異世界ベースボール ~フワッとしか知らなかったので、なんだかおかしなルールになりました~

アーム・ザ・コニー・ロト男

第一八話『そんなの決まっているじゃん』(脚本)

異世界ベースボール ~フワッとしか知らなかったので、なんだかおかしなルールになりました~

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〇中世の野球場
実況コカンダ「接触プレイもあり、一時試合が中断となりましたが、マコ選手の平和的解決」
実況コカンダ「クルトガ選手の雷属性の打球にファガ選手がリタイアする中、何とか後続を抑えたハッピーズ」
実況コカンダ「5対0で迎えた、五回の裏。どうやらここでメンバーチェンジが入るようです」
レヴィリック「ファガに変わって、この男を入れる」
謎の男「ふん!」
実況コカンダ「さあバッターボックスに立ったのは・・・メンバー表にある、控えの『マスクマン』という選手でしょうか?」
解説ヒルダ「ええ、顔にマスクを被った正体不明の男ですね」
マスクマン「我が聖剣のサビにしてくてる!」
マコ「ちょっと! 正体がバレるから、しっ!」
マスクマン「おっと、なんでもないぞ! まったく気にするな!」
実況コカンダ「・・・解説のヒルダさん。気のせいでなければ、私は何度も試合実況をしていて、あの方のことをよく知っているのですが?」
解説ヒルダ「さあ、なんのことですか? 私には誰だかわかりません」
実況コカンダ「・・・これはアリなのでしょうか?」
解説ヒルダ「問題はありません。 ヤ・キュウに国境はありませんから」
レオンハルト「まさか、ここであなたと相まみえることになるとは思いませんでした」
マスクマン「誰かと勘違いしているようだが、私はお前が思っているような王子ではない!」
レオンハルト「聖剣を持っていますが?」
マスクマン「とある王子から借り受けた聖剣であって、私は別人である!」
レオンハルト「まあいいでしょう」
実況コカンダ「レオンハルト選手、マスクマンに向かって、第一球を投げた!」
  カキーン
レオンハルト「なっ!」
マスクマン「お前の球筋はすでに見切っている。 小手先の変化球など、我が聖剣の一振りの前では無意味」
実況コカンダ「マスクマン。いきなりの特大ホームラン!」

〇球場のベンチ
ハッピーズベンチ「よっしゃ!」

〇球場のベンチ
クルトガ「タイムだ」
クルトガ「やられたな。というか、ユズハは今のボール、取れたんじゃないか?」
レオンハルト「気まぐれな方ですからね。 今回も突然チームに入れろと言ってきましたし」
クルトガ「大丈夫か?」
レオンハルト「問題ありません。正面からアウトを取れない打者と勝負する必要はない。取れるところから取れば負けはしません」

