エピソード29(脚本)
〇洋館の一室
ロク「一緒に考えようって言ったじゃん!」
ジョマ「だから、私の頭がどこまで役立つかわからないって、言ったでしょうが!」
ロク「確かに言ったけど! 程がある!」
本当に何の役にも立っていない。そもそも、ガラスが熱に弱いという事を、たぶん認識していない。
現代の日本では、どうしてなのかわかってなくても、なんとなく熱に弱いという事は皆が認識していた。
この世界ではみんなこうなのか、ジョマが特別なのか。
ジョマ「う、うるせーです! ばーか! ばーか!」
ロク「バカじゃないし! 少なくともジョマよりは!」
ジョマ「いや、ロクはむしろバカです! ばーか!」
子供がする様な、不毛な言い争いが続く。
「・・・・・・何をしてるんですか」
突然声が聞こえて、僕とジョマはドアの方に視線を向ける。そこには呆れた様子のレストルアが立っていた。
ロク「レストルア、ちょうどいい所に来てくれたよ、僕は君が必要だ」
僕はレストルアに縋る。
レストルア「えぇ?!」
僕の言葉を聞いたレストルアは、少し顔を赤くして、自分の前髪を整える様に撫でる。
レストルア「ひ、必要って・・・・・・そんな」
ロク「必要なんだよ! ダメなんだ、あのアホの子じゃあ」
僕はジョマを指差しながら、レストルアに訴える。それを聞いてジョマが吠えた。
ジョマ「アホの子とか言うなですよ! というか、その発情犬より、私の方がまだ役立ちますぅ」
その言葉を聞いて、今度はレストルアが、ジョマに向かって吠える。
レストルア「発情って! ししししてませんが!」
ジョマ「どうだか! そもそも用もないのにここに来るのが、その証拠ですぅ」
わざとなのかわからないけど、ジョマの語尾がいちいち、癇に障る。
レストルア「用は、あります! 事件の進捗とか、色々確認が必要でしょう!」
レストルアのその言葉に、ジョマは勝ち誇ったように笑った。
ジョマ「墓穴を掘りましたね! 発情犬!」
レストルア「な・・・・・・何がですか!」
少し慌てた様子のレストルア。ジョマがたっぷりと勿体ぶって口を開く。
ジョマ「私一人の時は、様子なんて見に来なかったじゃないですか!」
必殺の一言だったのか、レストルアは口をパクパクとさせながら、結局何も言い返せない。
そのまま、顔を赤くして、俯き気味になる。視線が落ち着かない。
ジョマ「うぇい! 図星ぃ!」
バカにするようなジョマの言葉使いと動き。それに対してレストルアは、意味がよくわからない言葉を返す。
二人は不毛な言い争いを始めた。
いつの間にか僕とジョマのケンカから、レストルアとジョマのケンカにすり替わっている。
蚊帳の外になってしまった僕は、冷静さを取り戻して、不毛な言い争いを見つめた。僕たちは何をしているんだ。
ロク「落ち着いて! 不毛な事はやめよう!」
ジョマ「うるせーです! この、チョーロク・童貞ヤ!」
ロク「なっ、なんだと! このジョバカ・アホソン!」
僕の冷静さは吹っ飛んだ。三人は訳の分からない不毛な言い争いを続けた。