#12 神様(脚本)
〇けもの道
格闘家 バロン「それは・・・!?」
冒険者 マーベリック「十字架だ。吸血鬼は十字架が苦手らしいからな」
格闘家 バロン「・・・」
格闘家 バロン「とても綺麗ですね。それ、私にくれませんか?」
冒険者 マーベリック「なっ・・・」
格闘家 バロン「十字架が苦手? むしろ大好きですよ」
格闘家 バロン「吸血鬼とは、言わば「永遠の命」という名の「罰」を背負う種族」
格闘家 バロン「死なない身体に磔の十字架。なんとも親和性が高いと思いませんか?」
冒険者 マーベリック「・・・わけわからねぇ」
人狼 マーベリック「もうなりふりかまってられねえ。大狼の力でお前を殺す」
格闘家 バロン「おや、夜の間しか力を発揮できないのでは?」
人狼 マーベリック「そんなのお前の思い込みだ」
格闘家 バロン「龍神の加護、とやらで力を制限されていると聞きましたが」
人狼 マーベリック「それもお前の思い込みだ」
人狼 マーベリック「俺は人狼。その中でも強大な力を持つ大狼。大狼の特徴はな──」
人狼 マーベリック「自我を失う代わりに、全てを破壊し尽くす」
格闘家 バロン「あは・・・痛いですね・・・」
格闘家 バロン「・・・貴方の存在が」
人狼 マーベリック「ガウゥ・・・」
格闘家 バロン「「自我を失う代わりに、全てを破壊し尽くす」ですって奥さん」
格闘家 バロン「「気が付いたら全員ボコボコにしていた」ってやつですか?」
人狼 マーベリック「ガウゥ!」
格闘家 バロン「痛々しい・・・中二病は程々にしてください」
人狼 マーベリック「きゃうん!」
格闘家 バロン「ふふふ・・・私も左腕が疼きそうですよ」
〇田舎の教会
村娘 アリス「・・・雨か」
村娘 アリス「この程度の雨じゃ、何も洗い流せない」
村娘 アリス「心の渇きは癒せない」
〇荒廃した教会
村娘 アリス「・・・神」
村娘 アリス「・・・」
村娘 アリス「見てるんでしょ?」
村娘 アリス「・・・」
村娘 アリス「お前だよ。お前」
村娘 アリス「私のことをじっと見つめる・・・」
村娘 アリス「・・・そこのお前」
〇雲の上
自分とは関係ないことだと言わんばかりに、傍観を決め込む
神様気取りのそこのお前
見ているだけじゃなく、お前も降りてきたら?
客席はそろそろ飽きたでしょう
〇洞窟の深部
踊り子 フォクシー「・・・はぁ」
踊り子 フォクシー「地上に降りてきたのに、私、全然楽しめてないな」
踊り子 フォクシー「私は人間界を、娯楽施設か何かだと勘違いしていたのかもしれない」
踊り子 フォクシー「実際は不条理で、物事には何の筋も通っていなくて・・・」
踊り子 フォクシー「滅茶苦茶で、論理が破綻していて、設計図を無視して作られたジェットコースターみたい」
踊り子 フォクシー「何なの人狼って・・・」
踊り子 フォクシー「何なの吸血鬼って・・・」
踊り子 フォクシー「人間ですらないじゃん・・・」
踊り子 フォクシー「・・・」
踊り子 フォクシー「・・・ここって、本当に人間界?」
〇荒廃した教会
村娘 アリス「神とは、イメージの集合体である」
村娘 アリス「心象生命体とでも名付けようか」
村娘 アリス「人々の心の中に住まうお前らは、いつでもどこでも、私たちを見ている」
村娘 アリス「・・・素晴らしい仕組みだなぁ」
村娘 アリス「今も空から見てるんでしょう。でもね、お前らだって私と同じ、理を生きる者」
村娘 アリス「全てを見通せると思ったら、大間違いだよ」
〇雲の上
〇朝日
アクエリア「・・・「全てを見通せると思ったら大間違い」ねえ」
アクエリア「私だってそのくらい分かってる」
アクエリア「事実、君が吸血鬼であることを私は見抜けなかったし、この現状は、私が思い描いていた展開とはまるで違う」
アクエリア「だが、あくまで君は脇役」
アクエリア「これはフォクシーのための試練」
アクエリア「・・・ふっ。舞台装置風情が、一丁前に自我を出すなよ」
アクエリア「君の存在など、「不条理」の一言で説明できる」
アクエリア「それ以上でも以下でもない。コース上に置かれた、ただのハードルに過ぎないのさ」
〇けもの道
人狼 マーベリック「ガウゥ・・・」
格闘家 バロン「雨が強くなってきましたね」
格闘家 バロン「早いところ、片付けましょう」
人狼 マーベリック「くぅん・・・」
格闘家 バロン「今更、命乞いですか?」
人狼 マーベリック「・・・」
格闘家 バロン「いえ、それが貴方の本能なのかもしれませんね。人間の姿よりも、よっぽど素直で可愛いですよ」
格闘家 バロン「では、トドメといきましょうか」
人狼 マーベリック「ガゥァ!」
格闘家 バロン「噛み付き・・・ですか。命乞いではなく、私の油断を誘おうと・・・」
人狼 マーベリック「グルゥゥゥ・・・」
格闘家 バロン「離しなさい」
人狼 マーベリック「グゥゥゥゥ・・・!」
格闘家 バロン「あぁ、さすがの私も出血多量で意識を失いそうです」
人狼 マーベリック「グゥゥゥゥゥゥ・・・!」
格闘家 バロン「血が・・・止まらない・・・」
格闘家 バロン「雨・・・が・・・」
人狼 マーベリック「・・・」
人狼 マーベリック「ガルルゥ」
〇洞窟の深部
踊り子 フォクシー「・・・もしここが、人間界じゃなくて、別のどこかなのだとしたら」
踊り子 フォクシー「教会に行けば、天界に戻れるかもしれない」
踊り子 フォクシー「・・・私が降りてきた場所」
踊り子 フォクシー「私の過ちを・・・象徴する場所」
踊り子 フォクシー「・・・教会」
しまった、最終話は明日ですね。次回、歪すぎるこの世界の謎が明かされていくのでしょうか?
会話メインで書くことがコンテスト条件なら、会話で進む世界を書けばいい、タップノベルさんではすごく有効な手だと思いました。
普通にゲームを行うだけではなくて、舞台背景や人狼が始まった経緯なんかも書かれていて、読み応え抜群のストーリー。設定に狂わされるキャラクターたちの感情と行動は、読者の予想を許してくれませんね。