異世界ベースボール ~フワッとしか知らなかったので、なんだかおかしなルールになりました~

アーム・ザ・コニー・ロト男

第一三話『勇者レオンハルトのヤ・キュウ分析』(脚本)

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〇球場の観客席
レオンハルト「いいですね、獣国バカスカズ。 獣人としての特徴を生かし、打って走って、ボール回しもできている」
レオンハルト「ピッチャーが打たれることを恐れていない。むしろ打たせること前提で、チームが動けている」
レオンハルト「彼らは純粋に野球を楽しんでいる」
クルトガ「ヤ・キュウだろ?」
レオンハルト「そうでしたね、クルトガさん」
実況コカンダ「ドロシー選手またまたスリーストライクだ!」
クルトガ「聖国ハッピーズのエースピッチャー・破滅の大魔女ドロシーか。お前は知り合いだと言っていたが?」
レオンハルト「彼女が帝国に滞在していた頃、戦を共にしたことがあるだけですよ」
クルトガ「強いのか?」
レオンハルト「彼女は魔法の天才です。 帝国の賢者と称させるクルトガさん、あなたに引けを取らないくらいのね」
クルトガ「それで? この試合どうなると思う?」
レオンハルト「残念ながら聖国ハッピーズの勝ちは揺るがないでしょう」
クルトガ「元大盗賊の宰相レヴィリックが集めた強力な手駒が揃う聖国ハッピーズはやはり強いか」
レオンハルト「強いというか、ズルい、ですかね?」
クルトガ「ズルい?」
レオンハルト「このヤ・キュウというゲーム自体が、聖国ハッピーズが有利に戦えるようになっているんですよ」
レオンハルト「例えばピッチャー。本来なら腕力や制球力が考慮されて選ばれそうなものだが、全く無縁の魔法使いが起用されている」
レオンハルト「それが成立する理由はボールにある」
クルトガ「オリハルコン製の試合球か」
レオンハルト「試合球をオリハルコン製にしたのは、壊れない球を作る為だけではなく、魔法を付与し易い仕様にするのも目的だったのでしょう」
クルトガ「結果、球を投げる為に必要な要素を全て魔法で代用できるようになり、より精度の高い投球が可能になっている」
クルトガ「それを有利とするなら、他のチームも同じことができるだろう」
レオンハルト「そのカラクリを、あらかじめ知っていればですけどね」
クルトガ「どういう意味だ?」
レオンハルト「このヤ・キュウ対決において、相手チームが聖国ハッピーズとの初戦までに、その仕様に気づくことは難しい」
レオンハルト「実際にオリハルコン製の試合球を使い、魔法使いのドロシーの球を見て、初めてその優位性に気付くからです」
レオンハルト「オリハルコン製の試合球はコストと生産時間の観点から一般には出回らないと言って差し支えない」
レオンハルト「聖国が配布しているルールブックにも、試合用と市販用ではオリハルコン製の効果がない、としか書かれていない」
クルトガ「確かに具体的に何が違うのかは書いていない。・・・あえて隠していると?」
レオンハルト「説明はしている。ただそこまで詳しく書く必要がないと思っただけ・・・みたいな言い分なんじゃないですかね」
クルトガ「あの元盗賊の宰相がやりそうな手口だな」
レオンハルト「結局オリハルコンの特性を熟知しているか、僕たちのように事前に試合を見て、そのことに気づくくらいしか見抜く手立てがない」
レオンハルト「他のルールに目を通しても、そういった形跡が幾つも見られる」
レオンハルト「つまり、このヤ・キュウというゲームは、聖国が勝ちやすいように仕組まれている、ということです」
クルトガ「ヤ・キュウで聖国ハッピーズに勝つのは不可能だと?」
レオンハルト「全ての勝負事において、ルールを作った者が最も有利というのが世の常」
レオンハルト「ですがそれも、情報格差がある今だけの話。手の内が知られれば、いずれはそれもなくなり、対等な試合ができるようになりますよ」
クルトガ「ヤ・キュウが普及し始めている今だけの有利ということか」
レオンハルト「ただ、それは『僕たちにも』言えることです」
レオンハルト「こちらが知っていて、あちらが理解していないからこその有利があるのは、今だけだ」
レオンハルト「今日、改めて試合を観戦して確信しました。聖国は、このゲームを正確に把握できてはない」
クルトガ「なら今が仕掛け時か?」
レオンハルト「欲を言えば、もう少し調べたいところです。未だ彼女の能力が分かっていないですしね」
クルトガ「今回の神の御使いマコという少女か」
レオンハルト「最低限どういった能力かを知ってから勝負したかったですが、一向に使う気配がない」
クルトガ「大事を取りたい気持ちは分かるが、我らが皇帝もそろそろ我慢の限界だ。早くユグド聖国をどうにかしろとのお達しだぞ」
レオンハルト「いいじゃないですか。ヤ・キュウで勝てば無傷で聖国が手に入り、しかも神の御使いもついてくる」
クルトガ「負ければ三年間手出しできないぞ」
レオンハルト「神の御使いと正面から戦争することを考えたら緩い条件です」
レオンハルト「神の御使いと真っ向からやり合えば、相手は必ず滅びる」
レオンハルト「今、この世界で、それを一番よく知っているのは僕たち帝国の人間なんですから」
実況コカンダ「ゲームセット! 8対2で聖国ハッピーズの勝利です!」
レオンハルト「さて、試合も終わったようですし、そろそろ始めましょうか」

〇中世の野球場
パキマビ「あー、負けてしまった」
獣人たち「でも楽しかったよな!」
獣人たち「ピッチャーの球が速すぎるって!」
獣人たち「ハッピーズの人たち凄く上手かったな!」
マコ「パキマビたちも凄かったよ。またやろう」
パキマビ「はい、またやりたいです」
レヴィリック「その前にお前たちには払うモノを支払ってもらうぞ」
パキマビ「あっ、そういえば、負けたら宴会代を払うんでしたね・・・・えーっ! こんなにするんですか!」
獣人たち「なに驚いてんだよ」

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