エピソード24(脚本)
〇ファンタジーの学園
ハルソンは、その笑い方が染み付いているかのように、自然に力ない笑顔を浮かべる。
ハルソン「嫉妬も無駄と思える位に、圧倒的な差を見せつけられていたけどね」
それだけ言うと、ハルソンは体を反転させて、僕たちに背中を向けて歩き出す。
ハルソン「邪魔したね、そろそろ行くよ」
ロク「はい・・・・・・いろいろ、すみません」
僕の言葉に反応して、ハルソンは一度こちらを振り向き、微笑んで軽く会釈をして、行ってしまった。
ジョマ「殺人の線が濃厚ですかね・・・・・・良い仕事したでしょう」
ハルソンの背中を見送った後、ジョマが誇らしげに胸を張る。どうだろうか。
嫉妬に関してはそもそも疑っていたから、新事実という訳でもない。
ハルソンが何かボロを出していたかというと、そうでもない。ただ、気分を害する事を言っただけにも思える。
ロク「まぁ」
あまりにもジョマが誇らしげにしているから、僕は曖昧な返事に留めた。
ジョマ「さぁ、帰りましょうか!」
帰るのをもう邪魔されたくないのか、ジョマは僕の手を掴んで、急かすように引っ張る。
僕は仕方がないなと、少し呆れつつ、歩き出した。
ジョマ「ふふん、今日もよく働きました」
鼻歌混じりのジョマが上機嫌に言う。まぁ確かに良く働いた。徹夜明けにこたえたのも確か。
僕が「そうだね」と答えると、ジョマが満面の笑みになる。
ジョマ「では! 仕事終わりの一杯といきますか!」
心底嬉しそうに、ジョマがジョッキを掲げる様なしぐさを見せた。
上機嫌なのは、理由をつけて飲みに行く為だったか。エルフの癖に、清廉潔白のかけらもない。
ロク「今日も行くんだ・・・・・・まぁ、個人の自由だし、楽しんできてね」
ある意味スゴイ体力だ。僕は徹夜と一日歩き回ったせいで、体がガタガタ。早く帰りたい。
すると、僕の言葉にジョマは不思議そうな顔をして、口を開く。
ジョマ「何を行かない感じの空気出してるんです?」
ロク「え?」
ジョマ「ロクも行くんですよ?」
また、僕に世話をさせる気か。僕がいれば、帰れないほど飲んでもいいと思っているのだろうか。そうはさせまいと、僕は反撃する。
ロク「それ、仕事ですか? 残業代出るんですか?」
一瞬たじろいだジョマだったけど、すぐに持ち直す。
ジョマ「若造がガタガタと、うるせぇです! 先輩が飲みに行くぞと言ったら、二つ返事で、お供します! でしょうが!」
微妙な小芝居を挟みながら、ジョマが昔のおっさんみたいな事を言う。
こんな可愛い見た目だけど、実は昔にこの世界に転生してきた、おっさんなのでは無かろうか。
ジョマ「行きますよ!」
すでに、腕を掴まれていたから、逃げる術はなく、僕はおとなしくジョマの後に続いた。
昨日の悪夢が僕の頭を過って、ため息が胸の奥底から、沸き上がってくる。