エピソード25(脚本)
〇怪しげな酒場
ジョマ「うぃぃぃ」
酒場に入って数時間。ジョマは机に突っ伏して、そんな声をあげていた。お酒に弱いのか強いのかわからない。
それなりに飲んでいたけど、強い人はこんな風にはならないのでは。僕はお酒を飲めないから、よくわからない。
ロク「そろそろ帰ろうか」
ジョマ「まだ飲みたいりない」
飲みたいと、飲み足りないという言葉をかけ合わせた様な、
ちょっとよくわからない言葉を発したジョマが、持っていたジョッキをあおる。
僕はため息をつきながら、自分のコップを眺めた。
ガラスのコップに注がれたジュースが、店内の光に照らされて、綺麗な色合いを机に写している。
魔法が発展しているけど、ガラスは加工できるんだなと、考えつつ、僕はコップを傾ける。
どこかまでは、産業技術の方が、魔法より発展していたのかもしれない。
そんな事を考えていると、視界が少し暗くなった。
誰かが近づいてきたらしい。僕は傾けていた視線を上げて、近づいてきた人物に向ける。
レストルア「ここに居ましたか」
レストルアが、昼間と変わらない真面目な表情で、そこに居た。
ロク「・・・・・・仕事サボってたわけじゃないよ」
レストルア「大丈夫、分かっています・・・・・・ジョマだけなら、そう思ったかもしれませんが」
僕の言葉に少し微笑んで、レストルアが答える。ありがたい事に、信用してもらえているらしい。
レストルア「座ってもよろしいですか?」
一瞬沈黙が流れて、レストルアが問いかけてくる。僕は気が利かなかった事を恥じつつ、返事をした。
ロク「あっ、ごめん、どうぞ」
僕とジョマが、机を挟んで向かい合って座っていたから、その間に当たる席に、レストルアは座る。
ロク「それで・・・・・・どうしたの?」
事件の新たな進展でもあったのかと思ったけど、ハウンドは今回の件から、すでに手を引いている。
そっち方面はよく考えたら、無いだろう。ハルソンが騎士団にクレームを入れたとか。
それでレストルアが説教にやってきたのかも。あり得るなと思い、僕は少し居ずまいを正す。
レストルア「給付金と、寄宿舎の使用権利の件で」
ロク「あぁ、そっちか」
レストルア「・・・・・・そっち?」
不思議そうな顔をするレストルア。僕は「何でもない」と誤魔化す。余計な事を言わないのが身のためだ。
レストルアは怒ると怖そうだし。
レストルア「・・・・・・私、怖いですか?」
ロク「え?! どうして」
思っていた事が、口に出てしまっただろうか。僕が慌てて問い返すと、レストルアが少し落ち込んだ様子で苦笑する。
レストルア「まだ二回しか会ってませんが、そのたびに緊張している様子なので」
言われてみれば、緊張しているかもしれない。こんな風に落ち込ませてしまうのはいけないな。僕は反省して、言葉を返す。
ロク「怖くないよ、緊張は、まぁ・・・・・・性格かな」
僕が「へへへ」と笑って見せると、レストルアも微笑んでくれる。とても柔らかい雰囲気だ。