第四話 魔女の館(脚本)
〇白
〇立派な洋館
「わっ!!」
トンネルを抜けると、突然目の前に、豪華な西洋風の屋敷が現れる。
アヤメ「さあ、お入りください」
〇養護施設の庭
天羽春乃「おじゃましまーす♪」
庭園に足を踏み入れる。
天羽春乃「お庭キレーイ! ひろーい!」
アヤメ「お茶とお菓子を用意してあります。あちらのテーブルにどうぞ」
〇華やかな裏庭
春乃たちは、庭園内にある丸テーブルを囲う。
アヤメ「さあ、フレデリック・カッセルのクッキーをどうぞ」
天羽春乃「すんごくおいしい!」
アヤメ「アッサムティーでございます」
岩崎弥生「ど、どうも・・・」
天羽春乃「コクコク。紅茶もおいし~!」
アヤメ「ミルクもございますよ」
ラック「おお、すまんな」
ラック「ぺロペロ・・・こりゃ、最高級のミルクだぜ!」
アヤメ「ただいま、主人を呼んでまいります」
岩崎弥生「あの、このお屋敷っていったい・・・」
ノワール「ガルルル・・・」
ラック「お! なんだこの犬コロ!!」
天羽春乃「かわいい、ワンちゃん♡」
ラック「おれたちにケンカ売ってんのか!!」
ディアナ「思いがけないお客様は大歓迎よ」
ディアナ「この子のことは許してあげて。あなたたちが珍しいだけなの」
ディアナ「ノワール、あっちで遊んでなさい」
ノワール「クゥーン・・・」
聞き分け良く駆け去っていく。
ディアナ「いらっしゃい。私がここの女主人のディアナよ」
ディアナは、目を疑うほどの妖艶な美女だ。
優美な貴婦人といった雰囲気でありながら、その豊満な胸を惜しげもなく披露している。
天羽春乃「すごくキレイな人! あたし、天羽春乃っていいます♪」
ディアナ「あなたも可愛いわよ。何年生かしら?」
天羽春乃「大安学園の五年生です。こっちの岩崎弥生ちゃんも同じクラスなんですよ」
天羽春乃「そうだ、ここの入口はどうなってるんですか?」
ディアナ「クシュン! あら、失礼・・・」
ディアナ「オーソドックスな結界の魔法よ。驚かせてしまったんなら、ごめんなさい」
天羽春乃「けっかい・・・??」
ディアナ「外からは決してこの空間の存在に気づけないし、私の許可なく出入りすることもできないわ」
ディアナ「完璧なカモフラージュよ」
天羽春乃「ディアナさんは魔法使いなんですか?」
ディアナ「ええ。そういうあなたにも、魔力があるようね」
天羽春乃「はい! あたしも魔法少女なんです!」
ディアナ「フフッ・・・ とても素敵な出会いだわ」
岩崎弥生「あの! わたしたち、この写真の千尋という子を探してここまで来たんです!」
岩崎弥生「この子はわたしの妹で、もう八日も前から行方不明なんです!」
天羽春乃「玉ちゃんも、この家のあたりを指したんです。心当たりはないですか?」
ディアナ「フフッ、あるわよ」
岩崎弥生「本当ですか!? いったいどこで!?」
ディアナ「この屋敷の地下牢よ」
ディアナ「さらってから、ずっと閉じ込めてあるの。可愛い子よね」
「ええーーっっ!!!!」
〇牢獄
岩崎千尋「う、うう・・・」
〇華やかな裏庭
ラック「やっぱり魔女か!!」
ディアナ「その通りよ。魔女なんだから、子供をさらうのはあたりまえでしょ」
ディアナ「穢れのない子供を偉大なるサタン様に捧げれば、その見返りとして、さらに魔力を高めてもらえるんだから」
天羽春乃「えっ、ずるい!!」
ラック(変態の猟奇犯罪者じゃなかった・・・)
ラック(まさか誘拐犯が、よりによって魔女とは。 最悪の事態だぜ)
ディアナ「それにしても、なんて幸運かしら」
ディアナ「生贄の子の姉が、むこうから来てくれるなんて」
ディアナ「それも、妹と同じくまだ穢れを知らない姉がね」
ディアナ「姉妹の生贄は貴重なものよ」
ディアナ「同時に生贄にすれば、一人のときの何倍もの魔力を得られると伝えられてるわ」
天羽春乃「あの・・・子供をいじめるのは悪いことだから、やめたほうがいいと思います」