〇中世の野球場
実況コカンダ「マスクマンの一撃があったものの、後が続かずスリーアウトチェンジ。5対1で迎えた六回の表ですが・・・・・・」
レオンハルト「・・・・・・」
クルトガ「なんだ、これは」
実況コカンダ「な、なんと守備に付いているのが6人しかいません!」
実況コカンダ「一塁に先ほど入ったマスクマン。二塁右にレヴィリック選手。左は空いているが、その向こうに外野に一人で立つパキマビ選手」
実況コカンダ「三塁にヤマクモ選手。ピッチャーはドロシー、そしてキャッチャーにマコ選手が立ちます」
実況コカンダ「この状況に、帝国ベンチからレオンハルト選手がたまらず出てくる」
レオンハルト「なんの冗談ですか? まさか6人でやるつもりですか?」
マコ「そうだよ。見ての通りね」
レオンハルト「ふざけている。こんなのは野球ではない」
マコ「あれ? 知らなかった? これって野球じゃなくて、ヤ・キュウなんだけど? 守備位置も人数も自由、そういうルールだから」
レオンハルト「それで、あなたの身に着けている、その甲冑は?」
マコ「忠告を聞いて、そっちのキャッチャー用の防具を真似て、ビビゼルさんが即興で作ったヤツ。結構様になっているでしょ?」
レオンハルト「まさかドロシーの球を受けるつもりですか?」
マコ「疑うなら見せてあげるよ。ドロシー一球投げて、遠慮なしのヤツだよ」
ドロシー「・・・・・・いくわよ」
  バスン
マコ「うん。問題なし」
レオンハルト「あのボールを・・・受け止めた!」
マコ「ドロシーの球を全力で受けられるし、キャッチャーとしての立ち回りも、もうバッチリだから」
レオンハルト「・・・お手並み拝見といきましょう」
  バスン、バスン、バスン
実況コカンダ「マコ選手のグローブにドロシー選手の剛速球が収まる! 続け様に三球三振! 動揺を隠せないドラゴンズを無失点で抑えた!」
クルトガ「どういうカラクリだ? 今まで実力を隠していたとでもいうのか?」
レオンハルト「あるいは『何か』したんでしょうね?」
レオンハルト「・・・ですが、些細なことです。 僕たちがここから負けるはずがない」
ユズハ「果たしてそうかな?」
レオンハルト「どういうことですか、ユズハさん?」
ユズハ「気づかぬのか? なぜ奴等が人数を絞ったのか?」
レオンハルト「・・・はっ! ま、まさか!」
ユズハ「人数が少ないということは打順の周りも早いということ。奴等、主戦力だけで打順を回し、ここから6人で逆転するつもりだ」
実況コカンダ「6回の裏・ハッピーズの攻撃。守備位置と人数変更に伴い一部打順も変わり、先頭バッターのパキマビ選手がまずは出塁」
実況コカンダ「続くバッターは一番ドロシー選手」
ドロシー「さっきはありがとう、いい勉強をさせて貰ったわ」
クルトガ「? なんのことだ?」
実況コカンダ「さあ、第一球を投げた!」
クルトガ「なっ!」
実況コカンダ「な、なんだこれは! なんと投げられたボールがバッターの目の前で止まった! 文字通り空中で停止している!」
クルトガ「き、貴様!」
ドロシー「バッターが魔法を使うのもアリよね。さて、球も止めたし、強化魔法でパワーアップして特大ホームランをお見舞い・・・」
ドロシー「! くっ!」
実況コカンダ「? 何か様子がおかしい! 空中で停止したボールが今度はプルプル震え出したぞ!」
ドロシー「あ、アンタ!」
クルトガ「バッターが魔法を使うならキャッチャーが魔法を使わない言われはないな」
実況コカンダ「どうやら空中でボールを停止させたドロシー選手とボールを引き寄せようとするクルトガ選手の魔法がぶつかっているようです」
実況コカンダ「な、なんと破滅の大魔女と帝国の賢者との魔法対決が行われているようです!」
解説ヒルダ「高度な駆け引きが行われています。 しかもドロシーは同時に自己強化魔法をかけて筋力を増大させています」
実況コカンダ「ですが、周囲からは、それがまったく分かりません! ぶっちゃけ地味!」
ドロシー「ぎぎぎっ」
クルトガ「ぐぬぬっ」
実況コカンダ「おっと、ここでドロシー選手がバットをさらに引いた!」
解説ヒルダ「自己強化が終ったようですね。 一気に決めるつもりです」
ドロシー「残念だったわね、帝国の賢者さん。魔力勝負は私の勝ち! これで終わりよ!」
実況コカンダ「ドロシー選手が大きくバットを振り抜いた!」
  スカッ
実況コカンダ「いや! 空振った! な、なんとドロシー選手が振り抜く瞬間、ボールが真下にズレた!」
クルトガ「魔力量では後れを取ったが、操作で負けるつもりはない」
実況コカンダ「空振ったドロシー選手! このまま魔法が解けるか!?」
解説ヒルダ「! いや、まだです!」
ドロシー「うおおおおおっ!」
クルトガ「な、なに!」
実況コカンダ「な、なんとドロシー選手。空振った勢いをそのままに一回転し、もう一度ボール目掛けてバットを振り下ろす!」
ドロシー「いっけー!」
  カキーン
実況コカンダ「バットが捕らえたボールは回転しながら左に大きく飛んで行く!」
実況コカンダ「ドロシー選手そのまま駆け出し一塁へ。その間、パキマビ選手が俊足を生かし三塁を回り、そのままホームイン!」
実況コカンダ「ハッピーズ追加点、これで5対2!」

〇球場のベンチ
ハッピーズベンチ「よっしゃ!」

〇中世の野球場
ドロシー「ぜぇぜぇ、あーしんどい」
実況コカンダ「続く二番レヴィリック選手。 ・・・おっと、いきなりバントの構えだ」
レヴィリック「確実にヒットを打ついい方法を教えてもらったからな、使わない手はない」
レオンハルト「随分と舐められたものだ」
実況コカンダ「さあ、レオンハルト選手第一球を投げた! そして同時に前に飛び出す!」
レヴィリック「まあ、当然。そうするな」
レオンハルト「なっ!」
実況コカンダ「なんとレヴィリック選手、バントの構えからバットを引いた!」
  カキン
実況コカンダ「山なりに飛んだ打球は、飛び出したピッチャーの頭を越えていく! そのまま一塁セーフ」
レオンハルト「くっ、味な真似を」
実況コカンダ「ヒルダさん、今のは?」
解説ヒルダ「幾つかの駆け引きがありました。ピッチャーは、バッターに確実にバントさせ素早く内野ゴロを拾うつもりで、甘い球を投げた」
解説ヒルダ「しかしバッターはそれを見越し、バントから普通のバッティングに切り替え、甘い球をピッチャーの頭を越えるように打った」

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