特異地蔵譚

わらやま

募集 酒盛り地蔵 オムニバス(脚本)

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〇工事現場
おじいさん「うう・・・」
おじいさん「暑い・・・」
おじいさん「肉体労働をやっていい暑さではないぞ・・・」
おじいさん「こんな日は一杯やりたいが・・・」
おじいさん「カネがない・・・」

〇警察署の食堂
おじいさん「B定食!!」
おじいさん「ふぅ、やっと昼飯じゃあ」
水島 浩明「なぁ、じいさん!!」
おじいさん「水島!!どうしたんじゃ!?上機嫌じゃのぅ!?」
水島 浩明「実はよぉ、いい店見つけてさぁ。 今日は飲みに行こうぜぇ」
おじいさん「誘いは嬉しいが・・・ ワシは今金欠でのぅ・・・」
水島 浩明「そこは心配いらねぇよ、なんてったってそこは『原価BAR』だからよ!!」
おじいさん「原価BAR・・・ あれってよく聞くが・・・ 本当に原価なワケがないじゃろ」
水島 浩明「と思うじゃん」
水島 浩明「俺が行った『SAKAMORI』はガチで安いんよ」
水島 浩明「まぁ、なんなら今日はオレの奢りでいいから、じいさんも来いよ」
おじいさん(あ、あの守銭奴の水島が・・・ 奢るじゃとぉ!!)
おじいさん(これは・・・本当に激安なんじゃろなぁ)
おじいさん「そこまで言うなら、行こうかの」
水島 浩明「キマリだな!!」

〇シックなバー
おじいさん「あんまり賑わっとらんのう」
水島 浩明「まぁ、出来たばっかりだからよ」
水島 浩明「とりあえずこれがメニューだ」
おじいさん「どれどれ」
  生ビール 100円
  ウィスキー 150円
  日本酒 150円
  ・・・
おじいさん「な・・・」
おじいさん「安すぎるじゃろぉ!!」
水島 浩明「驚くよなぁ」
おじいさん「うーん・・・ 分かったぞ!!量が少ないんじゃろ!!」
水島 浩明「ま、見てろって!!」
水島 浩明「おやっさん!!」
おやっさん「あいよ!!」
水島 浩明「生ビール2つ!!」
おやっさん「生2つね!!ありがとさん!!」
おじいさん「今の人が・・・」
水島 浩明「ああ、ここの店長のおやっさんだ」
おやっさん「はい、どうぞ!!」
おじいさん(な、普通の中ジョッキ!!)
水島 浩明「ほらな!!量も申し分ないだろ!!」
おじいさん「じ、じゃが問題は味じゃわい!!!!」
おじいさん「この喉越し!!スッキリとした味わい!! まさにピルスナーの極地!!」
おじいさん「むちゃくちゃ美味いぞ!!」
水島 浩明「だろ?それがココの凄いところよ」
水島 浩明「当然だが、他の酒も絶品だぜ!!」
おじいさん「うぉぉぉ!!赤ワイン2つ!!」
水島 浩明「おいおい、オレの分も勝手に頼むなよな・・・」
  結局この日は2人で10杯以上注文
  会計は2000円だった

〇古いアパートの一室
  翌日
おじいさん(昨日のあの店・・・ サイコーじゃったなぁ・・・)
おじいさん(今日・・・1人で行ってみるかの)

