エピソード28(脚本)
〇洋館の一室
ロク「うーん」
朝、特殊捜査室に出勤してきてから、僕は椅子に深く腰掛けて、腕を組み、頭を悩ませていた。
ジョマに、今日はどうするのか問われたのだけど、昨日も考えた通り、
やっぱり、出火の原因を特定して、殺人なのか事故なのかハッキリさせた方が良い。だから、出火の原因を考えているのだ。
ジョマ「ここで考えてて、わかる物ですか?」
不思議そうな顔で、ジョマが聞いてくる。
ロク「うーん、でも現場にいくにしても、何に注目すべきかもわかってないから」
本当に手探り状態。現場を見て、新しい発見があるかもしれないけど、それにしたって、
何通りかの筋読みがあって、それに照らし合わせて、潰していき、その過程で新しい筋読みを閃く、という感じだ。
この状態で見に行っても収穫はない気がする。
ロク「うーん」
自分で考えた事に、疑問が出てくる。もしかしたら、まずは考えてから行動する、という為の言い訳をしているだけなのかな。
何にもわかってない状態で現場を見て、何か発見があるかもしれない。
ロク「はぁ」
僕は少し自分に呆れた。思考が、論点がズレてきている。
ジョマ「考えすぎでは? 発狂しますよ?」
ジョマがあっけらかんと笑う。僕はそれを見て少し吹き出した。
ロク「考えないと、答えは導けないよ」
ジョマ「まぁ、そうですけど」
バツの悪そうにジョマが口ごもる。
ロク「でも、ありがとう・・・・・・少し靄がはれた気がする」
ジョマの笑顔のおかげで、堂々巡りから抜けられた・・・・・・と思う。
もう少し気楽に行こう。一人で抱え込むんじゃなくて、二人で考えよう。その為にジョマは、僕を捕まえたんだ。
ロク「考えを聞いてくれる? 二人で考えよう」
誰かに話をした方が、整理されるというし。
ジョマ「そうですね、私の頭がどこまで役立つかわかりませんが」
少し前に、ジョマに色々聞いた時の事を思い出す。あの時はジョマの方が、ギブアップしたんだった。
ロク「まぁ、話し相手になるくらいに思ってもらえれば」
ジョマ「わかりました」
笑顔で頷くジョマ。心強い。
僕と性格は正反対だし、生きてきた世界がそもそも違うから、僕が思いつかないような事を、思いついてくれるかもしれない。
とりあえず、話の取っ掛かりとして、昨日酒場でガラスのコップを見て感じた疑問を、思い返してみる。
ガラスに限った話ではないけど、加工には熱が必要な場合が多い。
現在なら、魔法で火を起こせばいい訳だけど、魔法技術が発展する前はどうだったんだろう。
ロク「昔、ガラス製品を作る時って、どうしてたの?」
僕の問いかけに、不思議そうにジョマは首を傾げた。いきなりつまづいたのだった。