君の瞳は100万ポンド

結丸

籠の中(脚本)

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〇古民家の蔵
西園寺 天音「ここが、西園寺家の・・・」
西園寺 丞「ああ。 宝物庫だ」
西園寺 天音「でも、その割には何もないような・・・」
西園寺 丞「別の場所に移してあるからな」
西園寺 天音「ふうん・・・」
西園寺 丞「天音。 私は、次の当主にお前を指名したいと 考えている」
西園寺 天音「当主にって・・・ええっ!? 禮おじさまの間違いなんじゃ──」
西園寺 丞「アイツはダメだ。 心がない」
西園寺 天音「心・・・」
西園寺 丞「本来であれば、慎が── 天音の父親が次の当主になるはずだった」
西園寺 天音「・・・死んじゃったもんね」
西園寺 丞「順当にいけばお前が言うように禮が当主だ。 だが、私は心の無い者に西園寺の宝を 託したくない」
西園寺 丞「西園寺家に代々伝わる絵画、刀剣、美術品の 数々・・・ それらを手放さず、守ってほしい」
西園寺 丞「美しいものを美しいと感じられるお前だからこそ、託したいんだ」
西園寺 天音「おじいさま・・・ 私、そんな大切なお役目が務まるかしら」
西園寺 天音「家の鍵だって失くしちゃうのに、 宝物をまもるなんて・・・」
西園寺 丞「ははは、大丈夫だ。 失くす心配のない、お前にしか持てない鍵を 作るから」
西園寺 天音「私だけの・・・鍵?」

〇貴族の部屋
西園寺 天音(そうして、おじいさまは私の瞳── 虹彩認証でしか開かない鍵を作った)
西園寺 天音(・・・なのに・・・)
西園寺 天音「ごめんなさい、おじいさま・・・ 私、約束を守れなかった」
  ドアをノックする音が聞こえ、
  天音は慌てて目元を拭った。
西園寺 天音「はい」
西園寺 密「よう」
西園寺 天音「密・・・」
西園寺 密「そんな顔すんなよ。 久々に会ったイトコに」
西園寺 天音「・・・何の用?」
西園寺 密「警戒すんなって。 ただ喋りにきただけだ」
  密はソファーに腰を下ろした。
西園寺 密「お前、よく戻ってきたよな。 散々逃げ回ってたのに」
西園寺 天音「悪かったわね、戻ってきて」
西園寺 密「あー、違う違う。 変な意味じゃなくて・・・ほら、氷見って奴」
西園寺 天音「!? どうして氷見さんのことを──」
西園寺 密「オレたちはオレたちで、結構いいセンまで 追いついてたんだぜ?」
  パソコンの画面に氷見の姿が映し出された。
西園寺 天音「・・・!」
西園寺 密「最初は、自分ちを吹っ飛ばすぐらいヤベエ奴と一緒にいるのが不思議だったけど・・・」
西園寺 密「兄貴なら納得だな」
西園寺 天音「・・・え?」
西園寺 密「しっかし、慎おじさんもやるよなー。 結婚前にヨソで子供作っちゃうとか──」
西園寺 天音「待って! どういうこと?」
西園寺 密「え? だから、慎おじさんが──」
西園寺 天音「お父さんのことじゃなくて! ・・・氷見さんが、私の・・・」
西園寺 密「兄貴なんだろ? 腹違いの」
西園寺 天音「・・・!!」
西園寺 天音「そんな・・・」
西園寺 密「天音?」
西園寺 天音「あんたって、いつもそう・・・ 知りたくないことを知らせてくるのよ」
西園寺 天音「お母さんが失踪したときも・・・ お父さんが死んじゃったときも・・・」
西園寺 天音「うっ・・・」
西園寺 密「オレ、そんなつもりじゃ・・・」
西園寺 密「なぁ、天音」
西園寺 天音「・・・何よ」
西園寺 密「卒業したら・・・オレと結婚しよう」
西園寺 天音「・・・は?」
西園寺 密「親父殿の後はオレが西園寺家の当主だ。 オレと結婚すれば、妻であるお前も多くの 遺産を得られることになる」
西園寺 天音「私、遺産が欲しくて逃げてたんじゃない」
西園寺 密「えっ・・・ じゃあ、なんで──」
西園寺 天音「おじいさまは、西園寺の宝物の価値を お金でしか見出せない禮おじさまを憂いて いたのよ」
西園寺 天音「私は、そんな禮おじさまの代わりに・・・ 西園寺家に代々伝わる美術品を守るために 身を潜めてた」
西園寺 天音「・・・成人を迎える18歳まで、そうする つもりだった」
西園寺 密「でも、戻ってきたんだよな。 それってもう、諦めたってこと?」
西園寺 天音「・・・・・・」
西園寺 天音「ただ、守りたかっただけよ。 氷見さんのことを・・・」

