〇古風な和室（小物無し）
　　もし、ここを抜け出せたら
　　やりたいことがいっぱいある
　　ショッキングな内容の映画を見たり、下品な歌詞のロックを聴いたり
　　友達とライブに行ったり、恋人を作ってデートをしたり
　　身体に悪いお菓子をつまみながら、朝までお酒を飲んでみたり
　　私が持つことを許されなかった欲求を、これでもかと言うくらいに満たしたい

〇田舎の教会
踊り子 フォクシー「・・・」

〇荒廃した教会
踊り子 フォクシー「あっ・・・」
村娘 アリス「やぁ。死んでなかったんだ」
踊り子 フォクシー「・・・逃げ足だけは速いから」
村娘 アリス「教会に何の用？」
村娘 アリス「自分の罪を懺悔しに来たの？」
踊り子 フォクシー「・・・私は別に、何も悪いことしてない」
村娘 アリス「そんなことないよ。みんな、何かしらの罪を犯している」
村娘 アリス「一説によれば、存在することすら罪なんだよ」
踊り子 フォクシー「何それ。誰が決めたのそんなこと」
村娘 アリス「神・・・かな」
村娘 アリス「でも、逆に言えば、神を殺せば罪は罪じゃなくなる」
踊り子 フォクシー「・・・何言ってるの？」
村娘 アリス「何言ってるんだろうね」
村娘 アリス「・・・本ってさ、終わりがあるじゃん」
村娘 アリス「どんな本にも、最後のページがある。表紙があって、ページがあって、きちんと一冊にまとめられている」
村娘 アリス「でもね、永遠を生きる私にとって、本は、本の形をしていなかった」
踊り子 フォクシー「・・・何が言いたいの？」
村娘 アリス「「私は聖書を持たない」ってことかな」
村娘 アリス「“信仰”じゃ何も得られない──ゆえに、私ができることは“叛逆”なんだ」
踊り子 フォクシー「えっ」
村娘 アリス「ねえ、君は神を信じる？」
踊り子 フォクシー「・・・信じるも何も」
踊り子 フォクシー「私は神獣。九尾の狐・・・」
踊り子 フォクシー「今まで隠していたけれど、本当は私、偉い神様なんだよ」
村娘 アリス「・・・そうなんだ。でも、今の君は神様でも何でもない」
村娘 アリス「ただの無力な人間だよ」
踊り子 フォクシー「・・・」
村娘 アリス「んっ」
踊り子 フォクシー「何・・・!?」
村娘 アリス「君も私の眷属に加えてあげる」
踊り子 フォクシー「やめ──」

〇田舎の教会

〇荒廃した教会
アクエリア「穢れた手で触れるな！ 悪魔の末裔！」
踊り子 フォクシー「わっ。アクエリア・・・!?」
村娘 アリス「また会ったね。龍神様」
踊り子 フォクシー「えっ、何で。地上に降りてきて大丈夫なの？」
踊り子 フォクシー「それともやっぱり、ここは人間界じゃないの・・・？」
アクエリア「人間界・・・のはずだったが、イレギュラーが現れた」
アクエリア「こいつの手によって、この場所は今、魔界と化している」
踊り子 フォクシー「魔界・・・」
踊り子 フォクシー「道理で、理不尽なことばかり起こると思ってた。私、魔界に足を踏み入れてたんだ」
村娘 アリス「環境のせいにするのは簡単だよね」
アクエリア「黙れ外道。諸悪の根源たる貴様が何を言う」
村娘 アリス「・・・改めまして、私はヴァンパイアロード」
村娘 アリス「ヴァイオレット・ジギタリス・アリスと申します」
村娘 アリス「この度は龍神様、貴方の信仰をぶち壊しに参上しました」
村娘 アリス「どうかお手柔らかに。そして、私の暇潰しに付き合ってくれると幸いです」
アクエリア「黙れ。身の程を知れ、下等人外が」
アクエリア「・・・龍神化できない」
村娘 アリス「信仰が足りないのではないですか？」
村娘 アリス「貴方を信仰する村の民は私が全員滅ぼしました。人の欲に付け入る教義は、人の欲によって滅びるのです」
踊り子 フォクシー「ねえ、アクエリア・・・」
踊り子 フォクシー「こんな吸血鬼さっさと倒してさ、私を天界に戻してよ」
アクエリア「ああ・・・」
アクエリア「フォクシー、お前は私の可愛い子供だ」
アクエリア「我が子を崖から突き落とすことはあっても、悪魔へ生贄に捧げることはない」
村娘 アリス「貴方に私は倒せませんよ」
村娘 アリス「何故なら、貴方は単なるイメージであって、そこにロジックはない」
村娘 アリス「存在を証明できない」
村娘 アリス「効きません」
村娘 アリス「そんなものじゃ、私の心は潤わない」
アクエリア「強がるなよ吸血鬼。貴様は聖水に弱いのだろう」
アクエリア「私が生み出すのは聖なる水」
アクエリア「私の降らす雨は貴様の魂を浄化するだろう」
村娘 アリス「・・・違う」
村娘 アリス「私たちヴァンパイアは日光を好む」
村娘 アリス「曇り空では存分に力を発揮できない・・・というだけ。水なんかじゃ私は倒せない」
村娘 アリス「・・・」
アクエリア「日光を好むだと!? 滅茶苦茶な・・・」
アクエリア「貴様は吸血鬼の定義を逸脱している。存在を証明できないのは貴様の方だ」
村娘 アリス「うん。だって、私は神じゃない」
村娘 アリス「存在なんか証明しなくても、存在することができる」
村娘 アリス「信仰に依存している、貴方と違ってね」
アクエリア「なっ・・・！」
踊り子 フォクシー「アクエリア！」
村娘 アリス「・・・さて」
村娘 アリス「邪魔者はいなくなった。改めて、私の眷属になってよ」
踊り子 フォクシー「や・・・」

〇田舎の教会
人狼 マーベリック「ガウゥ・・・」

〇荒廃した教会
踊り子 フォクシー「や、やだ・・・」
踊り子 フォクシー「眷属になんてなってたまるか・・・」
村娘 アリス「何で？ 眷属は良いよ」
村娘 アリス「永遠に生きられるし、欲しいものは何でも手に入る。誰にも縛られずに、自分のやりたいことだけできる」
踊り子 フォクシー「・・・」
踊り子 フォクシー「でも・・・」
村娘 アリス「今、揺らいだね。もっと自分に素直になりなよ」
踊り子 フォクシー「・・・君たちは悪だから」
踊り子 フォクシー「悪には・・・なりたくない」
村娘 アリス「悪・・・ね」
村娘 アリス「じゃあ君は何になりたいの？」
村娘 アリス「吸血鬼にも、悪にもなりたくない」
村娘 アリス「なら、何になりたいの？」
踊り子 フォクシー「私は・・・」