エピソード30(脚本)
〇洋館の一室
さすがに、言い争いは長く続かなかった。冷静になった三人が三様に、気まずい雰囲気を出す。何てアホな事をしていたのだろうか。
大人三人が集まって、バカ、アホ、と低レベルな口喧嘩をしていた。手を出すケンカに発展していないだけ、まだマシだけど。
ロク「ふぅ」
僕は気持ちを切り替えるために、軽く息を吐き出す。何の話をしていたか。
ガラスの加工についてだった。でもその前に、レストルアが訪ねてきた理由を聞いた方が良いだろうか。
ロク「変な事に巻き込んで、ごめんね」
用件を尋ねる前に、僕は一言、レストルアに謝罪する。
レストルア「いえ、取り乱した私も、悪いので」
律儀に、こちらに体を向けて軽く頭を下げるレストルア。
それに比べて、ウチのアホ子は、明後日の方向を向いて腕組み。
ただ、それを指摘して、また不毛な言い争いをするのは愚かな行為だ。僕はグッとこらえて、レストルアに問いかける。
ロク「用件、なんだった?」
レストルア「・・・・・・先ほど言った通り、進捗の確認と、お渡しする物があって」
ロク「渡すもの?」
僕が疑問の声をあげると、レストルアが懐から巻物を取り出す。
レストルア「今回の事案の、現場記録です・・・・・・本来なら、情報をすべて盛り込んで報告書にしますが、」
レストルア「必要かと思い、先に現場記録のみ持ってきました」
レストルアの言葉に、ジョマは鼻を鳴らして「いつもより、随分早いですね」と、独り言のように呟く。
ケンカを、吹っ掛けようという感じではないから、少し安心した。
こう言っては何だけど、ジョマ一人の時は解決できるという期待感が薄かったから、
レストルアも援助に消極的だったのでは、と思ってしまう。
まぁ、これは言わないでおこう。
ロク「ありがとう」
僕は現場記録を受け取り、中身を確認する。中には魔法陣らしきものが描かれているだけで、文字はない。
給金と寄宿舎の使用権利を貰った時に示された魔法陣と、似ている気がする。なんとなく使い方は分かるけど、一応、聞いておこう。
僕は微苦笑を浮かべて、レストルアに問いかける。
ロク「ちなみにこれは、どうなってるの?」
レストルア「・・・・・・そうでしたね、頼りになる物で、ロクが入りたての新人という事を、つい忘れてしまう」
微笑んでレストルアが言った。僕としては頼りになるという言葉は嬉しい。僕も微笑んで返すと、ジョマが鼻を鳴らした。
まだ、ケンカの余韻があるのか、ジョマは不機嫌継続中。
変な事を口走ると、また突っかかって来るかもしれないから、気にしない事にした。
レストルア「これは現場記録、この魔法陣に現場が写し取られています」
レストルア「・・・・・・言葉で説明するより、見てみた方が早いでしょう、机に広げて置いてもらえますか?」
僕は言われた通り、近くの机に、魔法陣が見える様に、巻物を広げて置いた。