エピソード31(脚本)
〇洋館の一室
レストルア「この書類も魔力紋で反応します・・・・・・魔力紋が登録された騎士団の人間しか見れません」
なかなかセキュリティが高い仕様である。理論的には、不正閲覧は出来ないのではないか。
ロク「・・・・・・そういえば、僕の魔力紋って、登録されてるの?」
登録作業をした覚えはない。僕の疑問に対して、レストルアは思いついたようにして、答えてくれる。
レストルア「昨日、詳しく説明するタイミングを逃しましたが」
ジョマに一瞬だけ視線を向けたレストルア。僕は昨日の酒場での事を思い出す。
ジョマが突っかかってきたせいで、説明が出来なかったらしい。
すぐに視線を僕に戻して、レストルアは言葉を続けた。
レストルア「給金の手続きの際に、魔力紋が登録されます」
ロク「なるほど」
あの時の魔法陣が、そういう役割を担っていた。そういえば、すべて完了しますというのはそういう事か。
レストルア「納得したようなので、続けます」
そう言いながら、レストルアは魔法陣に魔力を込めた手をかざす。
レストルア「同じようにしてみてください」
僕は言われるがままに、手に魔力を込めて、魔法陣を触る。
ロク「うわっ」
〇ファンタジーの学園
驚いて声をあげてしまった。突然、浮遊感を感じて、そのすぐ後にアカデミーの見慣れたあの現場に降り立つ。
レストルアが隣に立っていた。僕は本当に、その場にいるような感覚に陥る。でも、違う筈だ。
ネリアル氏の遺体がそこにある。すでに片付けられているのだから、ありえない。
それに、レストルアが先に魔法陣を触ったけど、魔法陣に吸い込まれたりしていなかった。
ロク「・・・・・・現場記録というのはこういう事か」
簡単に言ってしまえば、ヴァーチャルリアリティの様な物らしい。
いや、精神だけで、魔法で写し取られた現場に来ているという方が正しいか。
レストルア「理解できたみたいですね」
微笑んだレストルアが訊ねてくる。僕が頷いて返すと、レストルアは言葉を続けた。
レストルア「お察しの通り、ここは魔法で現場を写し取って再現された魔法空間です、」
レストルア「本来なら報告書なので、現場以外の情報もひとまとめになっています」
ハウンドは情報収集しないはずだから、報告書といっても、大した情報は追加されないだろう。レストルアは続ける。
レストルア「ハウンドが到着した段階の現場を、そのまま切り取っています、残っている魔力紋も含めてです」
僕の疑問を先回りする様に、答えてくれる。これなら、その時気付かなかった物も、あとから気付く事ができる。
とても便利な技術だ。
写真やビデオより遥かに役立つと思う。これなら、写し手の意思は関係ないだろう。
写す人がなんとも思わなかったものは、写真や映像なら、スルーされる恐れがあるけど、それがないという事だ。
ロク「これは助かるよ、ありがとう」
レストルア「いえ・・・・・・出ましょうか、ロクの要件を聞きましょう」