〇山道
  一方、その頃──
氷見 怜士(天音・・・ どこ行ったんだよ)
氷見 怜士「!?」
氷見 怜士「・・・どかねぇと、食っちまうぞ」
  イノシシは氷見の殺気に気圧され、
  慌てて逃げていった。
氷見 怜士(天音はこんな山道を1人で・・・)
氷見 怜士(ダメだ、弱気になったら終わる。 とにかく心当たりがある場所を片っ端から 探さないと──)

〇怪しいロッジ
西園寺 天音「どうして、私のこと守ってくれるの?」

〇山道
氷見 怜士(そうか、天音は・・・・・・)
氷見 怜士「・・・行くか」

〇貴族の応接間
  書き物をしていた平瀬はペン止め、
  ふと窓の外に視線を向けた。
平瀬「・・・嫌な天気だ。 これはひと雨来そうな──」
  ドアが開き、くたびれた表情の密が
  入ってきた。
平瀬「密おぼっちゃま、顔色が・・・ ご気分がすぐれないのですか?」
西園寺 密「うーん・・・まぁ、そんなとこ」
平瀬「何か甘い飲み物でもお出しいたしましょうか」
西園寺 密「いや、それより気絶するぐらい 強い酒のほうが──」
「馬鹿者!!!!!!!!!!!!!!!!」
西園寺 禮「未成年が何を言うか」
西園寺 密「えー? だってオレ、もう18だし」
西園寺 禮「飲酒は変わらず20歳未満は禁止だ。 まったく、そんなことも知らんのか・・・」
西園寺 禮「・・・おい平瀬」
平瀬「はい」
西園寺 禮「このバカ息子と話がある。 席を外してくれ」
平瀬「は、はい。 かしこまりました」
西園寺 密「またスーパー説教タイムか・・・」
西園寺 禮「密」
西園寺 密「はい・・・」
西園寺 禮「明日、天音と籍を入れろ」
西園寺 密「・・・・・・」
西園寺 密「・・・え!?」
西園寺 禮「結婚してしまえば天音の鍵はこちらのものだ」
西園寺 密「お、親父殿ぉ・・・ でもオレ、天音に振られちゃって・・・」
西園寺 禮「そんなことは関係ない」
西園寺 密「えっ?」
西園寺 禮「後ろ盾のいない天音が生きる道は、 お前と結婚することだけだからな」
西園寺 密「・・・それじゃ意味がないよ」
西園寺 禮「何?」
西園寺 密「オレは、西園寺家とか鍵とか関係なく、 天音のことが好きなんだ」
西園寺 密「なのに、天音の気持ちを無視してそんなこと 出来ない・・・」
西園寺 禮「・・・ふん。 何を言うかと思えば・・・」
西園寺 禮「安心しろ。 女なんてのはそのうち心変わりする」
西園寺 密「・・・っ」
西園寺 禮「とにかく、籍を入れろ。 いいな?」
  禮はそう言って部屋を出た。
西園寺 密「・・・・・・」
西園寺 密「・・・そんなんだから、母さんは・・・」

〇立派な洋館
  一方、西園寺家の中庭では──
氷見 怜士「・・・・・・」

次のエピソード:決別

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