私立桜田高校演劇部 ~春は舞台で青く色づく~

YO-SUKE

第十一話「勝てる」(脚本)

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〇おしゃれなリビングダイニング
青野沙也加「そういうことだから。 いますぐ来てね。じゃ、よろしく」
  陽菜にかけていた電話を切る。
青野沙也加「お父さん。ギター貸して」
青野雄一郎「へ? まあいいけど」
青野沙也加「ちょっと出かけてくる」
青野雄一郎「今から? もう時間も遅いし──」
青野沙也加「演劇部のみんなもいるから大丈夫」
青野雄一郎「沙也加・・・ずいぶん活発になったな」
青野沙也加「別に、なんにも変わらないし」
  沙也加は駆け足でリビングを出て行く。
青野雄一郎「きっと演劇部のおかげだろうなぁ」

〇花模様
  第十一話「勝てる」

〇湖のある公園
小山内陽菜(この辺りだと思うんだけど・・・大事な話ってなんだろう・・・)
青野沙也加「陽菜~! こっちこっち」
  声のする方に向かうと、沙也加がギターを取り出して何やら準備をしていた。
小山内陽菜「沙也加! そのギターはいったい──」
青野沙也加「まだそんなに上手くないんだ。 だから練習付き合ってほしい」
小山内陽菜「いいけど・・・こんな人通りの多いところでやらなくても」
青野沙也加「いいからいいから。座って」
  陽菜が正面に座ると、沙也加はギターを鳴らし始める。
  それはお世辞にも上手いとは言えず、通行人たちがクスクスと笑った。
青野沙也加「んー。ギターって、このFコードってのが、やっかいだよね」
小山内陽菜「ねえ、恥ずかしいからやめようよ」
青野沙也加「でもギターだって演技だって、恥をかいて上手くなるものじゃない?」
小山内陽菜「・・・・・・」
青野沙也加「良かったら、私のギターに合わせて歌ってくれない?」
小山内陽菜「歌!? そんなの絶対無理!」
海東三鈴「いた~! 沙也加! 陽菜!」
小山内陽菜「三鈴!? なんでここに?」
青野沙也加「三鈴。準備はいい?」
海東三鈴「うん! バッチリ!」
  沙也加がギターを弾き始めると、それに合わせて三鈴が歌い始めた。
海東三鈴「涙が止まらない~♪ 沈黙のメリーゴーランド~♪」
小山内陽菜「! この曲、劇団アジサイの・・・」
海東三鈴「陽菜、この曲好きでしょ?」
  三鈴は大きな動きを入れて、演じるように高らかに歌い続ける。
  三鈴の楽しそうな様子に、徐々に野次馬たちが集まって来た。
通行人「あの子、上手くないけど、なんか楽しそう」
通行人「青春って感じでいいね!」
小山内陽菜「・・・確かに、三鈴も沙也加も悔しくなるくらいに楽しそう」
青野沙也加「だったら一緒に楽しまない? ほら、もうすぐサビだよ」
小山内陽菜「でも私は──」
海東三鈴「時が過ぎれれば~♪」
海東三鈴「・・・って、あれ次なんだっけ?」
青野沙也加「あっ、三鈴歌詞忘れたな!」
小山内陽菜「三鈴のバカ!」
小山内陽菜「あー、もうっ! こうなったら自棄(やけ)だ!」
  陽菜は一歩踏み出し、三鈴の横に並んだ。
小山内陽菜「三鈴、私も歌う!」
海東三鈴「そうこなくちゃ!」
小山内陽菜「空の彼方に~♪ みんなの声が鳴り響く~♪」
通行人「うわっ! 一人増えた! フラッシュモブ?」
通行人「あの子、歌上手いね~!」
  笑顔で歌う陽菜。
  その様子を横目で見て、沙也加と三鈴も微笑んだ。
平井智治「大事なミーティングがあるから来て欲しい・・・って、沙也加さんから電話で言われたんですけどねえ」
摂津亜衣「ずいぶん盛り上がっているようだな」
平井智治「陽菜さんも、楽しそう」
摂津亜衣「全ては沙也加の計画通りって感じか」
平井智治「せっかくだから、僕らも混ざりましょうよ」
摂津亜衣「え? 待て。私、歌は苦手で──」
  智治が三鈴たちのところに駆け出す。
摂津亜衣「あー! もう知らん!」
  亜衣もつられるようにして、皆の元に駆け出した。

〇生徒会室
  翌日。沙也加たちは部室で台本の読み合わせをしていた。
小山内陽菜「遅れてごめん!」
  陽菜が席について台本を取り出す。
海東三鈴「陽菜・・・その台本──」
  陽菜の台本は、読み込まれてボロボロになっていた。

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