エピソード27(脚本)
〇ヨーロッパの街並み
僕は少ししてから、店を出て、寄宿舎に向かった。なんとなくジョマと顔を合わせづらくて、時間をずらしたのだ。
ロク「月も普通かぁ」
歩きながら空を見上げて、月を眺める。僕の記憶にある、日本で見た月と変わらないと思う。
二つあったり、色が違ったりしていない。昼には太陽もちゃんとあった。これも、僕の記憶と差はなかった。
ロク「ほぼ日本と同じかな」
差があるとすれば、魔法がある事と、中世っぽい時代という事と、日本に比べて、湿気が少ないという事。
今はたぶん夏の少し手前だけど、嫌な暑さではない。
ロク「カラッとした暑さなのは助かるな」
エアコンなんて存在しないこの世界で、ジメジメした暑さだったら、挫けてしまう。暑いのは苦手だったから。
でもこの感じの暑さなら、なんとなく大丈夫な気がした。
いろいろ考えながら歩いている間に、寄宿舎までたどりついた。
自分の部屋の前に立つと、開かなかったらどうしようかと思いつつ、少し緊張して、ドアノブ付近に魔力を込めた手をかざす。
かちゃりという音。ちゃんと開錠されたらしい。
ロク「良かった」
〇英国風の部屋
僕は中に入ると、ドアを閉めて、もう一度、魔力を込めた手をかざす。
また鍵の音がして、施錠される。一応、ドアノブを一度回してみて、開かないか確認した。
ロク「よし」
施錠されている事に安心した僕は、部屋の中に進み入る。間取りはジョマの部屋と同じ。生活に必要な家具も、ちゃんと置いてある。
ロク「あっ・・・・・・着替え」
僕は自分の制服に目をやって、着替えた時の事を思い出した。
そういえば、もともと着ていた服が、事務所の着替えた部屋に置きっぱなしだった。
色々ありすぎて、放置してしまっている。
ロク「まぁいいか」
本当は良くないけど、ベッドを目の前にして、疲れと眠気が突然、顔を出し始める。もう抗えそうにない。
僕は制服のまま、ベッドに倒れ込む。
ロク「今日はもういいや・・・・・・色々な事は明日に後回し」
僕は息を大きく吐く。やっと一息つけた。異世界に転生して、ジョマに会って、徹夜して、事件が起こって。
ロク「明日はどうしようか」
僕はふと捜査の方針を考える。ちょっと忘れていたけど、事件の捜査は全く進んでいない。聞き込みを終えただけ。まだ初動段階。
手掛かりも何もない状態だ。殺人なのか事故なのか、それさえ分かっていない。
ロク「燃えた原因って何だろう」
出来るだけ早く、殺人なのか、事故なのかをハッキリさせたい。人海戦術が使えない以上、両面の捜査は難しい。
ロク「魔法以外に火をつける手段はない、なのに魔力紋がない・・・・・・どうやって」
考えがまとまらなくなってきた。意識が遠のいていく。