エピソード24-青色の刻-(脚本)
〇城の廊下
それから、トキと私は
〇華やかな広場
青刻さんの家に行くことになり
〇車内
玄人さんの車で、本邸を後にすることになった。
〇城の廊下
黒野すみれ「(まぁ、あまり警察に疑われているのにウロウロするのはさ)」
黒野すみれ「(褒められたことじゃないんだろうけど・・・・・・)」
ただ、
〇貴族の部屋
本邸のあの部屋に監視もおかず軟禁するよりは
〇華やかな広場
トキや
玄人さんと一緒にいる方が逃亡できないと
警察も了解したのだろう。
〇城の廊下
黒野すみれ「(さっき、エマさんが青刻さんに話があると呼んでいたから、)」
黒野すみれ「(エマさんが気を遣ってくれたのかも)」
黒野すみれ「(本当はリエさんかマリさんを私の見張りにつけても良かったのだろうけど)」
黒野すみれ「(私ができるだけ自由に動けるように)」
私はそんな風に考えて、
トキや青刻さんと少し距離が空いているのに気づく。
物部トキ「おーい、すみれちゃん!! 早くー!!」
と、案の定、トキに呼ばれ、私は急ぎ足で2人に
歩み寄る。だが、その時、応接間のドアが開いた。
〇貴族の応接間
応接間からは何故か、朝刻さんが現れて、
深刻そうな顔していた。
明石青刻「あの、どうかしたんですか? いつになく、深刻そうな表情ですけど」
黒野すみれ「(さすが、兄弟なのかな。聞きたかったことをズバッと聞けるなんて・・・・・・)」
私は昨日の、朝刻さんと東刻さんとの会話を思い出した。
〇城の会議室
明石朝刻「大丈夫か? 何だか、顔色が悪くないか?」
〇貴族の応接間
黒野すみれ「(あんまり、兄弟間でも会うことないとは聞いてたけど、)」
黒野すみれ「(朝刻さんはまた分かりやすいよね、こんな顔のイメージがないし)」
そう、多少、驚いていたりはしていたこともあったが、
基本的にはニコニコとした表情が多いと記憶していた。
すると、朝刻さんは私達を安心させるように笑った。
明石朝刻「もしかして、これから、彼の家に出かけるんですか?」
明石青刻「ええ、そうですが・・・・・・」
明石青刻「彼女達を招待しようかと思いまして」
明石朝刻「蒼帝城。凄いと思いますよ」
黒野すみれ「そうていじょう?」
明石青刻「ああ、兄さん」
明石青刻「城じゃないです、Strongholdです。蒼帝 in the Stronghold」
明石朝刻「ああ、要塞とか牙城って意味だったかな? まぁ、良いじゃないか」
明石朝刻「横文字はあまり得意じゃないんだ」
明石青刻「・・・・・・。兄さんはどうしたんですか?」
明石青刻「珍しくスーツなんて着ているし」
明石朝刻「ああ、少し出かけなければならなくなったんだ」
明石朝刻「だから、黒野さんとトキさんにご挨拶と君にも少し話を、と思ってね」
明石青刻「お話、ですか?」
明石朝刻「ああ、なに、1時間も2時間もって訳じゃない」
朝刻さんはちらりと私の方を見る。
おそらく、私やトキの前では言いにくい話なのだろう。
〇黒
私とトキは青刻さんと春刻さんをその場に残すと、
〇車内
玄人さんが運転する車で蒼帝城へ向かった。
〇華やかな広場
黒野すみれ「ここが青刻さんの家?」
事前に分かっていたことだが、そこには本当に
家らしい建物はなく、戸や扉の類さえもなかった。
玄人「黒野様、どうぞこちらへ」
トキも玄人さんも広場然とした中央に足を進めると
C型に整えられた花壇の中に入っていく。
私もそれに倣うように花壇の中央に入ると、次の瞬間、
ゴォーーーー!!