〇シックなバー
おじいさん「今日は結構混んでるのう・・・」
おやっさん「あ、いらっしゃい!!」
おやっさん「ん、お客さん!?昨日も来てくれてたよね!?」
おじいさん「そうですじゃ」
おじいさん「気に入ってしまってのう」
おやっさん「そ、そりゃあありがたい!! ちょっと今日は忙しいからあんまりかまえないけど!!」
おじいさん(・・・忙しそうじゃのう)
おじいさん「オレンジサワーをいただこうかの!!」
おやっさん「あいよ!!」
おじいさん(しかし、この店・・・)
おじいさん(おやっさんしか従業員がおらんのじゃろうが・・・)
おじいさん(よく回せてるのぅ・・・)
おやっさん「はいよ!!オレンジサワー!!」
おじいさん「それに・・・出てくるのも早いんじゃよなぁ・・・」
おじいさん「では、いただきますじゃ」
おじいさん「ん?」
おじいさん「なんかアルコールが薄いのう・・・」
おじいさん「オレンジサワーはこんなもんなんじゃろうか・・・!?」
おじいさん「この薄さじゃといっぱい飲めてしまうぞい・・・」
おじいさん「オレンジサワー追加で!!」
おやっさん「あ、はいよ!!」
おじいさん(まぁ、100円じゃからなぁ・・・ 文句もないんじゃが・・・)
おやっさん「はいよ!!オレンジサワー!!」
おじいさん「相変わらず早いんじゃが、アルコールが薄かったら・・・」
おじいさん「ぬおっ!!」
おじいさん「こ、今度はストロングな味わいじゃ!!」
おじいさん「アルコール濃度にだいぶばらつきがあるのう・・・」

〇シックなバー
  2時間後
おじいさん「ういー、すっかり酔っ払ってしまったわい」
おじいさん「さて、トイレに行こうかのう」

〇体育館の裏
おじいさん「んー?なんじゃここは? 店の外に出てしまったわい・・・」
おじいさん「どこぞで道を間違えたかのう・・・?」
おじいさん「ん!?」
おじいさん「アレはおやっさんと・・・地蔵!? 営業中に何をやっとるんじゃ!?」
おやっさん「ビール2杯!!」
おじいさん「な・・・!?」
おじいさん「おやっさんが拝んだらビールが出てきたじゃと!?」
おじいさん「お、おやっさん!! コレは一体どういうことじゃ!?」
おやっさん「な、な、アンタ!? なんでこんなところに!? スタッフオンリーの看板があっただろ!!」
おじいさん「そんなことより今のは一体なんだったんじゃ!?」
おやっさん「うっ・・・」
おやっさん「わ、わかった、わかった、後でワケを話すから閉店まで待っててくれ!!」

〇シックなバー
  閉店後
おやっさん「さて、アンタに見られた地蔵の件なんだが・・・」
おやっさん「実はウチの店で出してる酒は全部あの地蔵の力で作られているんだ」
おじいさん「なんじゃと!!」
おじいさん「では、さっきのアレは・・・」
おやっさん「ああ・・・あの地蔵の前で、オーダーを言ってから拝むと」
おやっさん「頼んだ酒が出てくるって仕組みよ」
おじいさん「そんなバカな・・・」
おじいさん「じゃが、だからこそ、この金額で商売が成り立っているというワケじゃな」
おやっさん「・・・そうなんだ」
おやっさん「すまんが、この事は内密にしてもらえないか!?地蔵から出ている酒って分かったら誰も寄りつかなくなっちまう」
おじいさん「・・・」
おじいさん「よいぞ」
おやっさん「本当か!?」
おじいさん「ただし・・・交換条件じゃ」
おじいさん「今後ワシの会計はどれだけ飲んでも0円にしてくれい」
おやっさん「なっ!?」
おじいさん「ココは『原価BAR』・・・じゃろ?」
おじいさん「ワシには原価で提供するんじゃ」
おやっさん「うぐぐ・・・」
おやっさん「・・・分かったよ」
おじいさん「ヨシ!!決まりじゃな!!安心せい、約束は守るぞ」
おじいさん「また来るぞ」
おやっさん「まぁ、仕方ないか・・・」

〇シックなバー
おじいさん「生ビール3つ!!」
おやっさん「・・・はいよ」

〇シックなバー
おじいさん「日本酒とウィスキー!!」
おやっさん「・・・はいよ」
  おじいさんはタダなのをいいことに、毎晩のように通いました
おじいさん「原価BAR・・・最高じゃぁぁぁ!!」

〇シックなバー
  ある日
おじいさん「今日は満席じゃなぁ・・・」
おじいさん「まぁ、タダじゃなくても安いからのぅ」
おじいさん「おやっさんも忙しそうじゃわい」
おじいさん「頼んだビールもなかなか来ないしのぅ」
おじいさん「そうじゃ!!」
おじいさん「自分で地蔵に頼めばいいんじゃ!!」

