エピソード34(脚本)
〇洋館の一室
それから、僕たちはああでもない、こうでもないと議論を交わしたけど、結論は出なかった。
レストルアは、これ以上、自分の仕事を放っておけない、という事で帰っていき、僕とジョマだけになった。
ジョマ「むずかしいですねぇ」
座ったまま腕を組んで、ため息まじりで吐き出す様に言うジョマ。
そろそろ頭が限界なのか、集中力が無くなっているようにも見える。かなり頑張った方だろう。良く知恵を出してくれた。
ロク「ジョマは休んでて」
僕は立ち上がって、口を開く。先ほどレストルアからもらった現場情報の巻物を、机に広げた。
ジョマ「ロクはどうするんですか?」
ロク「現場をもう一回見ようと思って」
それだけ言って、僕は巻物に手をかざして魔力を込める。すぐに現場の光景が目の前に広がった。
〇ファンタジーの学園
ロク「何かないだろうか」
ネリアル氏の黒焦げの遺体を、僕は眺める。
遺体はある程度観察したつもりだったけど、その時、気付かなかった事があるかもしれない。僕は遺体のそばで腰をかがめる。
「私も、手伝いますよ」
不意に後ろからジョマの声が聞こえて、次の瞬間には、ジョマは僕の隣で同じように腰をかがめていた。
ロク「休んでいれば良かったのに」
僕の言葉に、ジョマは不敵に笑う。
ジョマ「魔力紋を調べる事もできないでしょう、ロクは」
痛い所を突かれた。僕はまだ魔力紋をはじめとした、検査を習得できていない。
この世界に来て、まだそれ程経っていないのだから、仕方がない事ではあるのだけど。
ロク「そう・・・・・・だね、ありがとう」
僕が発したお礼の言葉に、ジョマが二ヒヒと、照れ笑いを浮かべる。
頼りたくない訳ではないけど、自分でもその辺の魔法を習得すれば便利だろうな。
それに、この世界は、死亡推定時刻とかも知られていないだろう。
その辺も検査できるように、魔法を調節する事が出来れば、役に立つ。
今回はたまたま発火の瞬間を目撃されていたから、死亡した時間は確定していたけど、
そうではない場合もこれから出てくるだろうし。
ロク「この事件が終わったら、魔力紋を調べ方を教えてよ」
僕が言うと、少し申し訳なさそうにジョマが口を開く。
ジョマ「・・・・・・バタバタしてましたけど、本当は最初に、そういう基本は習得してもらう物なんでしょうけど、出来ていませんし」
ジョマ「・・・・・・そうですね、やりましょう」
ジョマが頷いたのを見て、僕も頷いてから、声を出す。
ロク「じゃあ、そろそろ、目の前の事件に集中しないと」
僕はネリアル氏の遺体に視線を戻した。何か見落としていることは、無いだろうか。