ディアナ「ホホ、面白い子ねえ」
ディアナ「魔女である私を目の前にして、そんな悠長な態度をとっていられるなんて」
ディアナ「腕輪も持ってないくせに」
天羽春乃「え? 腕輪って?」
ディアナ「ちょっと、子猫ちゃん。 あんた、ちゃんとこの子の教育してるの?」
ラック「いいか、春乃。魔女っていうのは、魔法少女にとっての天敵なんだ」
天羽春乃「え? そうなの!?」
ラック「天使の力を授かった魔法少女と、悪魔と契約した魔女は、まったく真逆の存在だ」
ラック「光と闇。正義と悪。人々を幸福にする使命と不幸にする使命──」
〇炎
ラック「天界と魔界の代理戦争。殺るか殺られるか。仁義なき戦い──」
ラック「文明始まって以来。いや、太古の時代から激烈な戦いを繰り返してきた──」
〇華やかな裏庭
ラック「それが魔法少女と魔女の関係だ!!」
天羽春乃「そうだったんだ~!」
ディアナ「そういうこと。見るからにカモな獲物が迷い込んできたんだもの、仕留めない手はないわ」
ディアナ「私はね、〝魔法少女狩り〟が趣味なの」
ディアナ「なんの得にもならないけど、気分がスカッとするからね」
ディアナ「あんたたちの〝頭の中がお花畑〟な感じって、本当に癪に障るから!!」
天羽春乃「ひ、ひどい・・・」
ラック「甘く見るな!! おれたちだってむざむざやられたりは──」
ディアナ「あら? どうかしたかしら?」
ラック「なんだ!? 体が痺れて・・・!」
天羽春乃「あ、あたしも・・・!」
岩崎弥生「わたしもです・・・!」
ディアナ「うかつねえ、飲み物の中に特製の痺れ薬を入れておいたのよ」
ディアナ「もう勝負はついたようね」
弥生が気を失い、椅子からバタリとくずれ落ちる。
天羽春乃「弥生ちゃん!!」
ディアナ「フラマ スフェラー!」
ディアナが呪文を唱えると、空中に火炎球が現れる。
ディアナ「あなたたちは、今すぐ丸焼きにしてあげるわ」
天羽春乃「リャ、リャバイ・・・!!」
天羽春乃「ピャピャリリュ ミャクテ・・・」
天羽春乃(ダメだ、舌が痺れて呪文が唱えられない)
ラック「春乃、おれたちは魔力のおかげでまだ動けるみたいだ。走れるか?」
天羽春乃「にゃ、にゃんとか!」
ラックが飛び出し、ディアナに近づく。
ディアナ「あ・・・」
ディアナ「クシュン! クシュン!」
ラック「やっぱり猫アレルギーか!」
集中力を欠いたせいで、ディアナは火炎球を操れなくなってしまう。
ラック「今だ、春乃! 出口にむかって走れ!!」
天羽春乃「れも弥生ちゃんぎゃ!!」
ラック「後で助けにもどる。今は、おれたちだけで逃げるんだ!!」
天羽春乃「りゃかった!!」
春乃たちは、ヨタヨタとよろめきながら、出口にむかって駆けだす。
ディアナ「言ったでしょ、おバカさん」
ディアナ「私の許可なくこの敷地を出入りすることはできないわ、クシュン!」
ディアナ「クシュン、あら!?」
春乃たちは、あっさりと結界をすり抜けて脱出してしまう。
〇黒
〇村に続くトンネル
天羽春乃(あ、帰ってこれた)
ラック「上着のポケットの中を見てみろ」
天羽春乃「にゃに? ゴソゴソ・・・」
天羽春乃「ありぇ? へぇんなものが入ってりゅ」
ラック「魔法のカードキーだ。そいつでここを出入りできるらしい」
ラック「メイドが持ってたのを、失敬しておいてよかったぜ」
天羽春乃「きょれからどうするの? 弥生ちゃんまりぇ捕まっちゃって・・・」
ラック「とにかく、あとの話は帰ってからだ。グズグズしてたら、あいつのクシャミも治まっちまう」
春乃たちは、森の出口にむかってヨタヨタと駆けだす。
〇黒
つづく・・・
次回予告
第五話 天使の贈り物
またみてね!
まさか魔女の仕業とは…。
失踪事件は魔法少女の天敵である魔女の仕業だったのか。
館に取り残された友人を救えるか。続き待ってます。
ワクワクしますね