〇体育館の裏
おじいさん「さて、たしかおやっさんは・・・」
おじいさん「生ビール1つ!!」
おじいさん「お願いしまぁぁあす!!」
おじいさん「うぉっほっ」
おじいさん「本当に出てきたぞ!!」
  な、何やってんだぁ!?
おじいさん「おう、おやっさん!!」
おじいさん「どうしたそんな血相変えて」
おやっさん「な、なに勝手に酒盛り地蔵を使ってるんだ!!」
おやっさん「それは取り扱いが難しいんだぞ」
おじいさん「難しいって・・・ 普通に出てきたぞ」
おやっさん「そ、それは拝んだ角・・・」
おじいさん「もう我慢出来ん!!いただきまぁす!!」
おじいさん「ピ・・・」
おじいさん「ピギャァァァァァァ」
おやっさん「おいアンタ!!大丈夫か!?」
  ペロッ
おやっさん「ぐっ・・・ほぼ100%のアルコールだ・・・」
おやっさん「酒盛り地蔵は拝んだ角度の度数に応じたアルコール濃度で酒を出すから」
おやっさん「扱いが難しいってのに・・・」
おやっさん「全力で拝んだな・・・」
おやっさん「そんなことより救急車だ!!」

〇病室のベッド
おじいさん「すまんな・・・迷惑かけた・・・」
おじいさん「タダより高いものはなかったわい・・・」
おやっさん「いやまぁ、注意事項を伝えてなかったオイラも悪かったよ」
水島 浩明「いやいや、事情は聞いたけど、じいさんが悪いだろ」
水島 浩明「じいさんのせいで『SAKAMORI』も休業中だしな」
おじいさん「そうか・・・すまんかった」
おやっさん「まぁ、遅かれ早かれ無理があったんだよな・・・」
おやっさん「結構アルコールの濃さがバラバラって事でクレーム入ってきていたし・・・」
おやっさん「微調整が難しすぎんだ・・・」
おじいさん「その事についてなんじゃが・・・」
おじいさん「入院中にいい事を思いついてな・・・」
「ん!?」

〇廃ビルのフロア
  一ヶ月後
おやっさん「エタノール100リットル」
おやっさん「お願いしまぁぁぁす!!」

〇綺麗な会議室
水島 浩明「我が社『GENKA』にお任せいただければ」
水島 浩明「安定して安価な業務用アルコールを販売可能です」
取引先役員「いやぁ、本当に安いよ!!」
おじいさん「ワシらは顧客の皆様の笑顔のために商売してますからな」
おじいさん「”原価”でやらさせてもらってますわい!!」
取引先役員「いやいや、ホントにそれくらい安いよ!! 品質も高濃度で安定しているし・・・」
取引先役員「是非契約させてくれ!!」
「ありがとうございます!!」

〇個別オフィス
  おじいさんは微妙な調整が難しいのなら
  いっそのこと振り切ってほぼ100%の業務用アルコール製造をすることを提案
  これが大当たりし、3人は有限会社『GENKA』を発足
  もちろん原価はタダなため・・・
水島 浩明「儲かってしょうがないぜ!!」
おじいさん「タダでは転ばんぞぉ!!」
おやっさん「今日も飲みに行くかぁ!!」
おじいさん「そうじゃなぁ、原価・・・」
おじいさん「とはかけ離れた金額で酒を提供する超高級店で酒盛りじゃああ!!」
「おう!!!」

次のエピソード:募集 オーデュボン地蔵 対策課

コメント

  • 珍しくハッピーエンド!
    今のご時世なら、手指の消毒向けも作れそう…
    そして売れそう…!

  • おじいさんの業突く張りぶりから、こりゃあ今回はマジで酷い目に合うに違いないぜ!と思ってたらまさかのハッピーエンド。お地蔵様も深すぎる御辞儀を毎回して貰えて言うことなし!?😂
    御辞儀の角度✕アルコール度数とはナイスアイデアですねぇ!面白かったです!

  • どうせあれでしよ、途中でメチルアルコールが出てきて大変な目に…まさかのハッピーエンド!?
    たまには楽しく終わるのもいいですね(まぁこの世界の住人だもの、火事になって地蔵もろとも会社を失う未来が見えます)

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