君の瞳は100万ポンド

結丸

交錯する想い(脚本)

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〇貴族の応接間
西園寺 禮「・・・で?」
平瀬「天音様がおられたとみられる民家は全焼、 焼け跡からは遺体などもなく・・・」
平瀬「行方も現時点では不明とのことで・・・」
西園寺 密「ワオ、天音すげえじゃん」
西園寺 禮「馬鹿者!!!!!! 感心している場合か!!!!!!」
西園寺 密「お、親父殿ぉ・・・ また血圧上がるよ?」
西園寺 禮「うるさいっ! お前を信じたワシが馬鹿だった」
西園寺 密「そんなこと言わないでよー。 だいたい、いいとこまで追い詰めたんだし?」
平瀬「警官の制服に付けられたGPSに着目される とは、さすがです」
西園寺 密「だよなー」
西園寺 禮「フン、結果的に天音が捕まらないなら 意味がない」
平瀬「は、はぁ・・・」
西園寺 密「でもさ、今回のことでハッキリしたよな。 天音には協力者がいるって」
西園寺 密「しかも、追手を振り払うために家を爆破するぐらいの大胆な人間だぜ?」
西園寺 禮「む・・・ それはワシも考えていた」
西園寺 禮「だが・・・ あの燃えた家と天音に何の関係があるんだ?」
西園寺 密「それ、オレも気になって調べたんだけどさ」
西園寺 密「あの家、もともとは氷見雄策って人の家 だったんだけど・・・ もうその人は亡くなってるんだよね」
西園寺 禮「亡くなっている? では空き家だったということか?」
西園寺 密「いや、その息子が住んでたらしくてさ。 その息子っていうのが──」
  密はデスクトップにあるファイルから
  画像を出した。
西園寺 禮「この男は?」
西園寺 密「氷見怜士。 あの家の持ち主だった、氷見雄策の息子さ」
西園寺 禮「ふむ・・・聞き覚えのない名だが──」
西園寺 密「でも後ろの建物には見覚えがあるだろ?」
西園寺 禮「後ろの建物? ・・・あっ」
西園寺 禮「この大学、父さんが教壇に立っていた 美大じゃないか。 ということは・・・」
西園寺 密「そ。 調べたら教え子だったよ」
西園寺 禮「では、父さんは教え子に天音を守るよう 指示したのか?」
西園寺 密「恐らくね」
西園寺 禮「確かに、父さんの教え子までは調べて いなかった──」
西園寺 禮「いや、だからこそ教え子に託したのか? 我々の手が及ばぬようにと・・・」
西園寺 密「・・・まぁ、それだけじゃないっぽいけど」
西園寺 禮「何?」

〇怪しいロッジ
  一方、その頃──
西園寺 天音「わぁ・・・」
氷見 怜士「じーちゃんが道楽で買った山小屋、 まだ残っててよかった」
西園寺 天音「氷見さんのおじいさまが?」
氷見 怜士「ああ。 こういうのが好きで、わりとあちこちに 建ててたんだ」
西園寺 天音「へぇ・・・素敵ね」
氷見 怜士「管理が大変でほとんどは処分してたから、 もう残ってないと思ったけど・・・」
氷見 怜士「やっぱりここは残してたんだな」
西園寺 天音「やっぱり、って?」
氷見 怜士「ここ、星が綺麗なんだよ。 だからじーちゃんが気に入ってて、俺もよく 遊びに来てた」
西園寺 天音「・・・・・・」
氷見 怜士「天音?」
西園寺 天音「ううん。 氷見さん、あんまりご家族の話をしないからなんだか新鮮だなって」
氷見 怜士「・・・・・・」
西園寺 天音「ほら、すぐ黙るし」
氷見 怜士「あ、いや・・・」
氷見 怜士「それより腹減ってないか? 途中で寄ったスーパーで買ったやつ食おう」
西園寺 天音「・・・氷見さん」
氷見 怜士「うん?」
西園寺 天音「どうして、私のこと守ってくれるの?」
氷見 怜士「どうしてって・・・先生と約束したからな。 お前だってその場にいたんだから知ってる だろ?」
西園寺 天音「それはそうなんだけど・・・」
西園寺 天音「でも、分からないの。 氷見さんがここまでして、私を守ってくれる理由が」
氷見 怜士「理由、か・・・」
氷見 怜士「先生から、十分すぎるぐらいの報酬を もらったから・・・だな」
西園寺 天音「報酬? じゃあ、氷見さんはその報酬があるから 私のことを守ってくれてるってこと?」
氷見 怜士「それ以外にないだろ」
西園寺 天音「そっか・・・ そうだよね、それしかないよね」
氷見 怜士「・・・ああ」
西園寺 天音「ごめんね、変なこと言って・・・ ちょっと疲れてるのかも」
西園寺 天音「部屋で休んでてもいい?」
氷見 怜士「ああ」
西園寺 天音「ありがとう」
  天音は足早に部屋へと入っていった。
氷見 怜士「・・・・・・」

〇簡素な部屋
西園寺 天音(最初は、西園寺家を守るためにも協力して もらわなきゃって思ってたけど・・・)
西園寺 天音(もうこれ以上、氷見さんを巻き込みたくない)
西園寺 天音(だって、私・・・ 氷見さんのこと──)

〇怪しいロッジ
氷見 怜士(今度は、守るって決めたんだ)
氷見 怜士(母さんと父さんのことは守れなかった。 だから・・・)
氷見 怜士(だから、天音のことは──)
氷見 怜士(妹のことは、絶対守ってやりたい。 せめて成人を迎える日までは・・・)

〇貴族の応接間
西園寺 禮「とにかく、あと1ヶ月・・・ それまでに天音の身柄を確保して、西園寺家の遺産を手に入れる」
西園寺 密「別におじいちゃまの遺言を聞く必要なくね? 天音がいないんなら、実質的に親父殿が当主 じゃんね」
西園寺 禮「家だけの話ならな」
西園寺 密「どゆこと?」
西園寺 禮「・・・ワシは鍵を持っていないからだ」
西園寺 密「鍵?」
西園寺 禮「西園寺家に代々伝わる骨董品や美術品の 数々・・・」
西園寺 禮「それら手に入れるためには、天音の持つ鍵が 必要なんだ」
西園寺 密「鍵──って言っても、きっと普通の鍵じゃ ないよね?」
西園寺 密「なんせ、それだけのお宝をしまってある 鍵なんだから」
西園寺 禮「・・・ああ」

〇怪しいロッジ
氷見 怜士「天音、まだ寝てんのか?」
「・・・・・・」
氷見 怜士「・・・まぁ、疲れてるよな」
氷見 怜士「俺も、ちょっとだけ寝ておくか・・・」
  天音の持つ“鍵”は・・・

〇山道
西園寺 天音「はぁ、はぁ・・・」
西園寺 天音(氷見さん、ごめんね・・・)
  天音の瞳こそが“鍵”なのだ──

次のエピソード:籠の中

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