床がエレベーターのように動いて、私達を下へ下と
運んでいった。
〇黒
真っ暗な時間が暫く続き、
〇殺風景な部屋
私達はある部屋に辿り着いた。
玄人「驚かせてしまいましたけど、こちらでエレベーターを操作していまして」
そう言うと、玄人さんはボタンがついた
小さなものを見せてくれる。
黒野すみれ「(番号は分かるけど、プラスマイナスボタンとか再生に、一時停止って何?)」
私はいよいよ訳が分からなくなると、考えるのをやめて、
トキと玄人さんについて行った。
〇基地の廊下
ほとんど全ての部屋に暗証番号のパネルが
設置された灰色の廊下。
物部トキ「まるで、何かの基地みたいだよね」
黒野すみれ「あ、うん。そうだね」
黒野すみれ「(これが家なのか・・・・・・は微妙だけど、確かに好きな人は好きかもな)」
私は何となく、父や安谷さんの顔を思い浮かべると、
トキと私はある一室に通された。
〇兵舎
玄人「それでは、私は飲み物を淹れてまいりますので、暫くお待ちくださいね」
玄人さんが部屋を出て行くと、
部屋には私とトキだけになる。
物部トキ「すみれちゃんはあんまりゲームしないだろうけど、何か、ファンタジーって感じで」
物部トキ「良い感じの部屋だよね!! テンション上がるーみたいな!!」
黒野すみれ「うん、そう・・・・・・だね」
実は、トキはこう見えて、ゲーム好きだ。
RPGにシミュレーションゲーム。アクションゲーム
ジャンルやハード、あと制作者や会社、声優等を問わず
自分がやりたいと思ったものは兎に角、
やってみるみたいな感じらしく、
ゲーム好きのいとこに影響されて!! と
聞いたことがあった。
黒野すみれ「(それがまさか)」
〇華やかな広場
彼だったなんて
〇兵舎
黒野すみれ「(思わなかったけど・・・・・・)」
黒野すみれ「(そう言えば、トキって婚約者なんだよね)」
〇地下室
彼の・・・・・・
〇兵舎
黒野すみれ「トキって婚約者なの? 春刻の?」
物部トキ「え・・・・・・?」
黒野すみれ「あ、いや、使用人の人に聞いて・・・・・・本当なのかなって・・・・・・」
本当は「聞いた」のではなく、「見た」のだが、
確実にトキに怪しまれるだろう。
黒野すみれ「(って、そんなこと、聞くつもりなかったのに!!)」
たまたま彼のことを考えていたら、私はポロッと
トキに春刻のことを聞いていた。
物部トキ「ああ、春刻君ね・・・・・・。春刻君は確かに、婚約者ってことになるのかな?」
黒野すみれ「・・・・・・」
流石は
〇貴族の部屋
マリさんの真理のファイル。
偽りなどなかった。
〇兵舎
物部トキ「あ、でも、親が勝手に言っただけだしさ。私、決めてるんだ」
物部トキ「結婚するなら絶対、私を理解してくれる人じゃないとって・・・・・・」
黒野すみれ「理解?」
物部トキ「うん、すみれちゃんとか、青刻君とかかな?」
物部トキ「私は誰かに幸せにしてもらいたいなんて思ってないし、仮に不幸になるなら」
物部トキ「一緒に不幸になっても、幸せだって思える人が良いって思ってるんだ」
黒野すみれ「春刻は・・・・・・そうじゃないってこと?」
物部トキ「・・・・・・」
物部トキ「よく分からないんだ。明石家の人達って兄弟でも殆ど会わないって話だし、」
物部トキ「勿論、お葬式とかで会うこともあるけど、殆ど話したことないんだよね」
物部トキ「誰かの話している噂話とか、そういうのの方が多いくらいで・・・・・・」
黒野すみれ「・・・・・・」
それは派閥争いの噂話も入っているのだろう。
〇城の会議室
本当はもっと仲良くしたい、と思っていたかも知れない。
でも、複雑な思いも同時に抱いていたかも知れない。
専属依頼人の彼らを心の拠り所にするしかない日々。
彼らはそれぞれをどう考えていたのだろう。
〇兵舎
玄人「遅くなりました。お茶をお持ちいたしました」
玄人「あと昼食が済んだばかりとは聞いていますけど、こちらもよろしかったらどうぞ」
ファンタジーの兵士達がついているようなテーブルには
現代のお菓子が並ぶ。
玄人「ケーキはすぐに召し上がれないようでしたら、冷蔵庫に入れておきますので」
玄人「遠慮なくおっしゃってくださいね」
と、玄人さんは言ってくれたので、私は紅茶だけ
トキは紅茶とケーキ、それにクッキーを2、3個と
飴を2つ食べる。
黒野すみれ「(トキが大食いっていうのもあるけど、青刻さんも遅いかも)」
物部トキ「青刻君、遅いね」
欠伸を我慢しながら、トキは言う。
部屋には時計がない為、この部屋につれてこられてから
どれくらい経つか、分からないが、少なくとも
1時間くらいは経ってそうな勢いだった。
物部トキ「何だか、眠くなってきたなぁー」
今にも寝そうなトキほどではないものの、
私もかなり眠くなってきて、私は玄人さんを呼んだ。
玄人「眠くなってきた?」
黒野すみれ「えぇ、トキだけでもベッドとかないかなと思いまして」
割と私はどこでも寝れるから良いのだけど、
トキは椅子に座りながら椅子から落ちたことがあった。
黒野すみれ「(それで、暫く足に絆創膏してたっけ)」
黒野すみれ「もし、無理そうなら、ソファでも良いんですけど」
玄人「分かりました。ゲストルームがありますので、そちらにどうぞ」
〇基地の廊下
そして、私達は蒼帝城のゲストルームに向かった。
〇ラブホテルの部屋
玄人「それでは、何か、ございましたら、お呼びください」
玄人さんが去っていくと、トキはベッドに倒れ込む。
そして、私も釣られるように目を閉じた。
〇ラブホテルの部屋