エピソード37(脚本)
〇城の会議室
ロク「四十年前に起こった原因不明の火事・・・・・・魔力紋が残っていなかったから、誰かの放火ではないし、」
ロク「家の誰かが魔法で火を起こして、それの不始末で火事になったわけでもない」
僕は説明する様に、ハルソンに言葉をかけた後、ジョマに向かって問いかけた。
ロク「ジョマ、騎士団は結局、この火事の原因を見つけられなかったんだよね」
ジョマ「はい、特殊捜査室はまだなかったですし、あってもたぶん解明は出来なかったんじゃないですか」
ジョマは諦めたように首をすくめた。仕方がない事ではあるけど、それでは頼りなさすぎるなと、僕は少し思ってしまう。
ロク「でも」
そこで言葉を切って、僕はハルソンに顔を向け、続ける。
ロク「あなたは、その原因を突き止めた」
僕の言葉にハルソンは目に見えて、体を強張らせる。僕は構わず続けた。
ロク「あなたは、発火の瞬間を見たのか、納得できずにずっと調べ続けたのかわかりませんが、そうやって原因を見つけた」
三件の火災現場の情報は残っていた。しっかりと魔法で写し取られていたおかげで、火事の原因はすぐにわかった。
ロク「焼け残った現場には、共通の物が残っていました・・・・・・なんだと思います?」
犯人であるハルソンには分かり切っている問いかけ。でもハルソンは僕の問いかけに、答えない。
カタカタと小刻みに震えるばかりだった。
ロク「答えてくれませんか、では正解を言いましょう」
その言葉に、ハルソンは懇願する様に、僕を見つめる。
間違っている事を望んでいるのだろうか。真実に気づいていない事を願っているのか。僕は構わず続ける。
ロク「水の入ったガラスの水差し・・・・・・もしくはそれに類する物です」
過去に起こった謎の火災は、収れん火災が原因だった。
収れん火災というのは、つまり日の光が水の入った物や、鏡に当たって集中してしまい、発生する火事。
虫眼鏡で物を燃やしたりする原理と同じだ。
科学技術が進んだ日本でも、あまり知られていない火災原因。そのせいもあって、日本では一年に何件か、この火災が起こっている。
水の入ったペットボトルを並べている家が多いのも原因だろう。
日本でさえこれだ。おそらくは、この世界ではもっと起こっているのではないか。
魔法ですぐに消したり、騎士団に助けを求めていないケースが多々ありそうだ。
そして、犯人は凶器に日の光を使ったのではと考えた僕は、
異世界人が、日の光に熱がある事を知る機会が、どこかにあったのではと思い、過去の事件を調べた。
そして、ハルソンの名前を見つけた。今回の事件の関係者。しかも、日の光に熱がある事を、認識できるかもしれない事故だった。
ハルソン「そ、それでどうして」
かすれた声でハルソンが言う。僕がすでに真相にたどり着いている事を悟っているのか。
それでも無駄なあがきをするために、ハルソンは続けた。