつ、言葉を続けた。
ロク「ところで、昔、ハルソンさんは怪事件に巻き込まれていますよね?」
ハルソン「か、怪事件? ・・・・・・あぁ、そうですね、子供の頃ですが」
特殊捜査室事案の過去の事件を、僕は調べた。
過去に原因不明の火事が三件発生しており、そのうちの一件に、ハルソン・ゼプファンの名前が、被害者として載っていたのだ。